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「……神……」
バナナがボソッと呟く。
「ああ、そうさ。神なんかに望んだら何を対価に要求されるか分かったもんじゃ無いから」
「そういえばその風夜を作った“神様”ってどんな奴なんだ?」
ブルーのその問いに風夜はうーん……と少し考え込んで
「どんな奴……か……考えた事もないな。でも凄まじい力を持ってる事は確かだな。あいつがいなければこの宇宙ごと誕生してない……とでも言うべきかな」
と答えた。今度はブラックが問いを重ねる。
「なんでそんな曖昧な答え方なんですか?」
「こればっかりは僕も見たわけじゃないから。僕が作られるより前……神自身が【世界の過去を写す魔導書】を書いていた頃の話なんだ」
風夜は軽く返してさらに言葉を続けた。
「話を戻すけど、あいつの性格を一言で表すなら【気まぐれ】その一言に尽きる。その時々の気分によって人を救いもするし見捨てもする」
「風夜そっくりですね。さすが風夜の創造者」
ブラックが軽く煽ると
「黙っとれ」
と一刀両断。相変わらずコントの様なやり取りをしている。気付いているのか気付いていないのか。
「人間の敵でもなく味方でもなく……ただその時々の気分によって行動を変える。神ってのはそんなモノさ」
風夜は呆れた様にそう呟く。
「まぁ、今は神としての仕事を僕達の特技や特性に合わせて割り振って、神自身は僕達を管理し、時によっては罰を下す調停者としての役割しか担ってないけどね」
と風夜は肩を竦める。
「とりあえずこれくらいかな。今言うべきことは。僕は調べたい事があるからちょっと地下に行って来るよ」
そう言うと風夜は窓から出て行った。
「ドアから出ていってくれないんですかね……」
ブラックはそう呟きつつ窓を閉めた。
「よっと」
かつて自分が居た大図書室に入った瞬間、上から本が落ちて来た。
ゴツッ!
「あ痛っ!?」
足元に落ちた本を拾い上げる。水色の表紙に金の装飾が施された、数えきれないほどの本があるこの図書室の中でも有数の分厚さ“だった”本____【Mr.すまないの魔導書】だ。生憎だがその本は後半がゴッソリと抜け落ちている。また新しいページが作られているが抜け落ちた部分はそのまま残る。そう、抜け落ちている____筈なのに。
「……ページがある……?」
数万年前、風夜の前に現れたボロボロのMr.すまないは、遺伝子情報やゲノム配列を記した部分を除く自分の記憶にあたる部分を全て破り捨てたはずなのだ。だからこそすまない先生は記憶喪失なのだが、今風夜の掌中にある魔導書は抜け落ちた筈の部分に少しページが再生しているのだ。
「……ページの再生……?そんなの、ありえないのに……」
しかし風夜はそれ以上に深刻な問題を思い出した。
「もし今のすまない君に記憶が戻ったら……」
『……もう、辛いんだッ……記憶を持っていない、彼らと出会って、過ごして、看取って……繰り返し繰り返し……もう、“疲れた”……!……疲れたよぉ……ッ!』
数万年前のMr.すまないの姿がフラッシュバックする。
「……あんな状態の人間は……僕であっても、もう二度と見たく無いよ……」
コメント
1件
うわっ…なんでページ再生してんの!?小説でも言ってたけど…本当にすまない先生の記憶が今戻ったら大変なことになるよな… 続き待ってる!