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前回の更新10月…!?
遅くなってしまい申し訳ありません…
楽屋に入った瞬間、違和感があった。
「……阿部?」
ソファに座って台本を読んでいるはずの彼が、
今日はやけに静かで、ページをめくる手も遅い。
「どうしたの、顔赤いけど」
「え?……あ、ちょっと暑いだけ」
そう言って笑うけど、
その声がいつもより少し掠れていることに、俺は気づいてしまった。
無理、してる
阿部、こっち来て」
「え、まだ確認したいところが――」
「いいから」
有無を言わせない声だったかもしれない。
でも阿部は逆らわず、素直に俺の前に立った。
額に手を当てた瞬間、
はっきり分かる。
「……熱あるじゃん」
「え、そんなに?」
「“そんなに”だよ。なんで言わないの」
責めるつもりはなかった。
でも、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
その日は早めに切り上げて、
阿部を楽屋の奥のソファに寝かせた。
「ごめんね、迷惑かけて」
「迷惑だと思ったこと、一度もない」
水を渡して、
冷たいタオルを額に乗せる。
阿部は少し驚いた顔をしてから、
ゆっくり目を閉じた。
「……舘様って、こういう時すごく優しいよね」
「こういう時じゃなくても、だよ」
ぽつりと言った言葉に、
阿部が小さく笑った。
「阿部はさ、頼るのが下手」
「……そうかな」
「そう。全部一人で抱えようとする」
言いながら、
その細い手をそっと握る。
「もっと、弱っていいんだよ」
「……舘様にだけは、弱いところ見せたくなっちゃうんだよ」
そういうところがあざといって言われるんだよ
少し時間が経って、
阿部がうとうとし始めた頃。
「……舘様」
「なに?」
「ここにいて」
子どもみたいな声。
普段の理知的な彼からは想像できないほど、素直で。
「行かないよ」
そう言って、ソファの横に腰を下ろす。
阿部は安心したみたいに、
俺の袖をきゅっと掴んだ。
ずるい……
こんな姿見せられて、
何も思わないわけがない。
「……熱、下がったら」
「下がったら?」
「ちゃんと、お礼言う」
「今ので十分だよ」
「それは、違う」
目を閉じたまま、
阿部が小さく微笑んだ。
「舘様が看病してくれた理由、
……ちゃんと知りたいから」
その言葉に、
俺は答えなかった。
ただ、
握っていた手を、少しだけ強く握り返した。
久々の更新なのに短くてすみません> <
シチュは頭にパッと出てくるのですがかくのがなかなかに難しくて…
応援してくれる方に感謝しかないです…。