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第三十一話 それぞれの結果
「結果は終わりじゃない。その一枚が、新しい景色への始まりになる。」
六月も終わりを迎えようとしていた。
朝から落ち着かない。
今日はフォトコンテストの結果発表の日だった。
写真部の部室には、
いつもより少し早く部員たちが集まっていた。
「まだかな……。」
一年生たちがそわそわしている。
湊も表情は変わらないものの、
心臓はいつもより速く鼓動を打っていた。
*
昼休み。
顧問の先生が
一枚の封筒を持って部室へ入ってきた。
「結果が届いた。」
その一言で、部室の空気が張りつめる。
先生は一人ずつ名前を呼び、結果を手渡していく。
湊も封筒を受け取った。
ゆっくりと開く。
そこには——
『入選』
その二文字が印刷されていた。
「……。」
大きな賞ではない。
でも。
初めて自分の写真が認められた。
その事実だけで胸がいっぱいになった。
「おめでとう。」
先生が優しく微笑む。
「ありがとう…ございます。」
自然と笑顔がこぼれた。
*
放課後。
帰り道でスマートフォンが震えた。
紬からだった。
《結果出た?》
湊は写真を撮って送る。
《入選だった。》
数秒後。
画面いっぱいにメッセージが届く。
《おめでとう!!》
《やっぱり神崎くんならできるって思ってた!》
思わず笑ってしまう。
《朝比奈は?》
少しだけ返信が遅れた。
そして届いた言葉。
《惜しかった。入賞はできなかった。》
湊は返事に迷う。
何と言えばいいのか分からなかった。
すると、続けてメッセージが届く。
《でもね。》
《先生が「この写真は心に残る写真だった」って言ってくれた。》
《だから悔しいけど、前を向けそう。》
その文章を読んで、湊は安心した。
《次は一緒にもっといい写真を撮ろう。》
すぐに返信が来る。
《うん、約束。》
*
翌日。
写真部では、
一年生たちが結果を聞きに集まってきた。
「先輩、入選したんですよね!」
「すごいです!」
湊は少し照れながら首を振る。
「まだまだだよ。」
「でも。」
「一番嬉しかったのは、賞じゃない。」
部員たちは不思議そうな顔をする。
「写真を撮り続けてきてよかったって思えたこと。」
その言葉に、一年生たちは静かにうなずいた。
*
夕方。
部室を出る前。
湊は入選した写真をもう一度見つめる。
あの日、何気なく撮った笑顔。
誰かの自然な一瞬。
それが、自分の一番になった。
賞をもらえたからではない。
自分らしい一枚だったから。
湊はカメラを肩に掛ける。
まだ見たことのない景色が、
この先にもきっとある。
その景色を残すために。
また一歩、歩き出した。
📷 Photo.031『未来への一歩』
撮影日:6月25日
評価されることより、
「撮ってよかった」と思える一枚がある。
その積み重ねが、
いつか未来へ繋がっていく。
コメント
1件
M.Sさん、第31話読ませていただきました。 「入選」という結果に、湊くんの静かな喜びがじんわり伝わってきました。大きな賞じゃないけど、自分の写真が認められた——その感覚、すごくわかります。そして紬さんからの「おめでとう!!」の連続。あの元気な返信、湊くんが笑顔になったのが目に浮かびました。 何より「撮ってよかったと思える一枚がある」という湊くんの言葉が、この作品のテーマを優しく象徴しているようで、胸がじんわり温かくなりました。賞じゃなくて、自分らしさを大切にできること。それが何より素敵だなと思います。 また次の一枚を撮りに行く湊くんの背中を、これからも応援しています📸✨