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ホラー×青春
幼馴染の2人のあの夏の日の話 。
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八月の空は 、茹だるように青かった 。
雲は溶けるみたいに滲んで 、蝉の声が絶え間なく降ってくる 。
俺 、直哉は 、朔也と並んで歩いていた。
昔からの癖で 、肩が触れそうな距離を保ちながら 。
「 … … なあ 、直哉 。 」
不意に名前を呼ばれて 、俺は顔を上げた 。
「今年の夏 、やけに長く感じない ? 」
「 は ? 毎年同じだろ 。 」
「 いや 、なんか … … 終わらないような気がするんだよな 。 」
朔也はそう言って笑った 。
笑うときに左の頬にえくぼができるのを 、俺は昔から知っている 。
けど 、その笑顔が少しだけぎこちなく見えて 、胸の奥がざわついた 。
村の外れに古い神社がある 。
子供の頃 、俺たちはよく探検に行った 。
赤い鳥居をくぐって 、石段を上った先にある苔むした本殿 。大人たちは 、
「 あそこには近づくな 。 」
と 、口酸っぱく言っていたが 、子供にとっては格好の冒険場所だった 。
… … ただ 、一度だけ 。
あの日を境に 、俺たちは神社に近づかなくなった 。
「 なあ 、肝試ししたこと 、覚えてる ? 」
朔也が言った瞬間 、胸が強く締めつけられた 。
_______ 覚えている 。
夏休みのある晩、俺と朔也と ____ もうひとり 。3人で神社に行った 。
でも 、帰ってきたのは2人だけだった 。
思い出そうとすると 、頭の奥がずきんと痛む 。
どうしても “ もうひとり ” の名前が出てこない 。
顔も 、声も 。まるで最初から存在しなかったみたいに霞んでしまう 。
「 今夜 、また行ってみようぜ 。 」
朔也の声は軽い調子だったが 、見慣れているはずの笑顔は妙に霞んでいて 、何処か気味が悪かった 。
夜 。
提灯の灯りに照らされた参道は 、昼間と違って息苦しいほど暗かった 。
風もなく 、ただじっとりとした湿気が肌にまとわりつく 。
「 やっぱり戻らないか ? 」
俺はどんどん先へ進んで行く朔也に言った 。
「 直哉 、怖いの ? w 」
朔也がからかうように笑う 。
「 … … 前も 、そう言ったよな 。 」
胸が跳ねた 。
“ 前 ” も _________ ?
石段を上るたび 、蝉の声が遠のいていく 。
代わりに 、耳鳴りのようなざわめきが広がった 。
本殿の前に立ったとき 、世界が静まり返った 。
「 なあ 、直哉 。 」
朔也がこちらを振り返る 。
月明かりに照らされた顔は 、見慣れたはずなのに妙に冷たい 。
「 俺たち 、本当は3人だったんだよな 。 」
頭の奥で 、声が囁いた 。
『 ____ どうして 、置いていったの ? 』
_________ 思い出した 。
あの日 、俺は怖くなって 、
「 かえろうよ … 。 」
と 、2人に言った 。
そう 、2人に 。
けれど 、朔也ともうひとりは先に進んでしまった 。
_____ その時 、何かを感じた 。
黒い、この世のものでは無い 、何かを 。
泣きじゃくるもうひとりが 、
「 待って !! !! 」
と呼んだ声を聞いても 、俺は振り返らなかった 。
黒い 、この世のものではない闇に飲まれていく小さな影 。
朔也が俺の腕を掴んで 、
「 走れ !! 」
と叫んだ 。
俺はただ 、必死に走った 。
「 俺は 、置いてきたんだ… … 。 」
声に出した瞬間 、背後でかさりと音がした 。
反射的に振り向くと 、灯籠の影に “ 子供 ” が立っていた 。
小さな背中に 、壊れかけのランドセル 。
_____ 顔が 、見えない 。
そこに確かにあるはずの顔が 、見えない 。
けれど 、笑っていると言う事は確かに認識できる 。
現実離れしていて、気持ち悪い 。俺はその状況に恐怖を覚えた 。
そんな絶対にこの世のものでは無い何かが 、こちらを向いている 。
「 かえろうよ 。 」
掠れた声が 、夜気を震わせた 。
「 いっしょに 、かえろうよ… … 。 」
膝が震えた 。喉が塞がる 。
「 朔也 … !! 」
と、反射的に声が出る。
その時、やっと気がついた。
腕を掴んでいたはずの朔也の温もりが 、無かった 。
「 … … 朔也 ? 」
ずっと一緒に歩んできた 、彼の名前を呼ぶ 。
けれど返事はなく 、鳥居の外に続く道も消えていた 。
あるのは 、蝉の声だけ 。
翌朝 、俺は神社の前で倒れているのを発見された 。
朔也の姿は 、どこにもなかった 。
誰も 、朔也という名前を知らなかった 。
俺の記憶が狂ったのか 、世界のほうが歪んでいるのか 。
分からない 。
ただひとつ確かなのは 、夏の終わりが来るたびにあの声が聞こえることだ 。
「 かえろうよ… … 。 」
_________ あの 、夏の日 。
俺たちは 、確かに3人だった 。
でも 、3人で肩を並べる事は 、もう 、なかった 。
時々 、朔也の夢を見る 。
笑顔で振り向いて、俺の名前を呼んでいる朔也 。
その背中は子供のように小さく 、今にも消えてしまいそうなほど儚かった 。
「 … …ありがとう 。 」
そう 、口にした俺の声は 、夏の奏でる音楽へと消えて行った 。
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こんにちは!初めまして!ふうりん*と申します!
最近一次創作にハマっております
伸びないのは承知の上で
……皆さん、夏は、お好きですか?
私は夏の雰囲気が大好きです
風に揺られ軽やかな音を立てる風鈴、蝉の声、おばあちゃん家の縁側
全てが夏を感じられる楽しいものです
けれど、気を付けてください
夏は、あなたの大事な人も、思い出と一緒にどこか遠くへ連れて行ってしまうかもしれません
どうか、気を付けて。