テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
次にヤマの家へ行ったのは、一か月後だった。
玄関に入った瞬間、確認したかった。
でも、それじゃあ怪しまれる。
私は何も知らないふりをした。
いつも通り笑って。
いつも通り話して。
そして、ヤマがお風呂へ入った瞬間。
私は立ち上がった。
まずはドライヤー。
コードを持つ。
結び目が変わっている。
胸が苦しくなる。
次に洗面所へ向かう。
化粧水を手に取る。
印より、中身が減っていた。
「……。」
思わず息を止める。
ビンゴ。
その一言が頭に浮かんだ。
目星はついている。
あの日先輩からの電話で聞いたヤマのバイト先の女の子だと思った。
こういう時の女の勘は働いてほしくない。
何も嬉しくない。
今すぐ聞きたい。
「誰が使ったん?」
そう聞きたかった。
でも、それじゃあきっと言い逃れされる。
私は何も言わなかった。
確信を持つまでは。
そう決めた。
今思えば、あの時すぐ聞けばよかったのかもしれない。
でも、二十一歳だった私は、まだ子どもだった。
負けたくなかった。
誤魔化されたくなかった。
舐められたくなかった。
だから私は、黙って証拠を集めることを選んだ。
あの時の私は、
恋人じゃなくて、
探偵になってしまっていた。
東 桃子
124
#溺愛
桜咲かな
662
#溺愛
桜咲かな
499
#溺愛
桜咲かな
428
コメント
1件
このエピソード、めちゃくちゃ胸が痛かったです……。化粧水の減りとかドライヤーのコードの結び目とか、そういう「女の勘」が働く細かい描写がリアルで、読んでるこっちまで息苦しくなりました。最後の「恋人じゃなくて、探偵になってしまっていた」って一文、本当に刺さります。信じたい気持ちと確かめたい気持ちの間で揺れる主人公の心情、すごく伝わってきました。イツカさんの書く重さって、いつも胸にグッとくるんですよね🥀💔