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まなこ〜友
117
#ますしき
T
5,800
休日の昼下がり。微睡みの中で隣に視線をやると、明け方に帰宅した雅が深い眠りについていた。
昔から見慣れたはずの寝顔だけれど、何度見ても見飽きることはない。普段は大人っぽい色気を纏っているのに、眠っている時だけは子供の様なあどけなさがある。
この男の滑らかな肌を見つめていると、これが本当に三十路を目前にした男のものかと、羨ましさを通り越して殺意すら湧いてくる。
見た目だけではなく、触り心地も気になり、好奇心に駆られ指先でその頬をつついてみた。すると、雅が「ん……」と微かな声を漏らし、薄らと瞼を持ち上げた。
まだ重たく眠たそうな目と視線が交わる。
「……何してんのお前」
「本当に何もスキンケアして無くて朝からこの肌はキモいわね」
「は?」
起こされて早々、脈絡のない毒を吐かれた雅が、軽く溜息をついて体を起こす。
最近の彼は、私が無理に起こさなくても、昼にアラームをかけて自ら起きてきてくれる。
平日は生活リズムが全く合わないから、土曜に雅が合わせてくれなければ、二人の時間は作れない。
早く起きて時間を作ってと縋ったわけでもないけれど、雅は自主的に起き、時には買い物にまで付き合ってくれるようになった。
以前なら「面倒くさ」と突き放されて終わっていたものが、随分丸くなったと思う。
「おはよ」
寝起きの掠れた声と、朝から出来すぎたほどの顔で至近距離で微笑みを向けられ、視界がちかちかと点滅した。
自分の顔が整っている自覚はあるくせに、それがどれほどの凶器かは理解していない。無自覚に振りかざして殴ってくるの、いい加減にしてほしい。
悶えそうなほどの感情を堪え「おはよ」と返すと、雅は私の肩をそっと抱き寄せ、頬に柔らかな熱を落とした。
その甘い顔に似つかわしい甘い行動にいい加減にして、と感情が爆発している。
心臓が持たない。この男は私を殺す気か。
「今日、出かける予定あんの」
「あんたが行くまでゆっくりしてる。夜はバーに顔だそうかな。明日休みだし」
「最近よく来んな。噂になってるよ、俺の奥さんが毎週金曜と土曜来るって」
「牽制と監視してるのよ」
「本当たくましい女だな」
「嘘よ。わかってるんだから。あんたが私以外の女で満足できないこと」
私が茶化すように笑うと、雅は一瞬だけ虚を突かれたような顔をした。
だけどすぐにいつもの調子に戻り「……どっから来てんの、その自信」と、呆れたようで、だけど愛おしそうに零していた。
「何でかな。でも黒崎にしたいほど好きだったんでしょ?私のこと」
私の言葉に、雅がふっと笑みを零した。
引き寄せられた肩に力がこもり、そのまま触れるだけの口付けが降ってくる。
私以外では駄目なのか、本当のところは分からないけれど、今、世界中の誰よりも雅から愛を受け取っているのは私だという、確信があった。だから自信満々にこんなことが言える。
「そうだよ、てか出会った時からずっと俺のにするって決めてた」
「あんたも私のだって自覚してよね」
執拗なまでの愛をぶつけられなければ、自分の本当の気持ちにさえ気付けなかった。
これからはこの男に負けないくらいの愛を私も渡し続けたい。
コメント
1件
きゃあああもう萌え死ぬかと思った!!😭💕💕 寝顔つんつんからの「この肌キモい」って毒舌飛ばすのに、内心悶絶してるのが伝わってきて最高…!「出会った時からずっと俺のにするって決めてた」ってプロポーズ並みの重さじゃない!?クズ元彼がここまで落ちるの、読者としてこの上なく尊いです…!