第七章〜
新曲のレコーディング中、
タプの声が――出なくなった。
喉は異常なし。医者にも「問題ない」と言われる。
けれど、彼はマイクの前でただ、黙り込んだまま、震えていた。
「……ジヨンが、いないと……」
スタッフの前でもつぶやいてしまい、
「いやいやwwジヨンがいないと歌えないの?w」なんて笑いが起きる。
だけどタプは、笑わなかった。
本気で――**“命令されないと、歌えない身体”**になっていた。
夜。
ジヨンの家。
床にひざまずくタプ。
「ねぇ、ジヨン……命令してよ……。
“これを歌え”って、“こうしろ”って……お願い……」
声が掠れて、涙が喉を塞いで、
でもそれでも、必死に縋るように手を伸ばす。
だが、ジヨンは何も言わず、ソファに深く座ったまま、タバコに火をつけただけだった。
「言わないの……?」
「……お前が、俺の命令がないと何もできない身体になったの、わかってるから」
「じゃあ、なんで命令くれないの?」
ジヨンは目を細めて、
灰皿に煙草を押しつけると、低く言った。
「――命令しないってのが、今の命令だよ」
その瞬間、タプの表情がゆっくりと壊れていく。
目から落ちた涙の粒が、フローリングに音を立てて落ちた。
翌朝。
タプのInstagramに新しい投稿。
🖤 投稿画像:赤黒いペンで殴り書きされたノートの1ページ
「命令されたいんじゃない、
命令されないと、死んじゃうの」
これが拡散され、トレンド入り。
SNSでは“完全に壊れてる”と騒然。
「いやこれもう恋とかじゃなくて洗脳では」
「依存、通り越して“狂気の愛”」
「でもそれすら芸術に変えてるのすごくない?」
年明け。
BIGBANG新曲『OBEY(服従)』がリリース。
タイトルからしてアレだが、
ステージパフォーマンスが衝撃だった。
ステージ中央、マイクスタンドに鎖でつながれたタプ。
ジヨンがその鎖を持って歌う構図。
そしてサビ前――
ジヨンがタプの首元に手を添えて、耳元で囁く。
「吠えろ、たっぴょん」
その瞬間、タプがシャウトするように叫ぶ。
ファンは悲鳴。SNSは炎上。そして1億回再生はすぐ達成。
ファンダムは次第に、“ジヨタプ教”と呼ばれるような空気に。
「命令されることが愛、って新しい世界観すぎる」
「ジヨンが飼ってるたっぴょん、が公式になってしまった」
「正しいかはわからないけど、誰よりも深い」
その裏で、ジヨンのインスタには匂わせが続く。
📸:「白い犬の写真」
📸:「鎖とバラのペンダント」
📸:「“誰も俺を理解しなくていい、あいつが跪いてれば”」
第八章〜
コメント
3件
ほんとにこれ大好きです!続き待っています!