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#世界観
QuartoMew
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モノクロナツキ
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#衝撃のラスト
ゆいな
103
こはる
364
潮風が頬を撫でる。
目を開けると、見慣れない木の天井があった。
「……ここ、は。」
「起きた?」
聞き慣れた優しい声。
振り向くと、椅子に座ったまま眠っていたルルが、目をこすりながら笑っていた。
「おはよう、セト。」
「ルル……。」
セトは身体を起こそうとするが、肩に鋭い痛みが走る。
「いたっ……。」
「無理するな。」
ルルは慌てて肩を支えた。
「麻酔弾が当たったんだから、まだ安静。」
肩にはきれいに包帯が巻かれていた。
「これ……。」
「港のおじいちゃん先生に診てもらった。」
「『変わった傷だな』とは言われたけど、それ以上は聞かれなかったよ。」
セトは包帯をそっと撫でる。
研究所では、傷を治すのは実験を続けるためだった。
でも今の包帯は違う。
「治ってほしい。」
そんな願いが込められているような気がした。
「……ありがとう。」
ルルは照れくさそうに頭を掻いた。
「それより腹減ってない?」
その言葉に、セトのお腹が小さく鳴る。
「……。」
「ふふっ。」
「笑わないで……。」
「ごめんごめん。」
ルルは立ち上がると、鍋の蓋を開けた。
「今日は魚の雑炊!」
部屋いっぱいに優しい香りが広がる。
「熱いから気をつけろ。」
スプーンで一口。
「……おいしい。」
「よかった。」
「なんで……こんなに。」
「ん?」
「こんなに、ご飯って温かいの……。」
ルルは答えず、ただ微笑んだ。
その沈黙が、何より優しかった。
食事を終えると、セトは部屋の中を見回した。
小さな木造の家。
漁具や網が壁に掛けられている。
窓からは海が見えた。
「ここ……。」
「ああ。」
ルルは少し照れながら言う。
「俺んち。」
「えっ……。」
「研究所の人がまた来るかもしれないだろ?」
「だからしばらくここにいろ。」
セトは驚いた。
「でも……迷惑。」
「迷惑じゃない。」
「……。」
「俺が一緒にいてほしいんだ。」
その一言に、セトは言葉を失った。
誰かに「いてほしい」と言われたのは、生まれて初めてだった。
数日後。
セトは少しずつ家の手伝いを始めていた。
「ルル。」
「ん?」
「洗濯、終わった。」
「ありがとう!」
「魚も干しておいた。」
「助かる!」
褒められるたび、胸がくすぐったくなる。
ある日、洗濯物を干していると、一人の近所のおばあさんが声をかけてきた。
「あら、ルルくん。」
「こんにちは。」
「その子がお手伝いさん?」
ルルは少しだけ考え、
「……大切な家族です。」
そう答えた。
セトの耳がぴくりと動く。
「家族……?」
おばあさんはにこりと笑った。
「仲良くするんだよ。」
「はい!」
おばあさんが去ったあとも、セトはその言葉を何度も心の中で繰り返していた。
家族。
博士も昔はそう言った。
でもあれは嘘だった。
けれど、ルルの言葉は違う。
何も求めず、何も奪わず、ただ一緒にいてくれる。
「……ルル。」
「ん?」
「家族って……。」
「血が繋がってなくてもなれる?」
ルルは少し驚いたあと、穏やかに笑う。
「もちろん。」
「家族って、誰かを大事に思って、帰ってきてほしいって願える相手のことだと俺は思う。」
セトは静かに俯いた。
胸の奥がじんわり熱くなる。
「じゃあ……。」
「うん?」
「僕も……ルルの家族になりたい。」
ルルは一瞬固まる。
そして、優しく笑ってセトの頭をぽん、と撫でた。
「もう、とっくになってるよ。」
その瞬間。
セトの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「えっ、セト!?」
「ご、ごめ……。」
「泣かなくていい。」
ルルはそっとセトを抱き寄せる。
「おかえり。」
たった四文字だった。
けれど、その言葉はセトがずっと欲しかったものだった。
「……ただいま。」
小さな声が、静かな家の中に溶けていく。
その頃、港から離れた丘の上では、一台の黒い車が停まっていた。
双眼鏡を覗く白衣の男が、ルルの家を見つめている。
「実験体No.0124……いや、セトか。」
博士は薄く笑った。
「その名前で呼ばれるようになったのだな。」
助手が尋ねる。
「捕獲しますか?」
博士は静かに首を横に振る。
「まだだ。」
「もう少し観察しよう。」
「感情がどこまで進化するのか……実に興味深い。」
誰にも気づかれないまま、博士の視線は二人の日常を静かに追い続けていた。
コメント
1件
みぅ🤍🥀ですっ 第四章「居場所」、読み終えました…! もう、最初から最後まで心がぎゅってなった…🥀 「家族になりたい」って言うセトの言葉、すごく純粋で、ルルが「もうとっくになってるよ」って撫でたシーン、涙出たよ…。 ルルみたいに、ただ“一緒にいてほしい”って言ってくれる人って、セトにとって最初で最後の優しさだったんだろうな。 だけど、最後の博士の影…あの視線、すごく怖い。 せっかく見つけた居場所を、奪われたくないよ…。 ルルちゃさん、包帯に込められた“治ってほしい”っていう願いの描写が、本当に丁寧で好きです。 続き、すごく気になる!!