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📖 第十章:「目覚めの先に」
カーテンが、ゆっくりと揺れる。
午後の光が、やわらかく保健室を包んでいた。
静かな空気の中で——
○○のまぶたが、わずかに震える。
○○:「……ん……」
かすれた声。
意識が、少しずつ浮かび上がる。
ぼやけた視界。
白い天井。
消毒液の匂い。
○○:(……ここ……どこ……?)
記憶が、ゆっくりと戻ってくる。
グラウンド。
ドッジボール。
——衝撃。
○○:「っ……」
わずかに顔をしかめる。
その動きに、すぐ気づいた影。
凛:「……起きたか」
低く、静かな声。
○○の視線が、ゆっくりと横に向く。
そこにいたのは——凛。
ベッドのすぐそばに、椅子に座っている。
○○:「……え……凛?」
少し驚いたような声。
凛は一瞬だけ視線を合わせて、すぐに逸らした。
凛:「覚えてるか」
○○:「……ちょっとだけ……」
額に手を当てる。
まだ少し、じんとする痛み。
○○:「顔……当たったよね……」
凛:「ああ」
短い返事。
少しの沈黙。
○○は体を起こそうとする。
凛:「無理すんな」
すっと手が伸びて、軽く肩を支える。
○○:「……っ」
思ったより近い距離。
一瞬、目が合う。
凛はすぐに手を離した。
凛:「まだフラつくだろ」
ぶっきらぼうな声。
でも、その動きはどこか優しい。
○○:「……ありがと」
小さく笑う。
凛:「……別に」
視線を逸らしたまま。
○○はふと気づく。
○○:「……ここまで、凛が?」
凛は少しだけ間を置いた。
凛:「……ああ」
○○:「え、本当に?…」
少し驚いて目を丸くする。
凛:「他にいねえだろ」
そっけない言い方。
でも——
○○の表情が、ふっと柔らかくなる。
○○:「そっか……」
小さく息をついてから——
○○:「ありがと、凛」
ちゃんと名前を呼ぶ。
凛の指が、わずかに動く。
凛:「……」
何も言わない。
けれど、否定もしない。
静かな時間。
○○:「……ずっと、ここにいてくれたの?」
凛:「……まあ」
短い肯定。
○○:「優しいんだね…」
凛:「は?」
思わず顔を向ける。
○○:「だって普通、そこまでしないでしょ」
凛は眉をひそめる。
凛:「……勘違いすんな」
少し低い声。
凛:「たまたまだ」
○○:「ふふ、はいはい」
軽く笑う。
その反応に、凛は少しだけ言葉を失う。
凛:「……何だよ」
○○:「別に」
でも、その目はどこか楽しそうで。
さっきまでの距離とは、明らかに違う。
凛は小さく息を吐く。
凛:「……もうすぐ先生来る」
○○:「うん」
ベッドに少し体を預ける。
安心したように。
凛は立ち上がる。
一度だけ、○○を見る。
凛:(……大丈夫そうだな)
―――
○○:「……凛」
呼び止める。
凛:「なんだ」
○○:「ほんとに、ありがとう」
まっすぐな言葉。
凛は一瞬黙る。
そして——
凛:「……気にすんな」
背を向けたまま答える。
ドアに手をかける。
少しだけ、止まる。
そして。
ガラッ——
ドアが開く。
凛は振り返らず、外へ出ていった。
静かな保健室。
○○は天井を見つめる。
○○:(……優しいじゃん、普通に)
小さく笑う。
胸の奥に残る、あたたかい感覚。
もうーー
た だの「親切」では、もうなかった。
二人の距離は、確かに変わり始めている。
コメント
1件
ぶっきらぼうな凛ちゃんも可愛い