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凛ちゃんだからこそ作れる雰囲気が大好き(*^ω^*)
📖 第十一章:「小さな恩返し」
放課後。
夕焼けが教室をオレンジ色に染めていた。
部活に向かう生徒たちの声が、廊下の向こうに遠ざかっていく。
○○は、自分の席で小さく深呼吸をした。
○○:(……よし)
カバンの中から、そっと取り出したのは
——小さなボトル。
昨日の夜、少しだけ頑張って作った“手作りのエナジードリンク”。
甘すぎないようにして、ちゃんと飲みやすくして、何度も味見して——やっと完成したもの。
○○:(変じゃ…ないよね)
少しだけ不安が胸をよぎる。
○○:(あの時、助けてくれたから)
体育の授業で倒れたあの日。
保健室で目を覚ましたとき、隣にいたのは——凛だった。
無言で、でも確かに、そばにいてくれた。
そのことが、ずっと頭から離れなかった。
○○はボトルをぎゅっと握りしめて、立ち上がった。
⸻
グラウンドの端。
凛は、ひとりでボールを蹴っていた。
乾いた音が、一定のリズムで響く。
○○は少し離れた場所で立ち止まる。
○○:(……やっぱり、帰ろうかな)
その瞬間——凛がこちらに気づく。
視線が合う。
逃げ場は、もうない。
○○: 「……あの!」
声が、思ったより小さい。
凛はボールを止めて、ゆっくり振り向く。
凛: 「何」
短い返事。でも前みたいな冷たさはない。
○○は一歩だけ近づく。
○○: 「これ……」
震える手でボトルを差し出す。
○○: 「えっと……ありがとう、の……」
うまく言葉が出てこない。
○○: 「この前……保健室まで、運んでくれたから」
凛は黙ってボトルを見る。
少しの沈黙。
風が、二人の間を通り抜ける。
凛: 「……手作り?」
○○は、小さく頷く。
○○: 「変かもしれないけど……」
その瞬間——
凛がボトルを受け取る。
凛: 「別に」
キャップを開けて、そのまま一口。
○○の心臓が大きく鳴る。
凛は少しだけ間を置いて——
凛: 「……悪くない」
その一言。
○○の表情が一気に明るくなる。
○○: 「ほんとに……?」
凛は小さく頷いて、もう一口飲む。
凛: 「ちゃんと考えて作ってる味」
○○は一瞬、言葉を失う。
○○:(……そんなふうに、分かるんだ)
少しだけ照れくさい。
○○は勇気を出して口を開く。
○○: 「……あのさ」
凛がちらっと視線を向ける。
○○: 「また……作ってもいい?」
自然に出た言葉。
凛は少し目を細めて——
凛: 「好きにすれば」
そっけない返事。
でも、その声はどこか柔らかい。
夕焼けの中。
二人の距離は、ほんの少しだけ縮まっていた。
まだ名前も、ちゃんと呼び合ってないのに。
それでも——
確かに、何かが変わり始めていた。