テラーノベル
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B「……実はね……。キティ、パーティーで「魅了の魔法」使ったでしょ?それがまだ残っていたらしくて…貴族達は…キティの身体だけでも欲しいって、キティが身体を差し出すなら悪魔執事の処刑を遅らせたり取りやめたりしていいって…そう言ったんだ」
K「…?私の身体が欲しい…?不老不死になりたいってこと?」
B「違う!彼奴は…キティを抱きたいって…あけすけに言えば、キティとセックスしたいって…。まだ子供だけど、数年もすれば子供だって産めるようになるだろうからって…キティとの子を望む奴らも居た。キティとの子を持つことがステータスになるんだろうね。…それに、最悪縛り上げて嫌がるキティを犯すのもそれはそれで楽しそうだっていう…なんというか…アブノーマルな趣味の奴も少なくない。レイプの形を取ってもキティを抱きたいって…。もし、キティが不老不死だって知られたら…そんなアブノーマルな趣味の奴は大喜びするよ。殴っても首を絞めても水に沈めても…死なないんだから。もし頷けばキティを永遠の地獄に落とすことになる…。好きでもない奴らに犯され続けて、子供を産まされる…。終わりなく、永遠にね。きっと、ずっと監視下に置かれて…執事さん達の後を追うことすら許されない。そんなの…僕は…僕は、絶対に嫌だったんだ。せっかくキティが死んで全てのしがらみから解放される執事さん達と楽しく暮らす準備をしてるのに…この世界に縛り付けられて、僕達にも会えなくなって、執事さん達を生き返らせることもできず、何をしても壊れない子供を産むための機械にされる…。そんなのは許せなかったんだ…。キティなら身代わりを作って渡すこともできたかもしれない。でも、僕にそんな技術はなかった…。だから明日にでも迎えに行くって言っている貴族達をぶん殴って殺そうかと思ってしまって…余計に処刑を早める結果になってしまった。もう交渉の余地なんてない。話し合うとすれば、本当にキティを貴族達に渡さないつもりだって分かってもらうことと、執事さん達の処刑にキティが見物しに行っていいかを決めることくらい。……ごめん、本当にごめん。キティが幸せになれるって信じてたのに裏切られそうになって…僕は自分を抑えられなかった…」
そこまで説明すると、ブランはケイティを抱きしめたまましゃくりあげて泣き出してしまった。ケイティはまさかそんなことになっているとは思わず、何と声を掛けたらいいのか迷って、ブランを抱きしめ返すことしかできなかった。
🍷「…お兄様が具体的に何をしたか、説明が必要でしょうね。まぁ、私としてはもっとやってもよかったと思うんですけどね」
🔑「ルカスさんには同意ですが…あれ以上やっていたら明日にでも処刑されている可能性だって否定できませんから、私はあれくらいが妥当かと」
一緒に交渉に行っていた2人はブランを責めることなく、なんならもっとやってもよかったと言い出す。ケイティはこんなにブランが自責の念に駆られて泣いているというのに、と不思議に思って何があったのか説明を求めてブランの胸に埋めていた顔をずらしてルカスとナックを見た。
🍷「では、主様も気になっているようですので説明をしますね。貴族達から卑しい提案をされたお兄様は「誰がそんな条件で処刑までの時間を延ばすと思ってるんだ!ふざけるな!」と叫んで、魔法を使って目の前の机を粉砕されたのです」
🔑「初めて魔法を見た貴族達は「悪魔の力だ、悪魔執事の主達も化け物だ」とお兄様を恐れて、早急な処刑を求めました。しかし、そこは私が「主達は仕事を終えたらもうこの世界から出ていく」と説明いたしましたので、主様方の処刑は無くなりましたのでご安心を。…ただ、主様を差し出す以外に処刑を延ばす方法も無ければ、お兄様の魔法のせいで早急な処刑が求められてしまった…というのは事実です。そこをどう解釈なさるかは主様にしかできないことです。ですが、我々としてもこれがあの時にできた最大限だと思っております」
K「…そうなんだ…そんなことが…。でも兄さんが怒ったのを2人がフォローしてくれたから1週間の猶予を貰えたんだよね。ルカス、ナック、ありがとう」
🔑「身に余る光栄でございます」
🍷「お礼ならお兄様に。フィンレイ様に「最後のお別れをする期間を少しでいいから欲しい」と冷静さを取り戻して処刑の日程の調節をしてくださいましたから」
玄関ホールで話をしていると、玄関のドアが開いて誰かが帰ってきた。
🐦⬛「おやおや、何だか重い空気だね?交渉決裂でもしたのかな?」
玄関から入ってくるなり軽口を叩いたのはクロウザーだった。その手元にはリードがあり、足元には中型犬くらいのサイズのもふもふが居た。
ケイティは一瞬でもふもふに魅了されて、ブランの拘束を解くとクロウザーに駆け寄って足元にしゃがみ込む。
K「可愛い〜!!この子がバスカル?」
🐦⬛「ああ、そうだよ。こう見えてかなり強い用心棒だから食べられないようにね」
K「食べられたらバスカルが私の奴隷になっちゃうよ。それはクロウザー、嫌でしょ?食べないように言いつけておいてね」
🐦⬛「…どこまで言うことを聞いてくれるか分からないけど、善処するよ。バスカルがご主人サマの奴隷になってノワールやブランのようにこき使われるのは可哀想だ」
K「あ、でも寿命で死んだら新しい器に魂を移して不老にできるよ!犬の寿命って20年くらいでしょ?それはクロウザーにとっては短すぎると思うし、せっかくボスキが犬小屋が届いたから設置するって言ってたから勿体ないし!どう?」
🐦⬛「うーん…そうだねぇ…」
クロウザーはしばらく考える素振りを見せる。
クロウザーが考えている間、ケイティはバスカルと遊んでいた。正確にはバスカルに遊ばれていた。
K「お手!」
バス「フン」
K「おーてー!」
バス「フン」
K「…シロより冷たい…」
お手をさせようとして全部シカトされたケイティは恨めしそうにクロウザーを見上げる。
🐦⬛「おやおや…バスカルは結構気が強いからね…。懐くまではお手なんてしないと思うよ。それで、不老にする件だけど…寿命で死んでからならお願いしようかな。相棒が居なくなってからの人生は寂しいものになりそうだからね。勿論別の犬を飼うのも悪くないんだけど…やっぱりバスカルには思い入れがあるし…同じ時を生きてくれるなら、嬉しいからね」
クロウザーの言葉にケイティが頷き、立ち上がるとブランはいつも通りのケイティに安心したように笑っていて、でも、少しだけ後悔しているようで視線は下向きだった。そして、その視線が胸のあたりを映した瞬間ブランは「うわっ」と悲鳴を上げた。
B「なにこれ!?泥だらけなんだけど!?明日からも使うのに…洗濯間に合うかな…?なんでこんな…」
そして、バスカルと遊び終わってこちらを向いているケイティを見て、納得して頭を抱えた。
B「キティ、その泥だらけって…畑を爆破しながら耕してきたんだよね?せっかくフルーレ君が作ってくれたドレスが台無しじゃないか…。洗濯は僕がローブと一緒にしておくから乾かすの手伝ってよね?」
ブランはどちらもフルーレに見せたら「せっかく頑張って作ったのに!」と怒られそうなほど汚れたドレスとローブは証拠隠滅のためにさっさと洗濯することに決めた。ブランがローブを脱ぎ始めると、ケイティも背中のチャックを下ろし始め、クロウザーはすぐにケイティに背を向けてバスカルを連れて別邸に逃げ帰り、ルカスとナックは慌ててローブのフードを目深に被って視界を遮った。
B「…ちょ、キティ!?こんなところで脱いじゃダメだよ!一応女の子なんだから恥じらいを持って!あぁもう、ルカスさんにもナックさんにも気を使わせて…キティは色々雑なんだよ、本当に…」
ブランがいつもの調子を取り戻すと、放置されてどうしたら良いのかと様子を伺っていた、ノワール、ボスキ、アモンがブランのもとにやって来た。
N「まぁまぁ、いつものことじゃねえか、兄さん」
🦾「俺は主様を女として見てねぇし、他の執事に聞いても主様は「子供」の括りに入れてる奴らが大半だろ。というか、特訓で殺された主様が地面に落ちる時にパンツが丸見えだったから、ほとんどの執事は主様の下着なんか見ても動じないと思うぞ?」
🌹「そうっすよ〜何千回主様のパンツ見てきたと思ってるんっすか?今更下着なんか見せられても「それが何っすか?」ってレベルっす。全然嬉しくないっす。というか、それなら主様の入浴補助してるフェネスさんがまるで変態みたいになるじゃないっすか。裸見せられても誰も動揺しないっすよ」
B「でもルカスさんもナックさんもクロウザーさんも動揺して逃げたり目を隠したりしてるけど?」
🌹「それはベリアンさんやミヤジ先生に叱られるのが怖いからっすよ。俺達はのらりくらり躱すから平気なんっすよ。でも、あの3人はそういうの苦手そうっすからね〜。変に真面目なところあるっすから」
🦾「特にルカスさんに対するミヤジ先生の当たりはキツめだからな。和解したとはいえ、まだまだ恨みは消えてなさそうだしな」
N「ふーん、皆大変なんだね。ところで、俺達も庭いじりしたり草むらで昼寝したりして汚れちゃったから風呂入って着替えようぜ」
🦾「そうだな。じゃあ着替えの用意したら大浴場に行くから先に入ってていいぞ」
🌹「俺も着替え持ってくるっす」
N「じゃあ俺は先に風呂に入ってる」
K「私も一緒にお風呂入る!」
B「ダメ。絶っっっっ対ダメ」
K「でも、裸見ても何とも思わないって…」
B「あのね、キティ。貴族達は子供の姿のキティを孕ませたいって思ってるんだよ?そんな風に見る人間だって居る。だから無闇に肌を晒しちゃダメ。分かる?とりあえず部屋で着替えよう。ルカスさんやナックさんにも申し訳ないしね。ほら、チャック上げて。行くよ」
ケイティは納得できないという表情のまま、ブランに部屋まで連れて行かれてしまった。
その後、必死で泥汚れを洗って落とそうと奮闘しているブランに向かってケイティが「そういえば服の汚れを落とす魔法があった気がする」と言ったことで更に怒られることになるのだった。
K「よし、あと1週間でお庭を完成させるよ!本気で頑張っちゃうんだから!ということでアモンとボスキは室内に避難しててね」
🌹「今日は雑草の処理をしてから芝を植えるんっすよね。そこまで終われば庭は大体完成したと言えるっす。あとの問題は畑くらいっすか。何を植えるか決まってないんっすよね〜」
🦾「室内の装飾やらインテリアの準備やらはもう終わってる。俺は畑なんざあっても野菜は食うつもり無ぇから手伝わない。畑はバスティンあたりを連れてきて作った方が指示も的確だろ」
K「ボスキはもうこのお屋敷の欠片、完全にサボるために使ってるね…。ゴロゴロしてばかりじゃなくて少しは運動してみたら?繋がってる街に美味しいお菓子屋さんがあるんだよ。ちょっと距離はあるけど。でもお散歩にはちょうどいい距離だし、ハウレスから盗む手間もないし、誰にも文句言われないし、お金は私持ちだし、何もデメリットないでしょ?」
🦾「主様…。はぁ、じゃあ雑草を燃やしてる間に菓子を買いに行ってくるか…。金はまぁまぁ残ってるからアモンと主様の分も買ってきてやるよ。楽しみにしててくれ」
🌹「俺は絶対苺のスイーツがいいっす。よろしくっすよ、ボスキさん」
K「私はクッキー食べたい!真ん中にジャムが塗られてるやつ!」
🦾「へいへい、じゃあ買ってくる。主様、その菓子屋はどの辺だ?」
K「私の拠点の近くに大通りがあるでしょ?大通りに出たら左に曲がってずっと真っ直ぐ歩けばすぐ分かるよ。大きな看板にケーキの絵が描いてあるから」
ボスキは門から出て街の菓子屋に菓子を買いに行った。その間に早く雑草の処理をしなくては。アモンを室内に避難させ、お湯の沸かし方とお茶の茶葉がどこにあるかを教えると、ケイティは屋敷の屋根に上り庭全体を見渡し範囲選択を開始した。
範囲選択が終わるとあとは雑草を燃やすだけ。ケイティはニヤリと笑うと杖を取り出して両手で握り、空に向かって掲げた。
K「【我が愛しい親友よ、現れ給え】」
ケイティが呪文を唱えると、ケイティの隣に火を吐きながら空から降りてきた竜が着地した。
竜「久しいな。この我を呼んだということはさぞかし楽しいことをするのだろうな?」
K「うん!範囲選択してるから雑草全部燃やしてくれる?その後は畑を作るから地面を爆破して耕して。お礼は畑で育てた野菜食べ放題。どうよ?」
竜「……そんなつまらん理由で我を呼び出したのか」
K「つまらん!?大事な仕事だよ!?それに草食竜だから野菜食べ放題は喜んでくれると思ったのに…」
竜「まぁ、野菜食べ放題は魅力的だ。だが、お前の力があればそのくらい簡単だろうに…」
K「服を汚すのを禁止されちゃってさ〜、土を耕せる友達なんて君以外思いつかなくて」
竜「まぁよい。とりあえず燃やして耕せばよいのだな?野菜食べ放題の約束、忘れるなよ?」
K「当たり前よ!美味しい野菜を保証する!」
竜は地面にどぉん!と地響きと音を伴って着地して深々と息を吸い込む。そして、すべてを焼き尽くす勢いで炎を吐き出した。竜の周りの雑草は一瞬で灰となり、遠いところの雑草はパチパチと音を立てながら燃えていく。ケイティは、一度の炎でかなりの面積を燃やし尽くした竜の力を眺めながら、楽しそうに畑には何を植えようかなと考えていた。
ちなみに、竜が着地した衝撃は屋敷の中にも響いて、広いコンサバトリーで鉢植えに何を植えようかなと考えながらお茶をしていたアモンがティーカップを落として太腿にお茶をぶち撒け、「あっちぃ!」と叫んで、後で火傷をケイティに治してもらうことになるのだった。
竜による雑草処理は数分で終わり、範囲選択されて燃やされた土地は所々から煙を上げていて、まるで火山の一角のように赤い溶岩ができていた。
K「……やりすぎたかな……でも、後で氷魔法で冷やしてから芝生植えれば大丈夫だよね!」
竜が屋根に戻ってきたところで範囲選択の選択範囲を変更し、畑予定地をぐるりと囲むようにした。
K「じゃあ次は畑の準備お願い!」
竜はもう一度地面に降りると、今度は選択範囲から泥や土が出てこないのをいいことに、全力で地面を爆破した。これだけ深く耕せばゴボウを植えてもよく育つことだろう。
ちなみにアモンはその時氷嚢に氷を入れて太腿を冷やしながら、見るからに強そうな竜が雑用に使われていて畑を耕しているという光景が信じられず、「きっと主様が驚かせようとして窓に映る背景を変えているのだろう」と現実逃避をしていた。
竜「終わったぞ。美味い野菜を期待している」
K「ありがとう!いや〜、本当に仕事が早いね!君ならすぐ終わらせてくれると思ってたよ。野菜は種まきしたり苗を植えたりする時間が要るからちょっと待ってね」
竜「分かった。では我はお前の実家…と言っていいのか?竜用の部屋が用意されている屋敷で待っている。準備ができたらすぐ呼べ」
K「分かった!期待して待っててね!」
竜は雪山登山組が利用していた屋敷の欠片に移動し、快適な部屋で昼寝でもするつもりなのだろう。ケイティが許可していない欠片移動の魔力消費にすら耐えきれるほどの強い竜の魔力に、ケイティは執事達にもそのくらいの魔力を与えられるアクセサリーを作ってあげないといけないな、と思った。
灰だらけで溶岩までできてしまった庭にアモンを招いて芝生を植えるのは危険すぎる。そう思ったケイティはすぐにまた選択範囲を変更してから氷魔法で地面を凍らせて冷やす。その氷すらすぐに溶けて地面を濡らしているので、竜の炎の威力は凄まじいと改めて実感した。昔は一緒に国1つを滅ぼしたり、魔物を率いて世界征服を狙う魔王を討伐したり…といった大仕事ばかりさせていたので実感は薄かったが、竜はやはり最強の友達だ。使い魔にしてもよかったのだが、異様に長い寿命と、草食と、ものすごい量の魔力が組み合わさって簡単に使い魔にできなかったので「親友」という形を取っていつでも召喚できるようにした。その判断は間違っていなかっただろう。こうしてつまらない仕事まで、真面目に、完璧に、やりすぎなほど、やってくれたのだから。
地面が芝生を植えられる温度まで冷えたことを確認すると、ケイティはアモンを呼びに屋敷に駆け込んで、コンサバトリーの扉を叩いた。
🌹「主様!なんか…地震が2回くらい起こらなかったっすか?すごい音もしたし、この屋敷壊れたりしないっすか?」
K「地震…?あぁ、着地の時の揺れね!竜だから図体がデカくて移動の度にどしんどしん煩いよね〜。足跡もクッキリついちゃうし、ずっと飛んでてほしいよ。まぁ体重で魔物を踏みつぶして殺すって戦法を取ってた時もあったから、一概に悪いとは言えないけどね〜。あと、この屋敷は私が使える魔法を限界まで詰め込んだ要塞みたいなもんだから、ちょっとやそっとじゃ壊れないよ?あの竜が本気で壊そうとしても壊れなかったんだから、耐久性は最強レベルだよ!……でも本気で屋敷を壊そうとしてくれたおかげで最終決戦の時に召喚しようとしても「寝てて無理」って表示がでちゃってね…。今回はあんまり役に立ってくれなかったね」
🌹「ははは、主様…。じゃあ窓の外の景色は全部本当だったんっすね…。毎回驚かされるけど、マジで慣れないっす…。主様のドッキリのレパートリーが多すぎるんっすよ。もう少し優しいドッキリにしてほしいっすよ。こちとら、お茶をこぼして火傷したんっすからね?」
K「えっ!?火傷したの!?どこ?」
🌹「ここの…見えづらいっすけど、濡れてちょっと色が変わってるところっす」
K「傷口確認したいから脱がすよ」
🌹「え!?いや、恥ずいっす…ってズボンどこ行ったんすか!?あんまりパンツ見ないでほしいっす…」
ケイティは魔法でズボンの座標だけを変えて脱がせて、火傷したという太腿が赤くなっているのを確認した。しかし、アモンにとっては心の準備もできていないままいきなりズボンを脱がされて、かなりの羞恥心を感じていた。でも、そこまで気にしないのがケイティ。ケイティはノワールが風呂上がりにパンツ1枚で歩き回る姿を見慣れているので、男のパンツなど気にならない。ケイティの治療を受けながら、そんなことなど知らないアモンはお兄さん達に叱られるかもしれない、と震えながら手でパンツを隠していた。
治療を終えてズボンが戻ってくると、アモンはようやくパンツを隠していた手を自由に動かせるようになった。お茶で濡れていた部分も乾いて戻ってきたので、これなら作業に集中できることだろう。
2人は庭に出て、収納空間に入れていた芝生を大量に取り出した。
🌹「よし、この芝生のマットを敷き詰めていくっすよ〜!……で、この灰だらけの庭はさっきの竜がやったんっすよね?焼畑農業ってのもあるっすから焼くのは合理的…なのかもしれないっすけど、わざわざあんな怖いモノを呼び出すなんて、何考えてるんっすか?びっくりしたんっすよ?」
K「うーん…だって服を汚したり燃やしたりしたらまた怒られちゃうじゃない?それを避けるためには効率よく燃やしたり耕したりできるモノを召喚すると楽でしょ?だからあの竜…友達なんだけどね、あいつを召喚したの。今は屋敷の自室でお昼寝してるところだよ、多分」
🌹「ソイツ、人間を食べたりしないっすか?襲われたら絶対勝てないから怖いっす…」
K「ああ見えて草食だから食われることはことないよ。…食べてくれたら私の奴隷にできたんだけどね」
🌹「そう、なんっすね〜…」
アモンはもう、ケイティが服を汚したりしたくないからという理由で最強な竜を呼び出したこと、あの強そうな見た目からは想像がつかないが草食であること、ケイティが食われていたら竜ですら奴隷にできること…どれに驚けばいいのか分からず、乾いた笑いをすることしかできなかった。
芝生を植えるのは「物体を動かす魔法」を使い、2人で手分けして行うことで1時間ほどで庭中に敷き詰めることができた。人力でやっていたら1週間という短い期間では植え終わらなかっただろう。ついでに大きな木になる苗も裏庭に植えて、最後の仕上げに花壇に獣避けとパセリ避けの魔法をかけて、とりあえずの庭は完成だ。あとはアモンがちまちま変えてくれることだろうから、丸投げする。
K「次は畑作らないといけないから、バスティンとロノにどんな野菜を育ててるか確認して、株分けしてもらってくるね。あとは私がやるからアモンは庭の気になるところいじってていいよ」
ケイティが姿を消すと、アモンは農作業用の道具入れからスコップやゴミ袋などを取り出して、花壇の草むしりや間引きを行うことにした。
その後畑に株分けしてもらった野菜を植えて、足りない分は急いで園芸店まで飛んでいき苗を調達して、畑はすごい速度でできあがった。
しかし、作物が育たなければ竜との約束である「野菜食べ放題」が実現できない。ケイティは今度は雑草まで伸ばすことがないように範囲選択をしっかりとしてから息を吸い込み、歌を歌い出した。
K「はぁぁ〜〜〜〜〜♪」
すると、苗だった野菜の背がどんどん伸びていき、小さな実をつけた。ケイティが1番を歌い終わったところで作物は豊作以上の実をつけて、瑞々しく輝いていた。
K「うん、これだけあればアイツも満足してくれるよね、多分」
ということでもう一度召喚しようとしたが、「ただいま睡眠中です」とエラーメッセージが出てきた。
K「アイツめ…ぐっすり寝やがって…本当に寝汚いのは昔から変わらないんだから…」
ケイティは竜を起こすために屋敷の欠片に飛んだ。
K「おーい!野菜の準備できたから起きろー!!」
竜「ん……ぅん………」
竜が快適に過ごせるように整えられた、何もかもが大きく広い部屋の中で、ケイティはあらん限りの声で竜を起こそうと叫んでいた。しかし、竜は適当に返事をしてはまた眠ってしまう。
K「おーきーろー!!」
ケイティが何度叫ぼうとも、ベッドを揺すってみようとも、鱗を1枚剥がしてやっても(鱗は定期的に生え変わるので問題ない)、あまり濡れるのが好きではないので水をかけてやっても、起きない。
K「もう!凍らせてやるぞ、こら!」
こうなれば最終手段。火竜のため、寒さに弱いのを利用して起こす作戦に移行する。この方法ならば大体成功するので、ケイティは気合を入れて杖を呼び出して構えた。
竜「ん?んん…。寒いな……。って凍っている!?」
竜は氷の中に閉じ込められていることに気づいて、やっとびっくりして目を覚ました。そして、ガタガタ震えながらケイティに恨み言を言う。
竜「毎度毎度、どうして我を凍らせるのだ?もっと優しく起こしてくれと何度言えば分かる?」
K「アンタがどんな起こし方をしても起きないからでしょ!?こっちも凍らせる必要がないなら凍らせてないよ!アンタが悪いんだよ!?」
ケイティは氷を溶かしながら反論する。竜はその怒り方を見て、昔のことを思い出す。昔…本当に竜がまだ子供で、ケイティが上に乗ったら飛べないほど小さく弱かった頃、毎朝大量の水をかけられて起こされていたのを思い出した。その時も同じことを言われた。その頃は昔から何も変わらない関係性を築ける長寿な友達ができるとは思っていなかった。人間なんてすぐ死んでしまう弱い生き物だと、誰かと契約するだなんて馬鹿のやることだと、そう思っていた。しかし、どんなに過酷な状況でも竜を守りながら戦い、好物のトマトを命の危険があるというのに盗んできて食べさせてくれたこと、少しの成長でも自分以上に喜んでくれたこと、何より孤独だった自分に寄り添ってくれた。そんなケイティをどんな扱いを受けても嫌いになどなれなかった。
竜は暖炉の側で身体を温めてから、手伝いをしたお礼の「野菜食べ放題」を堪能しようと欠片から欠片へと移動した。
竜「おお!これは大豊作だな!」
K「そうでしょ?おかわりもできるから好きなだけ食べていいからね!今の私は昔より成長してるの!もうトマトを危険なところから盗まなくても好きなだけ生やして実らせられるんだから!」
竜「それはすごいな。お前も成長するのか。もう我が子供の時には1人で魔物討伐ができるほどの強さがあったというのに…」
K「不老不死だけど、時間は止まってるわけじゃないからね。成長くらいするよ」
むしゃむしゃと竜が野菜を食べていると、門から短い悲鳴が聞こえてきた。
K「あ、ボスキにお前を連れてきたこと言ってなかった…」
竜「……その辺は成長せんな、お前は」
ケイティは慌てて、竜を見て驚き動けなくなっているボスキのところに走った。
K「ごめーん、ボスキ。びっくりしたよね?でも、あれは私の友達で、庭仕事の手伝いをしてくれたんだよ。今はご褒美に野菜食べ放題させてるところ」
🦾「そ、そうなのか…友達が竜って…なんか本当に主様は規格外だな…。あぁ、そうだ、主様が言ってたクッキー買ってきたぞ。アモンには苺クリームのミルクレープを買ってきた。俺のはマドレーヌの詰め合わせだ」
K「ボスキの分だけ多くない?まぁいいけど…」
🦾「で、アモンはどこだ?…お、芝生敷いたんだな。それなら犬小屋を設置するか…。最後のひと仕事、これを片付ければ本格的にサボれる」
K「ボスキ…アンタもブレないね…」
あくまでも引っ越しまでは必要なことだけをして、あとはサボるというスタンスを崩さないボスキに苦笑いしてケイティはアモンを呼びに行った。
野菜食べ放題はケイティが2回おかわりのために歌って終わった。
竜「はぁ、腹いっぱいだ。また何かあれば呼べ。また野菜食べ放題をさせてくれるのを楽しみにしてやる。…そうだな、久しぶりに遠乗りで日帰り旅行とかどうだ?どの世界もお前がこの…執事達だったか?と生活している間に様変わりしているから、楽しめると思うぞ」
K「引っ越しして落ち着いたら、必ず」
竜「そうか。では我は帰る。またな」
竜はバサッと羽根を動かして宙に舞い上がって、空の彼方に帰っていった。
ケイティはちょっと寂しい気持ちになったが、こちらに引っ越してきたら、屋敷の欠片と繋いで竜とほぼ同居することも可能だ。だから、寂しがる必要はない。それより、竜が約束してくれた旅行を楽しみにしよう。そう決めて、犬小屋を設置しているボスキの様子を見に行った。
🎩「済まないね、こんな形にしかできなくて」
K「いえ、お気遣いありがとうございます。最期の言葉を聞けるように、私たち以外を処刑に参加させないでいただけただけでも十分…幸せです」
🎩「…君には嫌な思いをさせてしまったからね。そのお詫びも兼ねてだ。…本当に、悪魔執事達の処刑に思うところはないのかい?随分と…その…落ち着いているから、不思議でね」
K「ふふっ、私は人間ではありませんから、誰かの死など見慣れているせいかもしれませんね」
🎩「そうか…。では見届けようか。悪魔執事達の最期を…」
K「えぇ、フィンレイ様。私は貴方を恨んだりなんてしてませんから怖がらなくてよいのですよ?」
フィンレイは処刑場で、ショーでも観るような気軽さの自然体で座っているケイティと、処刑されるというのに楽しそうに話している悪魔執事達を見て、鳥肌が立つのを抑えられなかった。
#オリキャラ
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コメント
1件
MAKOさん、第17話読了です! 今回はブラン兄さんの告白が重すぎて胸が痛みました…。ケイティを守るためにあの場で怒ったのも、貴族の提案が悍ましすぎるからこそですよね。あの状況で冷静でいろと言う方が無理だと思います。 一方で竜との雑談シーンは息抜きになって最高でした。「つまらん理由で我を呼んだな」と言いながらも畑を耕す竜、そして凍らされて起こされる竜…親友って素敵ですね🤍 暗い展開と軽妙な空気のバランスが絶妙で、一気に引き込まれました!