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僕がゾルダーク領から戻り四日になるが父上とキャスリンは戻らない。報せが来ないなら何か起こったということではないだろうけど予想よりも遅い。まさか、戻らないつもりではないよな…レオンがいるんだ、それはないはずだ。


「カイラン様」


扉が叩かれ顔を出したのはハロルドだった。


「ライアン様が旦那様に呼ばれていらっしゃいました」


椅子から立ち上がり部屋から出て問う。


「父上が戻ったのか?」


「いえ、ライアン様の元に早馬を送られたようで。邸で待つようにと」


キャスリンに何かあったか?ホールに行くとライアン医師が待たされていた。


「ライアン医師!父上が?」


「カイラン様、戻るから邸で待つようにと。報せにはキャスリン様の体調がよくないとありました」


馬車の長旅が負担になったのか?何故こっちに報せないんだ。

ライアン医師をホールに置いてある椅子に座るよう促し、僕は外の様子を見に行く。昼は過ぎ日暮れに向かっている。王都の端に泊まったか、体調を崩したキャスリンが共にいるなら、速度は落とす、それならそろそろ着くだろう。


「ハロルド、レオンは部屋にいるな?」


「午睡をしております」


「乳母に起きても呼びに行くまで出るなと言え」


体調を崩したキャスリンはレオンを見たら無理をするかもしれない。日が暮れかけた時、門の方が騒がしくなる。馬車が入ってきたか。ゾルダークの黒い馬車が僕に近づき、中から声が届く。


「待て」


中で動いている気配が伝わる。


「開けろ」


僕が開けると父上に睨まれた。ハロルドと思ったか。


「ライアンは?」


「中で待ってます」


父上は自身のコートでキャスリンを包み腕に抱いている。そのまま下り邸へ入っていく。ホールで待っていたライアン医師に向け首を傾げてついてくるよう合図をし、自室へ向かった。


「ハロルド、後で教えてくれ」


どうせ僕は入れない。





空色をソファに座らせ、部屋にはライアン以外は入れず状態を話す。


「まだ月の物がきてないぞ」


「閣下、落ち着いてくださいって。そういうこともありますから、異常ではないんです。閣下の子種が強いのか、キャスリン様と相性がいいのかわかりませんが、症状を聞くと懐妊の可能性は高いですよ。キャスリン様、手首を……うん。懐妊でしょうね。おめでとうございます。悪阻の症状だけで痛みや出血はないですか?それなら経過を待ちましょう。もう乳は与えていませんよね?悪阻が終わり食べられるようになったら沢山食べてくださいね」


「前は初期の馬車の移動と挿入は禁じられたが今回は全てやったぞ」


空色が俺の手に触れつねる。恥ずかしいか、だが事実だ。


「えぇ、そうですね。危険性があるというだけで流産の高い時期は乗り越えましたから、異常がなければ大丈夫ですよ。キャスリン様はどうです?レオン様のときと違う感覚がありますか?」


俺の横で首を振り答えている。


「ならば結構ですよ。大事にしてください」


手を振りライアンに退室するよう促す。二人きりになり空色の脇に手を差し込んで持ち上げ膝に乗せる。細い体に腕を巻き付け額に口を落とす。


「いつ気づいた?」


あの邸に着いたときには気づいていたはずだ。これの様子が違っていた。


「ゾルダーク領のお邸に着いた後食欲が落ちたでしょう?少しお腹がおかしかったのよ。レオンを宿していたときと感覚が似ていて…でもまだわからないし、ハンクの言ったように月の物がきてなかったから馬車酔いかしらとも思ったの。でもあの邸でも続いたから、もしかしてって…でもわからなかったの」


「俺に言え」


「言ったら心配するのはわかってる。…繋がれないのは寂しいの」


そうだな、聞いていたらあんなに激しくは抱かん。


「ごめんなさい」


腕の中から俺を見上げ空色の瞳から涙を流す。何に謝る、腹の子か?俺はお前が無事ならそれでいい。


「泣くな」


背中を丸め流れる涙に吸い付く。


「離れないで」


まだ泣くか。身籠ると不安定になると聞く。何が不安だ?俺が離れるなどあるわけないだろ。


「離れんと言ったろ?お前が吐いても離れん」


前はお前から離れたんだぞ。忘れたのか。


「口を開けろ」


震える口に食らいつき舌をねじ込んで執拗に舐め回す。俺の唾液を飲み込み、それでも涙は止まらず抱き締める体は震えている。お前が落ち着くまでこうしてる。もう離せと言うまで抱いている。涙が止まるまで舐めてやる。


「何かあったらお前を選ぶ、それは変わらんぞ」


愛しい顔に口を落とす。ライアンに話す許可は与えていない。ソーマは心配してるだろうが少し待たせるか。大切な空色を抱き上げ寝室へ連れていく。


「着替えるか?」


腕の中で頭を振って俺の服を掴み離さない。ここまで頑なな空色も珍しい。まだ子を産んでから半年だ、不安にもなるか。


「不安か?」


「わからないの」


「そうか」


お前はこんなに若い。この数年で数多くの経験をしたんだ、混乱もするか。


「レオン…」


腕の中に抱いたまま執務室へ移りベルを鳴らしソーマを呼ぶ。


「子を連れてこい」


空色は俺の服を離さず掴んだままだ。寝室へ戻りソファに座る。窓の外は薄暗い。まだ腕の中でむせび泣く空色は年相応に見えるほど弱々しい。今までが大人びていた。これは奴より強く見えたからな。


「キャスリン、顔を見せてくれ」


返事をくれず、俺の服を濡らすばかりだ。


「空色」


そう言うと顔を少し上げて泣き腫らした瞳で見上げてくる。


「擦るな。赤くなる」


流れる雫に吸い付く。俺の名を呼びまた流す。

扉を叩く音が聞こえ、入れと告げると、子を抱いたソーマが近づく。手を伸ばし子を受け取り空色の膝に乗せると子の名を呼んで抱き締めまた泣いた。子は眠そうに口を開けて薄い茶の髪を掴んで口に含み、よだれで濡らしている。


「レオン…」


「また名をソーマに考えさせないとな」


「ふふふ…ソーマが困るわよ」


「喜んでる。こいつのときは十も挙げた」


空色は腕の中の子を撫でながら微笑む。


「ハンク…」


「ああ」


二人を抱いたまま立ち上がり寝台に向かう。子を抱きしめたままの空色を横たえ、その隣に寝そべる。細い指で子の髪を撫でて額に口を落としてはまた撫でている。


「ハンク…眠るまで側にいて」


「ああ」




ライアンはハンクの執務室を追い出されてからは困り果てていた。

閣下からキャスリン様の懐妊を伝える許可をとってない。なのにソーマさんとハロルドさんに囲まれてしまった。


「閣下から詳しく話はされますが、キャスリン様は深刻ではございません」


「また懐妊ですか?」


ハロルドさん察しがいいな。ここで僕が黙れば肯定となるが、嘘はつけないもんな。しかし、閣下は本当に子沢山になってしまうな。似合わない。


「また名を考えなければ…」


「えっ?レオン様の名前はソーマさんが?」


ソーマさんは笑顔で頷く。面白いことを考えるな。まぁ、長く付き合うハロルドさんより適任かな。


「また男児かな…女児かな、賭けます?」


「私は女児に」


おっソーマさんが乗るなど珍しい。


「私は男児」


ハロルドさんまでっくくっなんだかんだで、この二人も楽しみなのかな?


「少しキャスリン様の心が不安定になっているかもしれません。出産から半年です。本人も悪阻がくるまで気づけなかったでしょうから、いきなり妊婦で戸惑っている様子です」


閣下の執務室からベルが鳴りソーマさんが中に入るとすぐに出て急いで上階へと向かった。戻ってきたソーマさんの腕の中には目蓋を閉じ眠りについていたレオン様がいる。不安なキャスリン様が呼んだのかな。自分の出産から身近な死まで短期間で経験をして、多分閣下のことだから毒のことも話しているだろう。気丈に見えていたけどまだ二十くらいだろ。張っていたものが切れたかな…ここで夫の出番…妻に寄り添わないとって今閣下がしているな。







貴方の想いなど知りません

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