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#兄弟パロ
かの
456
#暁山瑞希
ねる
722
101
類「僕は…!」
ピンポーン。
類「…へ?」
類の宣言を阻止するように鳴ったのはインターホン。類は急な音にびっくりしたようで、口が止まってしまった。
司(それにしても、こんな時間に誰か来る予定があっただろうか…?)
下で司の母親が訪問者にドアを開ける音がした。
?「天馬という家はここかしら?」
類の喉から、吸い損ねた酸素が音を立てた。それは、静かな部屋によく響いた。
目の前で動きが完全に止まってしまった類を、司は反射的に抱き締めて、耳を塞ぐ。
一階から、類の母親と、司の母親が話している声が聞こえる。
朝比奈母「類を返してもらえます?まだ終わっていない参考書があるの」
天馬母「司から全て聞きました。今の類くんには休息が必要です。」
朝比奈母「あなたに関係ないでしょう」
天馬母「今日、若しくは暫く、類くんはウチで預かります」
朝比奈母「駄目です。類は勉強しなくてはならないので。それとも、通報でもしましょうか?」
天馬母「お好きにどうぞ。あなたのやっている事は虐待ですから」
そのタイミングで、類の母親が痺れを切らしたようで、大声で類を呼んだ。
朝比奈母「類!居るんでしょう?!帰るわよ!!」
類「ひ…」
耳を塞いで居ても聞こえてしまうようで、類が目を見開く。
司「大丈夫だ、類!聞かなくていい、帰らなくて良いんだ!」
暫く、類の母親の声は止まなかった。類はその度に肩を跳ねさせ、自身の細い体躯を抱いていた。
司「類、自分だけで抱えるな。…俺を掴め。」
司が柔い声でそう言うと、類は恐る恐る司の服を摘んだ。類は、大声の雨の中、縋れるのは司だけだ。
漸く、それが止んだ。
司(諦めた、か…?)
そう判断した司は、類の耳を塞いでいた手を外した。
類は、インターホンが鳴ってから初めて、ようやっと笑った。
類「司くん、ありが」
朝比奈母「類!」
だが、その笑顔も続かなかった。
司(まだ諦めていなかったのか…!)
司が再び類の耳を塞ごうとするも、一歩遅かった。
朝比奈母「そういえば、まふゆもあなた程じゃないけれど、優秀だそうじゃない」
類「!」
類はその言葉を聞いた途端、自分の意思で、自分の足で、立って歩き始めた。
フラフラとした足取りで部屋を出る類を、司は急いで追いかけた。幸い階段途中で追い付き、類の肩を掴む。
司「どうしたんだ…!そんな急に…」
類は、俯いた。
類「…離してくれ。僕は行かなきゃ、いけないんだ…」
類の瞳は恐怖と、絶望と、焦燥と、諦観と、それらで染まっている。類は、自身の肩に乗る司の手の上に、自分の手を重ねた。手放したく無いと言うように、一瞬、力を込めたが、直ぐに司の手を降ろした。
それから類は階段を下りきり、類の母親の元へと歩んだ。類は何度か司の母親にお辞儀をして、そのまま、類の母親に肩を抱かれ出ていった。
一連の流れの中で、類と目が合うことは無かった。
司(類が、自分の意思で…?いや、そんな筈は…。でも、類が自分で決めたなら俺は見守るべきで…。)
司は階段に立ったまま、誰もいなくなった玄関を眺めた。
類は家へと連れ戻され、リビングの机に座らされていた。正面には、母さんが座っている。
類は項垂れ、母さんは滾々と説教だか何かしらを喋っている。
もう、
類には台本を破られた時のような絶望は、無かった。
電話がかかってきた時のような恐怖は、無かった。
姉さんを交渉に出された時のような焦燥は、無かった。
司くんの手を離した時のような諦観は、無かった。
何も無い、空だった。
類(これで、終わりか)
虚無という名の、終わりの見えない感情だけだった。瞳は黒くない、闇じゃない、虚ろじゃない。とても、澄んでいた。
類(もういいんだ)
類は反省している、後悔している表情を造った。
類「ごめんなさい」
類(体温は、持ち帰れたから)
司の手に触れた掌を握った。
コメント
1件
わあ…第10話、一気に空気が変わったね。司が類を必死に守ろうとしてるのに、最後は類が自分の足で母親のところへ行っちゃうところ、胸がぎゅってなったよ。特に「虚無という名の終わりの見えない感情」と「体温は持ち帰れた」っていう対比が切なくて、もう何も感じたくないって諦めた類の心の奥に、それでも司との触れ合いだけは残ってるんだなって思うと…。続きがすごく気になるよ。かのさん、おつかれさまです🥀