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レイブが草原に足を踏み入れながら後ろに付き従う弟妹(きょうだい)、ギレスラとペトラに言う。
「じゃあ行って来るよ、小さなウサギしか居ないって話だからさ、大丈夫だと思うけど…… もし危なそうだったらダッシュで帰ってくるよ! そうなった時、皆で助かる為にも少し離れた場所で待っていてよ、そうだな…… あっちに見えるあの大きな岩の影で隠れていてくれないかな? ね!」
ギレスラの声。
『ダ、ダメグァッ! レイブ、ギエズラ、チグッ、タッ! イツ、ボ、イッショ! グガァ! ペトラ、マッテル、ガアッ!』
「ギレスラ…… そ、そっか、判ったよ! でも僕の後ろに付いて来るんだよ? 勝手に歩き回ったら駄目なんだからねっ! 守れる? 約束だよ!」
『グガアァッ!』
レイブは少しだけ安堵した表情を浮かべて言葉を続ける。
「良しっ、じゃあ行って来るね、ペトラはあっちの岩の陰で隠れているんだよ? そんで、僕かギレスラの声が聞こえたら一目散に逃げなくちゃ駄目だからね、谷間の鍾乳窟(しょうにゅうくつ)まで猪突猛進っ! 師匠達に伝えるんだよ? 良いかい、これは凄く大切な役目なんだからね! 判るよね?」
ペトラは無表情のままで、さも当然、そんな風情で答える。
『ううんレイブお兄ちゃん、アタシも一緒に行くよ! だって若(も)しもの時にさ、回復出来るのってアタシだけなんだからぁ、『回復(ヒール)』はまだ無理だけど『微回復(プチヒール)』は出来る様になったんだよ? 連れてってよぉ! 役に立つからさぁ!』
だそうだ。
レイブは首を傾げながら答える、そりゃそうだろ…… だってレイブが許可した所で魔獣であるペトラが入れるとは思えなかったからである、この場はアル=マハラージの魔力に満ちている筈(はず)なのだから……
「ええっとぉ、入れるんならそれで良いけどさぁ、多分無理だよ? ペトラぁ!」
ペトラも苦笑いで答える。
『うん、まあね、そうだろうけどさっ! 行ける所まで付いて行っても良いでしょう? そこで待つからぁ、お兄ちゃん達が心配で仕方ないんだアタシィ、どう? 駄目ぇ?』
ほぅ、コイツはコイツで中々のガッツじゃないか?
まあどうせアル・マハラージの魔法のせいで深部までは入り込める事は無いだろう。
そう考えたレイブは仕方なく小さな妹に許可を出したのであった。
曰く、
「うーん、仕方が無いなぁ~、んでも! ペトラは無理して付いてきたら駄目だからね? 限界だって感じた場所に辿り着いたらそこから少し、ううん、沢山後ろに下がった場所で待つんだよ? 良い? そして、僕やギレスラが逃げ始めたら回復とかはどうでも良いから一目散に逃げなくちゃ駄目だよ? 猪突猛進! 約束できるぅ? 出来ないんだったらスリーマンセル、解消しちゃうんだからねっ!」
ペトラは慌てた様子で大急ぎで答える。
『う、うんっ! 勿論だよレイブお兄ちゃん! ペトラ、苦しくなったらその少し手前で待ってるよ、約束するから一緒に行って良いでしょ? ねっ?』
円(つぶ)らな瞳でここまで言われてしまってはレイブも如何ともし難かったらしく、薄っすらと頷きを返したのみで、『竜の餌場』、そう呼ばれている草原に足を踏み出すのであった、後ろには子竜と小さな豚猪(とんちょ)が続いて行く。
自分達より背の高い草を慎重に掻き分けながらゆっくりと進んで行く三者は揃って息を潜めていた。