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前回のお話から1年ぐらい経った2人😌
2人はすれ違ったまま、、
〜nico side〜
憂鬱な目覚ましの音が響いて重たい体を起こす。
顔を洗って、掃除をしてから朝ごはん。
何年経っても変わらない毎日のルーティン。
ただ1つ変わったのは
「おはようにこ」
「うん、おはよう、今朝ごはん作るね」
朝ごはんを2人分作らなきゃいけなくなったこと。
毎朝同じ時間に出ていく彼を見送ってから、私も身支度をする。身支度と言っても、もう表に出る立場では無いから最低限のものだけど。
時間を確認すればもう家を出る時間で、急いで事務所に向かった。
ーーー
「僕と結婚してください。」
身体中に響くくらいの心臓の音。
今にも消え入りそうな声で返事をして、指輪を受け取った。
満面の笑みで抱き締めてくれる彼の背中に手を回して抱き締め返す。
間違いなく幸せな記憶だった。
独身アラサー女が肩書きの私が結婚出来るなんて思ってもいなかったし、ましてやこんなに優しくて素敵な人が私と生涯を過ごしてくれるなんて。
夫婦生活の事、そして1番にりほの事を考えて、私たちはYouTubeを引退した。
YouTubeをやっていた頃の収入のおかげで、お金には正直余裕があった。
りほは一般企業に就職して多忙でなくとも充実した日々を送っているし、私はというと事務所のスタッフとして演者を支える側になった。
結婚の報告をした時、りほは誰よりも泣いてくれた。その時のりほの顔を私は一生忘れない。
だけど、
間違いなく幸せなこの記憶は、何故かパズルのピースが合わないような感じがする。
これ以上何を求めるんだろう。と自分を叱っても、どうしても何かがピッタリハマらない。
ーーー
「今日の夜さ、りほと飲みに行きたいんだけど」
「おぉ、いいよ、時間気にせず行っておいで。」
「優しいね、ありがと」
「ん〜」
今日も、旦那さんは優しい。
私、幸せものだな。
引っかかる何かを無視して、心の中で呟いた。
ーーー
待ち合わせの時間より5分早く、通い慣れた居酒屋に入ると、酔っ払ったおじさんの声とか、甲高い笑い声が鼓膜に響く。久しぶりの感覚。
「西〜!おまたせ!」
「あ、!髪色変わったね!」
「うん、変えたばっかり〜可愛いでしょ」
近況報告もそこそこに、本当に大人の会話かと思うほど、意味のない会話で盛り上がる。
ねぇりほ、私たち何年経ってもこうやって会話が尽きないんだろうね。
そんな事を考えていると、西?と心配そうなりほの顔。だいぶ酔いが回って、頭がクラクラする。そんな私を気遣ってか、りほは帰ろっかと声を掛けてくれた。
ずっとりほと一緒に居られたらいいのに。
不覚にもそんな事を考えてしまう自分に呆れる。家に帰れば最愛の人がいるはずなのに、何故か息苦しくて、りほと過ごした今日は久しぶりに深く息が出来た気がして。
「りほちゃん」
「ん?」
会計を済ませて店の外に出たところで、そう声をかけた。
「まだ一緒に居たい」
「そうだね、」
それ以上何も言わず、足元がおぼつかない私を支えてタクシーに乗り込んだ。
やっぱり帰らされるか。
きっと朝帰りでも、りほの家に止まったと言えば全く怪しまれないだろうし、旦那さんも怒ったりはしない。だけど、親友と一緒にいた方が居心地がいいから家に帰らず一緒にいるなんて、結婚している私がしていい事では無い。
分かってるんだけど、お酒のせいか、制御が効かなくなって来ていて、
「ねぇ、りほちゃん、帰りたくない。まだ一緒に居てよ。」
気づけばそう口走っていた。
りほは一瞬困ったような表情をして、運転手に向かって口を開く。
告げたのはりほの住所。
「遅くなるって連絡しな。」
やった。まだ一緒に居られるんだ。短い連絡を入れた後、眠気に負けてりほに身を任せる。
「西、ついたよ、おーい」
「ん、、、」
眠りに落ちていた所を起こされ、理不尽にも若干不機嫌なままタクシーをおりてりほの部屋に入った。
ドアを開けると、りほの匂いが鼻の奥を掠める。
ソファに座ってしばらくおしゃべりしていると、もう日を跨ぐ時間だった。
「西、そろそろ帰らないとじゃない?泊まってく?」
本当は泊まっていきたい。
けど、
「泊まったら、帰れなくなっちゃう」
「どういうこと?」
むしろ私が聞きたい。
どういうこと?愛する人が家で待っているはずなのに、りほと2人きりの空間は酷く居心地がよくて、正直帰りたくない。
この気持ちを話したら、りほは分かってくれるんだろうか。私が言葉にできない気持ちを、上手に言葉にして、今までのように私を救ってくれるんだろうか。
「ねぇ西、なんかあった?」
「ん、、、」
「話してごらん」
優しい口調でそう言われてしまえば、もう話す他なかった。
「なんかね、なんか、」
「うん?」
「幸せなはずなのに、旦那さんも優しくて、こうやって話聞いてくれる親友もいて。なのに、なんか息苦しくて、何かが間違ってる感じがして」
「うん、」
「こんなに恵まれた環境なんだから、幸せじゃなきゃおかしいのに。なのに、」
「にし、、」
「苦しい、苦しいよ。こんなはずじゃなかった。」
優しく手を握ってくれた彼女の温もりに、一筋涙が頬をつたえば、後はもうとめどなかった。
〜〜〜
次回から大きくお話が動きます。
お楽しみに。