サイド トキ
「×××!」
「母さん!」
家の前、母さんが立っていた。その横には、母さんを守るようにマオさんとタエさんがいる。
「よかった……!×××が無事本当にでよかった……!!」
そう言って母さんは僕を強く抱きしめた。
こんな表情の母さんはいつぶりだったけ。
「母さんも、無事でよかった」
おそるおそる母さんの背中に腕を回して、そっと抱きしめかえす。
誰も何も言わず、冷やかしもしなかったのがありがたかった。
しばらくした後、母さんは徐に切り出した。
「私ね……、この人たちと話して考えたんだけど、少し入院しようと思う」
「……僕も、そのほうが母さんのためになると思う」
お金は、今までの活動してきた貯金があるから、たぶん大丈夫だ。
これから、僕たちは幸せになってもいいのだろうか?
ただ、それだけが不安だった。
あいつの会社の人たちは、まだいる。
いつ、あの日のように地獄に戻ってもおかしくない。
だから、母さんだけでも安全な場所に逃げて欲しかった。
「病院、毎日お見舞いに行くよ。だから、母さんも無理せずにね」
僕は、笑ってそう言った。
さて、と。
「本当にいろいろありがとうございました」
僕は帽子をかぶっている五人に向き直って頭を下げた。
「いいって!俺らがやりたくてやったんだからな!!」
キノさんが明るい笑顔でそう言った。
「俺もトキの作った曲に救われたから」
ふっとマオさんが目を細める。
「うん、トキには人を救う力があると思うな」
タエさんがそう言って微笑んだ。
「その力、モンダイジ団に入って生かしてみないか?!」
いいこと思いついた!と言わんばかりの勢いで、キノさんが僕の肩を掴む。
……?
「えっ、と……」
「ここは、暖かくていい団だよ」
キリさんが朗らかに笑う。
でも、
「僕みたいなこの世界に馴染めなかった人が、他の人と関わるなんて…………」
「何言ってんの!」
「私たち、全員モンダイジなんだよ!」
「俺、忘れっぽいから学校に馴染めなかった!」
「わ、私は施設育ちでいじめられてた……」
「俺は濡れ衣を着せられて誹謗中傷にあった」
「俺は、大切だった人が亡くなった瞬間を目撃したんだ〜」
「私は、私のことを私自身として見てくれる人がいなかった」
「「「「「だから、モンダイジ団」」」」」
「を作ったんだ!」
「「「「に入ったんだ」」」」
「おいでよ、トキ。私たちはあなたの仲間なんだから!」
みんな、辛い過去を持っていた。
けれど、それぞれが前を向いて、助けあって生きている。
僕も、こんなふうになれるかな。
「……活動の間に、時間がある時なら……」
「本当か!じゃあ、決まりだな!!」
早い。けれど、それも愛おしく思えてしまう。
僕はふっと笑った。心の底からでた本当の笑顔だ。
「これから、よろしくお願いします」
……第一章、完。
時間かかるかもしれないけど、第二章もあるから、気長に待ってて(*´ω`*)by作者
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