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夢見月 夢舞 side

高校生に上がって、初めての夏。

何かをする気も起きず、自分の部屋でごろごろしていたら…、なんだか急に、1年前のことを思い出した。

百鬼 透華と初めてまともに会話して、何故かあの子には見られたくなかったところを見られてしまった。

そんな、1年前のあの日のことを

(そっか…もう、1年も経ったんだ…)

時の流れになんだか実感がわかない。

それに、あのときの透華の表情の理由も分からない。

────あのとき、貴方はどんな気持ちだったの?泣きそうだった?怒りたかった?驚いた?

それとも、全部?


釈然としない心と透華のことをぐるぐると考えていると、なんだか気持ち悪くなってきた。

考え事をするなんて、元から得意じゃない。思い立ったら、すぐに動いていたから

「こんなに考えるのなんて、したことないの…」

────私、卒業するまで透華とろくに話してないな…

やっぱり、思い立ったが吉日だ。

夏休みの間、弓道部は部活があるはずだ。

今ならまだ、きっと間に合う

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

(…来ちゃった、けど…)

何を話したらいいのか、分からない。

つい、弓道場の近くをうろうろとしてしまう。もうそろそろ、部活動が終わってしまう


ウジウジとしているうちに、部活を終えたであろう後輩ちゃん達が出てきた。

その中には…────透華もいた

「っ!…フイ」

「あ…」

透華は一瞬こちらを見て、驚いたような顔をしてすぐに目を逸らしてしまった

嫌だ…お願い、こっちを見て────

気づいたら、透華の腕を掴んでいた


「話したいッことがあるの…ッ!」

「…ッ!少しだけ、なら…」

少しだけでもいいから…あなたと話がしたい



百鬼 透華 side

「もう、1年も経っちゃった…」

1年前の夏、先輩の噂が本当だったって知った。…知ってしまった。別に仲良かったわけじゃないし、ちょっと仲のいい先輩だったとしても、「あぁ、そうなんだ」としか思わない。

でも、あの先輩だけは違ったみたい。

分からない。どうしてあのとき、私は…

(あんなに泣きたかったんだろうな)


あのときから先輩が卒業するまで、ずっとまともに話せてない。たくさん、聞きたいことがある。

────なんで、そんなことをしていたの?

ずっと、ずっと聞きたい。けど、聞けない。

先輩は高等部に行ったから、別に会えないわけじゃないし、話せないわけじゃない。

でもずっと、ちゃんと顔が見れない。

(部活、行きたくないな…)

少し曇った空は、私の心みたいだった。


────────────

弓を引き、矢を射る。

その時は、心を静める。

その心はまさに、鏡のよう。


心を鏡にすることで、矢は当たる。でも、今日は全く当たらない。

まだ、心が荒れているのかもしれない。

何故、心が荒れているの?

分からない。どうしたらいいのか、分からない。

けど、ずっと心に引っかかるものがある。


(先輩に、会いたい)


────────────

あまり集中できないまま、部活が終わってしまった。友人や顧問にすら「今日はなんだか変だ」と言われてしまった。

「どうしたら、いいのかな…?」

帰る支度をし、弓道場を出た。

そこには、────────先輩がいた。


「ぁッ…!」

どうしよう、どうしよう。

今会えても、どうしたらいいのか分からない。

そう思い、顔を逸らしてしまった。

顔を逸らしたまま歩いていると、腕をがっしりと掴まれた。

振り向いた先には…先輩がいた

(諦めさせてよッ…)

私の心を読んだような先輩の瞳が、なんだか怖くてたまらない


「話したいッことがあるの…ッ!」

やめて

やめて

諦めたかった

気づきたくなかった

お願い

こっちを見ないで

「少しだけ…なら」

貴女への気持ちに、名前は付けたくないの









短いですがきります。

次はお話し合いになりますね。もうネタないです

新連載スタートしようと思うので、良かったらチェックしてください


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