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続きです!
こんな黒歴史駄作に♡を下さってありがとうございます!
それではどうぞ!
随分長いこと黙ってしまった気がする。スマホの画面を見るが、まだ通話は切れていない。
「……ハク?」
「湊。……大丈夫か?」
ずっと待ってくれていたのだろう。直ぐに返事が返ってきた。
「うん。大丈夫。思い出したよ。全部、思い出した。」
「……そうか。」
ふと疑問に思ったことを聞く。
「なんで、今、このことを俺に言うの?」
一瞬、ハクの雰囲気が凍った気がした。
「あの事件、自殺ってことで処理されたんだ。……でも、本当は違う。」
「どういうこと?」
「澄川さんは、殺されたんだ。自殺じゃない。他殺だ。」
「……は?」
何が起きているのか分からない。ハクは何を言っている?何を知っている?
「俺は犯人を知ってる。あの日、たまたまそのビルの近くにいたんだ。」
「玲が殺された、あの日に?」
「あぁ。用事があって、隣のビルに行ってたんだ。」
少しの沈黙。
「……あの日、あのビルに、澄川さんと一緒に_______。」
「美津紀が入っていった。」
言葉が出なかった。
ハクが何を言っているか分からなかった。
ただ、自分が深く傷ついたことは分かった。
「ごめん。これを伝えたら湊が傷つくのは分かってた。」
じゃぁ、どうして。
「でも、このことをずっと秘密にすることが正解だと思えなかった。俺なりに、ずっと迷ってたんだ。湊を傷つけたくなくて、でも事実を隠す選択が正しいとも思えなくて。どれだけ考えても、どうしていいか分からなかった。」
だから、今日、悩んでいるような顔をしていたんだ。
でも、どうして今さら。
「ごめん。本当にごめん。結局今、言わなきゃ良かったって後悔してる。馬鹿だよな。お前を傷つけて、自分の行動に自信も責任も持てなくて。……迷惑だよな。」
最後の声はほとんど掠れて聞こえなかった。
ハクがここまで自己嫌悪をしていることは知らなかった。能天気で、自由奔放で、悩みなんてない人間だと思っていた。
でも違った。
「ハク。……ごめん。」
何も気づけなくて。
一人でずっと抱え込ませて。
なぁ美津紀。
可哀想だよ。
玲を殺して、ハクを苦しめて。
そこまでして俺と付き合いたかったのか?
憎い。
醜い。
許さない。
許せない。
……だからさ。
「復讐する。」
お前を殺すために。
「……復讐?殺すのか?」
「うん。玲の為に、ハクの為に、自分の為に。美津紀を殺す。」
「……そうか。良かった。」
「良かった?」
「幼馴染で、付き合いがあって、いくら仲が良かったって、親友の恋人を殺した。そりゃ楽しい思い出だって沢山あるけど、もう人殺しをかばうために苦しみたくない。この一年半、美津紀に苦しめられたようなものだったから。それに、玲のことを忘れた湊に取り入った美津紀が許せない。」
「……そっか。」
「でも湊、ごめん。俺は、協力できない。親友の恋人を殺しても、一年半苦しめられても、それでも、小さい頃から一緒に過ごした幼馴染だ。殺したくない。」
「いいよ。ありがとう。」
「ごめん、自分勝手で。……いつやるんだ。」
復讐はなるべく早い方が良い。今日は、金曜日か。
「明日。明日やる。」
「……分かった。」
「じゃあね。」
電話を切ろうとすると、ハクの声が聞こえた。
「……湊。本当にやるのか。」
「_______もう決めたから。」
迷いはない。
「……そうか。」
次の日の午後2時。
俺は屏風ヶ浦の崖の少し手前の木の陰で美津紀を待っていた。
屏風ヶ浦は千葉で有名な観光名所だ。崖自体には立ち入れないが、崖に沿って遊歩道が設置されていて、下から崖を見ることが出来る。横には砂浜、その奥には海が広がっている。とても美しい場所だ。
でもそれは、観光場所としての場所。その裏側は断崖絶壁の崖で、崖の岩には激しい波が打ち付けている。落ちたら即死だ。ただ、景色自体は裏側でも十分に綺麗で、道中には私有地もあり、そのため道は整備されている。呼び出して怪しまれることは無いだろう。
だから俺はそこに美津紀を呼び出した。
ハクとの電話が終わった後、暫く考えていた。
そもそもハクが嘘をついている可能性があったから。
ただその場合、ハクが美津紀を俺に殺させる理由が無かった。
それに。
自分に謝るハクの言葉が上辺だけの物には思えなかった。
だから俺は美津紀を殺すことにした。
約束の時間の数分前に美津紀がやって来る。木の陰にいるため、俺には気づいていない。美津紀が崖の数十メートル手前に行ったところで声を掛ける。
大丈夫。
出来る。
「美津紀。来てくれたんだ。」
「あ、湊……。」
「ごめん、こんなところ呼び出して。」
「ううん、綺麗なところだね。」
あぁ俺はこんな人間と付き合っていたのか。
こんな人間を守りたいと思っていたのか。
「あのさ、突然なんだけど。澄川玲って人知ってる?」
「え……。」
驚愕した表情で美津紀が眼を見開いてこちらを凝視する。
「知ってる?」
「知ってるけど、何……?顔怖いよ。」
美津紀の顔に怯えが浮かぶ。
俺は今どんな顔をしているんだろうか。
まぁどうでもいいことだが。
「俺が何も知らないと思ってる?」
「……もしかして、思い出したの?」
「あぁ。全部思い出した。過去のことも、事件の真相も。」
「……事件の真相?あの、一年半前の?」
焦る様子も無く軽い口調で話す美津紀に腹が立つ。
人を殺しておいて、どうしてそんな平気でいられるのかが理解出来ない。
「___っ!とぼけんなよ!」
「湊、落ち着いて。誰から何を聞いたの?」
「ハクからだよ!」
「ハクから……?」
「お前が玲を殺したんだろ!お前が!」
「え……?どういうこと?」
「どういうこと、ってなんだよ!」
美津紀はきょとんとした顔を浮かべる。
こいつはどこまでとぼけるつもりなんだ?
俺は全部知ってるって言ってるのに。
「何を聞いたのか分からないけど、湊、私は玲を殺してない。お願い、信じて。」
「嘘も大概にしろよ!人の命を奪って、俺の人生壊して、ハクを苦しませて……!何様のつもりだよ!いつまで逃げ続けるんだよ!」
「嘘じゃない。嘘じゃないよ……。湊には言ってなかったけど、私、玲と親友だったんだよ。」
「は……?」
「あの子は静かな子だったけど、強かった。優しくて、大好きだった。尊敬してた。周りのノリに流されて行動する自分とは全く違って。殺したいなんて思ったこと無い。」
「じゃあ誰が玲を殺したっていうんだよ!」
「……言えない。」
「そうだろうな。自分です、なんて言えないだろうなぁ!」
「そういうことじゃない!私じゃないの!誰かは言えないけど、私じゃない!」
先程まで静かな声で話していた美津紀が悲痛な声で叫ぶ。
親友を殺しておいて、どうしてそんな悲しそうな顔を出来るんだ。
「お願い、信じて。信じてよ……。」
「そうやってまた俺を騙すのか?……もういい。美津紀の発する言葉が何も信じられないんだよ。これ以上俺を傷つけないでくれ。もう、……死んでくれよ。」
美津紀が呆然とした顔を浮かべる。
自分が今日ここで殺されるとは思っていなかったんだろう。
静かに美津紀に歩み寄る。俺が進んだ分だけ美津紀が下がっていく。お互いに一言も喋らず、相手の目をじっと見つめる。やがて、あと数歩で転落するだろう位置まで美津紀が追い詰められた。だが、美津紀の表情は何も変わらない。その代わり、口を開いた。
「……そっか。信じてくれないんだね。」
美津紀の目から涙が一筋、流れ落ちる。
気付けば、美津紀は苦しそうに微笑んでいた。
巨大な負の感情を押し殺すように、美津紀が俯く。
どうして美津紀が泣くんだ。
お前が殺したんだろ。
自業自得だろう。
そう思うのに、言葉が出て来ない。消えていたはずの迷いが膨らんでいく。
「私、他の誰かに嘘つき呼ばわりされても、人殺しって言われても良かった。……でも、湊には。湊だけには、_______私がそんなことしないって、言って欲しかったな。」
人というのはこんなに上手く演技ができるものだろうか。
……でも、ハクの言葉にも嘘が感じられなかった。
殺したのは美津紀だ。そうだ。
迷うことはない。一思いに突き落としてしまえばそれまでだ。
「言える訳ないだろ。ハクが全部教えてくれたんだから。」
「……分かった。じゃぁ、仕方ないね。」
美津紀が顔を上げた。
その顔はとても悲しそうに笑っていた。細めた目からは涙がとめどなく流れていた。
「湊はここで私を殺すつもりなんだよね。」
あぁそうだよ。俺の大事な人を殺したんだ。当たり前だろ。
「私が死んだら、もう、この事件に関わらないでね。……殺されるのは、一人で十分だから。」
何を言っているんだ。意味が分からない。
「でも湊は私を殺せない。人殺しも、一人で十分。」
そう言いながら、美津紀が一歩、後ろに下がる。
「今まで楽しかったよ。……ありがとう。」
そいうことか。
美津紀は自ら飛び降りようとしているんだ。
そんなことさせない。
美津紀は俺が殺すんだ。
「待っ_______」
「さようなら」
少し長くなってしまいました。
ここまで読んで下さりありがとうございます!