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「晴君なんてきらい、嫌い、!だいっっきらい!!」
…
静寂が鳴り響く。
己の言動を後悔する、彼がふつふつと怒っているのを感じる。
「………は?」
喉が鳴る、彼のこんな、地を這った様な声を聞いたことがない。
「…そう、藤士郎は僕の事嫌いなの」
ちがう、全部勢いで言ってしまっただけ、本当は大好き、でもそれを言おうとしても喉で突っかかってしまって、
「……はぁ、潮時かな」
今度は呼吸音が鳴り響く、きっとこれは僕の喉から鳴っている音。
「っはゅひゅ、ぅっ、は、ひゅっ、ぇぁうっひ、」
「はは、何過呼吸になってんの?」
「ゃ、ひゅっ、っう、やだ、ぁう、っう、かひゅ」
やだ、やだ、行かないで、さっきの言葉は嘘だから、僕から離れて行かないで、
口には出せない言葉が頭で循環する、
「何、嫌?藤士郎はワガママだね。僕の事嫌いって言ったり離れるなって言ったり。」
嫌われた、幻滅された、もう別れられるんだ、かっとなって言ってしまったのが間違っていた、全部僕が悪い、そんなのわかっている、だからやだ、離れないで、
「ゃ……、ぐす、やだぁ、ぅ…、ゃ…、離れないで、すき、だいすきだから、」
「最初から言わなきゃ良かったのにね?」
「ごめ、なさ、ぅ…、やだ…、」
あんな事を言った僕は馬鹿だ、大馬鹿者だ、指の一本や二本、なんなら腕を落とされたって構わない、だから離れないで、
僕には晴君しかいないのだから、
「藤士郎には僕しかいないんだから。」
… SideChange …
「 “ 藤士郎には僕しかいない ” 、ねぇ」
あーあ、怖い怖い。
たまたま立ち寄った同期の家から聞こえる声に肩を竦める。あんな甲斐田の一面を見たのははじめて、とは言わないがまぁ面と向かって聞いたのははじめて。元々藤士郎に対する独占欲が普通ではないのはわかっていたがあんな言葉巧みに洗脳地味た事をしているとは。
『長尾、藤士郎は僕のだからね』
一週間前ぐらいだったか、そんな事を言われた気がする。その時の甲斐田の表情、あれは絶対忘れない、忘れられない。ハイライトの無い空は曇り空、というか、鍋の底を焦がしたぐらい黒かった。
「…さて、見つかる前に逃げっか。」
同期の恐ろしさなんぞ知りたか無かった。
…
「…、」
今、長尾が居たな。まぁ彼奴は僕の邪魔をする奴ではないし良しとしよう、今の藤士郎の声は他の人には聞こえない様に術掛けてるし。
「はるく…、?ゃ…、こっちみてよ、、」
考え事をしていれば藤士郎は不安そうな表情を見せて僕の裾を掴んでくる。大方、まだ捨てられると思っているのだろう、絶対手放す訳が無いのに。…でもまぁ、そうだな。折角なら、
「じゃあ藤士郎、許してあげるからこのお薬試して見てくれない?」
お薬(魔の成分から抽出したものと薬(非合法)を混ぜたモノ)なんて、危険なものだけどまぁ人体に害は無いから大丈夫だろう。研究者の役得、って感じだな。
「ぁ…え、おくすり、?」
藤士郎が風邪を引いた時はいつも僕が薬を上げていて、そして日常的に料理にも混ぜている。料理は多分バレてないし風邪薬も市販薬だと思っているんだろうけど、あれ全部僕が作った薬なんだよ。あんまり人には言えないけどね。
「お薬って…、なんの、薬、?」
流石に怪しまれるか、この流れならいけると思ったのだけど。なんの薬、ね。
「僕の事がだぁいすきになるお薬♡」
… SideChange …
「んん゛ぅ…………」
今日も今日とて彼の帰りを待つ、彼から貰った碧い首輪を付けて、彼に付けて貰った紅い跡を眺めて。家に居るのは落ち着く、彼の匂いが充満しているから。なんて、変態臭い思考に陥るけど彼はそれも許してくれるだろう。彼は、彼だけは僕の全てを愛してくれてるから。何もかもを好きでいてくれるから。静寂な空間に飽きてきた時、外からカツ、なんて音が聞こえてきて彼が帰ってきたのだとわかった、嗚呼、その音さえも愛おしい。
「おかえり、はるくん、♡」