『君の手に溶けてゆく』
⚠︎注意⚠︎
この作品には以下の内容が含まれます。
・死ネタ
・自殺表現
・腐表現
・月島×山口
・山口がザクっと人を殺っちゃいます
以上のことが大丈夫だよーって言う人だけご覧ください
それでは本編へ
──────── 5 ────────
『山口、起きて。着いたよ。』
隣で寝ている山口を揺さぶって起こす。
『ん?もう…着いたの…?』
山口が眠そうにあくびをする。ただのなんでもない普通のあくびだが、僕には愛おしく、寂しく思える。
電車から降りた瞬間、冷たい風と潮の香りがした。外はもう真っ暗だった。がらんとした改札を抜けたあと、少し歩いて浜辺まで辿り着いた。
『夜の海って本当に真っ黒だね』
『そうだね』
『少し、少しだけ散歩しよっか』
山口は今にも泣きそうな顔をしていた。寂しそうな、悲しそうな、だけど綺麗だった。
暗闇の中に取り残された僕らはひたすら潮風の方角に歩いた。点々と灯りがつく浜辺を歩きながらふと海を眺めた。真っ黒な海は果てしなくて、潮風がまるで僕らを慰めているかのように優しく吹く。波の音と優しい潮風が心地よかった。ふと山口が立ち止まった。そしてその場に腰を下ろす。僕も寄り添うように座った。山口は真っ黒な海をただ一点見るばかりだった。そんな山口が怖かった。どこかに行ってしまいそうで。思わずギュッと山口の手を握る。
『…ツッキー』
『…どうしたの』
『…絶対、手離さないでね』
その声は震えていた。
『離さないよ、絶対』
山口はそっと微笑んだ。その目からは大粒の涙がこぼれていた。
『俺、いじめっ子を屋上から突き落としたとき本当に怖かった。』
『上から見たとき、地面に叩きつけられた、いじめっ子の体とその周辺には血が飛び散ってるの。』
『ひたすら、自分が怖くなって、パニックになってどうすればいいのか分からなかった。気づいたらツッキーの家の前まで逃げちゃっ てツッキーに全部ありのまますべて話ちゃって』
『初めはね、ツッキーが怖かった。通報されるかもしれない、怒鳴りつけられるかもしれない、俺のこと嫌いになっちゃうかもしれないって。』
『でも、ツッキーがゆっくり抱きしめてくれたとき本当に嬉しかった。』
『…山口』
『ねぇツッキー、俺死にたい』
山口のこんな表情は見たことがなかった。いつものまっすぐで明るい表情が嘘のように冷たく、鋭い目をしていた。僕はそんな山口を見ていられなかった。
『…ここまで言っといてあれだけどもっと違う道はあるんじゃないの』
『顔だってまだバレてないし黙っていれば普通に生活を送れるデショ。そんな自殺するだなんて…』
『ツッキー、俺はきっと人を殺すという大罪を犯しておいてそんなのうのうと生きていられる自信が無い。』
そして桟橋の上に立って山口は笑みを浮かべながらこう言った。
『ツッキー、俺と一緒に死んでくれますか?』
言いたいことは沢山ある。でも、それが山口の望みだ。現場にもいなくって何も出来なかった僕が唯一できること。
それが山口の救いなら…
『いいよ。一緒に死のう。』
そう答えた僕を見て山口は大粒の涙を流しながら笑っていた。そして僕の頬に手を伸ばした。親指で涙を拭かれ、初めてそこで自分が涙していることに気づいた。灯りの下でお互いに涙を拭きあった。
────桟橋の上に立つ。
ようやくお互いの涙がやんだ頃、お互いの顔を見合う。
『山口、世界で1番愛してるよ』
『俺も蛍が世界で1番愛してるよ』
僕は山口の唇にそっとキスをした。
────落ちてゆく。
山口のこの綺麗な手を二度と離さない。服が水を吸って重たくなって海底へと引き込まれる。衝撃でメガネは無くしてしまったけど不思議と山口の顔が見えた。地上の灯りがぼんやりと僕達をそっと照らしていた。水の中で揺らめいている髪とその姿がとても綺麗だった。本当に山口が好きで好きでたまらない。水の中でもう一度「愛してる」と伝える。しかし、その言葉は無惨にも泡となって消えてゆく。山口が嬉しそうにほほえんでいる顔が見えた。最後に見た山口の顔が笑顔でよかった。意識が飛んでいく。最後に残ったのは山口の手を握っている感覚だけであった。
その手はあたたかかった。
泡となって消えていく
落ちていく
深く深く海の底へ
────君の手に溶けてゆく
……end
あとがき
ただありがとうございました。それだけです。この作品を書いていて下手だなと思いつつも楽しいなと思えました。本当に皆さんのおかげです。決して多くはないけれどめちゃめちゃ短い物語だったけどだけどありがとうございました。
それではまた次のストーリーで会いましょう
コメント
4件
困惑すると思いますが、ぽんづの新アカです。1番最初の投稿見てくれれば分かると思います。パクリ垢ではありません。フォロワーさん全員こっちにも来てくれないかな…… ていうか、この作品もっと伸びてもいいんじゃない?!自信作なんだが?!
もう本気で天才じゃないですか、、、、? 小説でここまで凄いのほんっと尊敬です、、、!