こんにちは人類です。
前回に引き続き沢山のいいねありがとうございます。
モブ子視点
アメリカくんは、やっぱり優しい。
誰にでも同じように笑って、困っている人がいたらすぐに助ける。
そんなところが、モブ子はずっと好きだった。
最初に惹かれたのは、入学式のとき。
新しいクラスのざわめきの中で、彼だけが自然に周りをまとめていた。
その明るさに、惹かれない人なんていない。
──少なくとも、モブ子はそう思っていた。
「ねぇ、日本ってさ、なんか暗くない?」
放課後、友達の一人が言う。
「アメリカくんと話してるとき以外、全然喋らないよね」
「ていうかアメリカくん、あの子のこと構いすぎじゃない?」
モブ子は笑って誤魔化した。
「優しいだけでしょ、アメリカくんは。そういう人だもん」
──そう言いながらも、胸の奥がざわつく。
昼休みのあの光景。
アメリカくんが日本の弁当を勝手に食べて笑っていたときの、あの自然すぎる距離感。
誰よりも明るい笑顔で、誰にも向けたことのないような視線を日本に向けていた。
あの瞬間、何かがずれた気がした。
「……ねぇ、アメリカくんって、あいつのことどう思ってるんだろ」
思わずつぶやいた自分の声に、モブ子自身が驚く。
友達が笑う。「えー? まさか恋愛とか?」
「そんなわけないじゃん」と笑い返しながら、
心の奥で、なぜかその言葉が引っかかった。
数日後。
文化祭の準備が始まり、教室は慌ただしい雰囲気に包まれていた。
アメリカくんは中心になってみんなを引っ張っていた。
モブ子もいつものようにその輪の中にいて、
笑い合うクラスメートの間でアメリカを目で追っていた。
だけど──
日本のの姿を見つけた瞬間、アメリカの笑顔の“温度”が変わったのを見逃さなかった。
それまでみんなに向けていた明るい笑顔が、
日本を見た途端、静かに落ち着いていく。
まるでそこだけ、世界が閉じているみたいに。
声のトーンも、柔らかく、低くなる。
“特別”を感じさせる空気。
「アメリカくん、これ運ぶの手伝って!」
モブ子が声をかけた。
けれどアメリカはあいつと話していて、振り向きもしない。
「……あ、ごめんモブ子、後で行く!」
それだけ。
その一言に、心がざらつく。
──あいつのどこがいいの。
どうして、私じゃなくて。
放課後、アメリカに話しかけようとしたけど、
日本と一緒に教室を出ていく後ろ姿を見た瞬間、足が止まった。
アメリカが少し前を歩いて、日本が少し後ろをついていく。
その背中が、妙に“親密”に見えた。
「……あんなの、気のせいだよね」
そう呟いた声は、自分でも聞こえないほど小さかった。
だが翌日、モブ子はある噂を耳にする。
──アメリカくんが日本の事を庇って、先生にモブ子のことを話したらしい。
笑って誤魔化そうとしたけど、手が震えていた。
「冗談でしょ?」
そう言いながらも、教室に入る足取りが重い。
アメリカはいつも通りの笑顔を浮かべていた。
でもその笑顔の奥に、どこか“無”のような冷たさがある。
彼が誰かを庇うためなら、どんなことでもする。
そんな確信が、モブ子の背筋を冷たくした。
──あの優しさは、誰にでも向けられるものじゃない。
アメリカの優しさの中にあるのは、選別された“愛”だ。
そして自分は、その外側に立たされてしまったのだ。
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