病院から帰った次の日
目を覚ますと、食欲がそそられるいい匂いがした
桃『ん、おはよ』
青「おはようござ…」
「…おはよ、」
ふとダイニングテーブルに視線を落とすと、そこには豪華に並べられた朝食
匂いの正体はこれか…!
青「おいしそう…!」
目を輝かせた僕を見て、桃くんは嬉しそうに微笑んだ
青「これ桃くんが作ったの!?」
桃『まぁ、笑』
青「すご!!一流シェフみたいだね!」
桃『一緒に食べよ』
照れ臭そうに笑いながら、僕を席へ誘導した
青「いただきますっ!!」
青(はむっ)
青「……」
桃『どう…?』
青「おいしい!!!!」
「すっごいおいしい!!てんさい!」
「特にこれとか…ふわふわでめちゃくちゃおいしいよ!!」
桃(…ニコ)
桃『ありがと』
そう言ったとき、
桃くんの手が伸びてきて
僕の髪を撫でた
桃『はは、こっちの方がふわふわ笑』
青「…//」
なんでだろう、覚えてないはずなのに
昨日知ったはずなのに
脈の音が速まって仕方がない
桃くんの暖かくて大きな手は、そのまま下に降りて、僕の頬を優しく撫でた
優しすぎて、くすぐったいくらいに
でもそれが心地よかった
速くなる鼓動を隠すため、「やめて」なんて嘘をついた
僕から手を離した桃くんは、
宝石でも見るような目で僕を見て
『好きだよ、青』
そう呟いた
窓から入ってくる眩しいくらいの暖かな日の光と
そよそよと髪にあたる風を感じながら
桃くんと唇を重ねた
昨日知ったばかりの人にこんなにどきどきするなんて
僕はどうかしている
うるさいくらいになる心臓の音が、風の音や時計の音をかき消していく
顔が熱くて、ほんとにどうにかなってしまいそう
桃くんのことはなんとも思ってない
好きでも、嫌いでもない
…はず
桃『青、今日でかけよっか』
朝食のお皿を片付けているとき、おでかけを誘われた
青「うん、どこいくの?」
二つ返事でOKして、行き先を聞く
桃『んー、、まぁ』
『とりあえず着いてきてよ』
青「わかった、」
昨日の夜、部屋は案内してもらったから大体わかる
それにしても、綺麗な家だなぁ
クローゼットから服を選んでいると、僕にピッタリのサイズの服が綺麗に並んでいる
本当に、ここに住んでたんだな
全く思い出せない
意識がなくなる前、どこに住んでいたのか
誰といて、何をしていたのかも全く。
もしかしたら、事故に遭う前の僕と、意識が戻った今の僕は別人なんじゃないか?
そんな馬鹿げた妄想をしてしまうまでに、覚えていないのだ
ずっと一緒にいた人が、急に記憶をなくしてしまうなんて、
桃くんはどんなに辛いんだろう
僕にはなにもわからない
桃さいど
愛している人が、記憶をなくした
俺と過ごした時間も、俺の存在も覚えていないみたいだ
昔から不器用で、話すのが苦手で
人を好きになったことなんてなかった
そんな俺が雄一好きになった青は、欠けてはいけない大切な存在なんだ
それなのに青はもう何も覚えていない
丸で、別人みたいだ
でも、青の仕草が、態度が、言葉が、
笑顔が
変わっても変わらない、青は青なんだと実感させる
これから、青と俺の思い出が詰まった場所に行って、記憶を思い出してもらう
そのために
今まで恥ずかしくて言えなかった言葉を
形にして全て青に伝えよう
愛せるうちに愛さないと。
いつ消えるかなんて、神にしかわからないんだから__
青さいど
青「わぁ…っ、きれい…!」
桃くんに連れてこられたのは、綺麗な浜辺
日光が波にあたり、ぴかぴかと反射して幻想的な景色を作り出している
桃『きれいだな、』
桃くんは、押し寄せる波を静かに見つめた
その横顔は儚く、海よりも綺麗で
いつか消えてしまうのではないか
なんて不安を煽られるほどだった
青「桃くん」
桃『ん、?』
青「僕、桃くんが何考えてるか、どんな人なのか全然わからない」
青「僕自身が誰なのか、どこにいるのかさえもわからないんだ」
桃『…うん』
青「でも、それでも僕」
青「桃くんのこと、大好き」
青「事故に遭う前の僕が、なんで桃くんと一緒にいたのか、少しだけわかった気がしたよ」
桃『っ…うん、』
桃くんは涙を堪えていた
きっと、僕の前で泣いたら僕が不安になっちゃうから。
青「ねぇ桃くん、僕桃くんのことたくさん知りたい」
青「僕と桃くんはさ、どう言う関係なの?」
桃『っ…恋人、』
『ずっとずっと、誰よりも青のこと大好きでたまらないんだ』
青「そっか」
海よりも星よりも綺麗な桃くんに
今度は僕からキスを落とした
なによりも優しい君の音がした
続く
やばい書く時に感情移入しすぎてちょっと泣いてる。どっちの気持ちになっても辛くて、切なくてまじむり(自画自賛)
コメント
3件
私も、気づきたら、泣いてたwガチ、泣けるんだが……? え、控えめに言って、大大大大大大大大大大大大大大大大大大大〜好き♡