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今回は翔さんの過去です。
注意 今回日本の地名が出てきたり財閥云々の話が出ますが、全て架空です。
これ有り得んやろ!
とかあっても目を瞑ってください。
なんでもおkな方はお楽しみくださいませ。
僕はミドリ。
翔さんの恋人だ。
投資をしていたりして莫大な財産があり、東京某所に邸宅を構えている。
今日は翔さんの家に泊まりに来ていて、晩酌に付き合っている、と言っても僕はまだ19歳でお酒は飲めない。
ただ翔さんのぽやぽやとほろ酔いしている所を温かい烏龍茶を飲みながら翔さんの話を半分聞き流しつつ適当に相槌を打っていた。
翔 ねぇミドリ君…
ミドリ はい、どうされました?
翔 僕ら付き合ってもう3ヶ月経ったでしょ?
そろそろ僕の過去を話そうかなって。
ミドリ えっ?!いいんですかっ?!
翔 そんな驚く?笑
ミドリ え、いや、そのぉ…翔さんって僕にとってはあまり素性が分からないので、変に追求しない方がいいかなって…
翔 そっか、ミドリ君なりに気を遣ってくれたんだ、ありがとうね。
そうして僕は翔さんの衝撃的な過去とその莫大な資金の出処について知る事になった。
翔 そうだなぁ…あの有名な柊家って知ってる?
ミドリ え?あ…名前だけは…
翔 僕そこの元・当主なの。
ミドリ えええええええええ?!?!?!
翔 もう、絶縁したけどね。
僕の過去は少し重い…
一人で抱えるのは辛かったし…
福島県某所、月が綺麗な夜。
11月14日の夜9時43分、僕は生まれた。
金融界隈の中でも権力を握っていた柊家の跡取り息子として。
僕は「坊ちゃん」や「次期当主様」…僕が当主を降りてから従兄弟が当主代行から当主に繰り上げでその座に座った。
そんな従兄弟からも物心ついた時には「お兄様」と呼ばれ続け、母親以外に名前で呼んでくれた人はいなかったと思う。
そんな母も15歳、僕が多感で当主になる前に交通事故と知らされて他界してしまった。
父親は身勝手な人間だった。
後述するが結論から言うと人間の風上にも置けないくらいお金と一族の血統主義に執着した人だった。
使用人(姉や) 坊ちゃんは器用ですね、なんでも出来て素晴らしい…
使用人2(兄や) 次期当主様は品行方正で投資や博打の才もある、将来は安泰ですね。
僕に付いていた使用人こと姉やと兄や。
母親と従兄弟の次に信頼を置いていた人で、母親と同じく事故と知らせれて他界してしまった。
僕は次期当主ということで持て囃され、1人の子供として見てもらえることもなかった。
予定通り当主の座に着き、持ち前とする金銭関係の才によって巨万の富を得た一族だったが先代である父親とその使用人達とはどうも反りが合わなかった。
そして20歳の時に母親と姉やと兄やの死の真相、5000万の手切れ金と共に絶縁された。
別に絶縁された事が悲しい訳ではなかった。
公認会計士の資格を持つ僕であれば就職も困らないだろうし…
でも僕は社会を知らなかった。
それ故に職についても多分お荷物になると感じて労働はしなかった。
自分がいかに鳥籠の中で洗脳じみた教育をされていたのかと。
まず自分の生活基盤を整えた。
それに箱入り息子だったとはいえ自分で生きる為の家事は一通りできる。
ある程度のお金は投資に使い、絶縁された時に渡された5000万円を1年で約9倍に増やすことに成功した。
その後も地道に金を増やし、何百億稼いだだろうか…
当主だった時代よりもお金が増えた。
自分のやりたかった世界一周旅行もしたし、何億かは支援金として寄付した。
気が付けばあっという間に2年が経っていてある日絶縁した家から手紙が届いた。
もうあの家には関わりたくなかったのに…
僕を縛るのに必死なのか…
元々柊 翔(ひいらぎ しょう)
を名乗っていたが絶縁したので母親の旧姓である山本を名乗って生活していた。
まぁ絶縁したというのに本家の元当主を呼び付けるのはよっぽどの理由があったのだろう。
久々にあの屋敷に戻った。
あの着物にもう一度袖を通す事など無いと思っていて、ある程度の価値はあるだろうと売る事を考えていた。
守衛 今更なんの用です?もう貴方は用無し…
それは当主様の直筆印…?!
翔 僕も用無しと言われたからそれまでの関係だと思ってたのに呼び付け食らったからきたんだけど。
栄翔 やめなさい、守衛がご無礼を…
お兄様を呼び付けをしたのは僕です。
翔 んーん、いいの。
少しいざこざもあったけど何とか本家の敷居を跨がせて貰えた。
翔 手紙を読んで来たけど…どうしたの?
栄翔(えいと)君?いや、当主様と呼ぶべきかな?
栄翔 お兄様…ご足労をかけて申し訳ございません…
翔 僕を呼ぶという事はよっぽどという事だよね?
栄翔 はい…実は先代が…
要するに、先代である父親が一族の資金約6000億円を博打に使ってしまったらしい。
こんな糞のような人間の血を自分が引いていると思うと反吐が出る。
翔 そう、だから僕を呼んだって事ね。
本来絶縁したらそういう手を借りられない掟になってるけど…
どうやってその掟を曲げたの?
栄翔 それなのですが…柊家のみで解決する事はもはや不可能、弁護士や分家を巻き込んで審議となった結果その掟は時代にそぐわない事も加味して撤廃となったんです。
もう頼れるのがお兄様しかおらず…
この様な結果になってしまい申し訳ございません…
翔 そんなに泣かないで?
凛とした顔が台無しになるよ?
まぁ、絶縁したと言えど君は弟だし僕も心の拠り所にしていたから、温情があるし…
栄翔 まさか…
翔 ん、そう、あの父親に復讐しないと僕の気が済まないの。
大人気ないけれどね…
投資の事とか…一族を立て直す為に僕も協力してあげる。
という訳で一族を立て直すべく僕は奔走させられる事になった。
栄翔君に投資のノウハウを教えつつ僕が金銭管理をした。
あっという間に4年が経った。
金銭面的な不安は消えて栄翔君のみで一族を運営して行くことが可能となった。
ひとつの悩みの種は解消されたが…僕にとってもうひとつの目的を果たさなければ。
あの父親に復讐をする。
翔 博打中毒のお父様らしいですね。
はっきり言って父親とその使用人の声を聞くだけでも耳が腐ってしまいそうだ。
丁半博打で決着を付けていく事となった。
博打のルールもディーラーも栄翔君が見届け人として付いている。
栄翔 柊家14代当主の名を持って命ずる、12代当主と13代当主はこの現金680億円の所有権を博打できめるべし。
ルールは単純明快な物が良い。
丁半、丁半博打で決する事とする。
当てる方ではなく振る方…
事前に掛け金を宣言し合い、賽を振り、その合計数が小さい方の勝利とする。
それらを繰り返し、金を用意出来なくなった方の負けとして決着する。
以上、ルールはこれのみ。
自ら賽の目を振り運命を決する。
全てを賭けた博打としてふさわしいだろう。
丁半博打、開始。
父親 もはや敵となったお前に情けをかけ心配など必要は無いだろうが…
金はあるのか?
こちらはお前から貰った金680億だ。
翔 ええ、800万…
現金として持ち出せる物は全て持ち出しましたよ、 さぁ、始めましょう?
僕はさっさと使用人共をなぎ倒し、父親と対面した。
賭けは順調に進んだ。
父親 私の妻にしてお前の母親…雪芽(ゆきめ)の事だ。
その感情は何と呼べば良かろうか?
愛情深くて優しく、頭脳明晰で美しい。
政略結婚させられた。
望んでいた男児だったが…雪芽に似たおまえが気に入らなかった。
どの歴代当主と比べても天稟の才があった。
翔 僕を追い詰める為に母のみらず姉や達までも毒殺したと?
それもそうですが…
一投一投素晴らしいですね、冷や汗ものだと言うのにむしろ僕を威圧するような視線…
揺るぎない勝利への確信と信念。
さすが、柊嫡流の血、と言うべきでしょうか?
僕はあえて追い詰められ父親を勝ったと思い込ませた。
そして僕の手元に出せる金は無くなった。
父親 博打は私の勝利だ、翔。
賭け代を払い、特例で跨ぐことを許された柊家の敷居を跨ぐことを改めて禁止とする。
翔 クス…
父親 このザマだ、流石に気が狂ったか?
翔 いいえ、お父様…貴方が思った以上のお馬鹿さんであったことが面白いのです。
僕は貴方の背中を見てきたのですよ?
賢く生きなさい…よくそう言いましたね?
流石はお父様…
イカサマもお見事でした。
父親 お前出来る事など今更無かろう?
何を企んでいる?
翔 絶対的意志の下にある信念…
その為にはどんな手を使うことも厭わない貴方はその指輪と賽に磁石を仕込みましたね?
父親 今更気付いた所で決着は決着だが。
翔 対して今の貴方はどうです?
勝ったと思い込みイカサマも暴かれた。
もはや賽の目を操る手は無い。
父親 だったら何だ?
決着はもう着いたと言っても良いだろう?
いい加減無駄な足掻きはしない方が身のためだぞ?
そうしてお兄様は手を叩いた。
部屋には大量に積まれた札束が運び込まれた。
そして通帳を目の前に出した。
翔 嘘の宣言はするな…という決まりは無かったでしょう?
僕の資金は800万ではなく250億。
ルールは覚えてますね?
「金を用意出来ない方の負け」
お父様は勝利などしていないというより…
博打は始まったばかり。
動揺する暇などありませんよ?
栄翔 何となくどういう事をするか分かっていたので…
あえて嘘の宣言はするなというルールは設けませんでした。
父親 仕組んでいたのか…?
栄翔 いいえ、僕はお兄様の策なんて知りませんでしたよ?それに250億の資金がある事さえも。
翔 さ、固まっていないで続けましょう?
何回か連続で僕に勝つだけ。
僕の目的は貴方の集中を削いで動揺を誘う事。
賢く生きてきた貴方ならきっと僕の策に勝てるはずですよ。
ねぇ?お父様…
栄翔 続けて欲しいのだが…勝負は付いていない、付くまで終わらないのだから。
父親 な…な、んで…
翔 ふふ、あは、あはははは……!!
貴方と同じ血が流れているなんて、母親を殺した事が、憎くて堪らない…
感謝すべきところは…
あなたのその狡猾な所と賢く生きよという教えですかね…?
それらを大切にしなければここまで貴方を絶望させる事なんて出来なかった!!
純粋な勝負を前にして細工を仕組んだのは良いとして…
勝負をする人間として貴方は甘い。
だからお父様は負けるし、僕は貴方を負かします。
僕は後にも先にもこの日しかこんなにも恐ろしいお兄様の1面を見ることは無かった。
雪芽さんの揺るぎない強さはありつつ、父親の血を引いた立派な柊家の人間。
翔 忘れていませんね?
僕だって絶縁したと言えど柊の血を引いた人間、柊家は何かしらの才に恵まれて産まれてくる…とはいえ僕がイカサマに気が付かなければ、貴方の教えが無ければ…
一生、お父様の傀儡だったでしょう。
おや…無駄話が過ぎましたね、それでは僕が手番を取らせていただきます。
イカサマを暴かれ集中を削がれた父親に対して絶対の覚悟を持ち集中を極めたお兄様はピンゾロを出した。
それこそお兄様の本領発揮、息を飲む程の執念、圧倒的洞察力と読心術。
そして、父親への憎悪と復讐心。
栄翔 ピンゾロ同士、引き分け。
金は動かない。
父親 そんな馬鹿な!!そんな偶然有り得ない!!翔はイカサマをしているっ!!
ほら見ろっ!
翔の賽に米粒が…!!
どこから調達したかは知らないが…そうして出目を操作した!!
先程の一投含め無効だ無効!!
翔 クスクス…そんなに取り乱して、はしたないですよ?
それに何を言っているのか分かりません…
賽に触ってからイカサマだと喚いてどうするのですか?
僕や貴方が付けたという証拠は?
栄翔 こればかりは13代当主の言う通りである、翔のイカサマだと証明できぬ以上ピンゾロは有効とする。
父親 あ……あぁ…
翔 楽しくなってきましね、お父様ァ…
少し思っただけなのです。
イカサマでリスク無く勝とうとした。
そんなのつまらない。
さァどうぞ?お父様、賽を振ってくださいな。
父親 (出せばいい…私が出してしまえば…)
父親は負けた。
そして掛け金は両者同額となった。
栄翔 さぁ、最後の一投。
勝者が930億800万を総取りする。
翔 ふふ、最後ですね…
資金は同等、イカサマももう出来ない…
真剣な1発勝負…
万難は排されましたね。
柊…ひいらぎの葉は触れると棘があり痛み、冬が季節で強い植物。
不屈の精神、逞しさを感じる。
柊家の当主は代々道は違えどあらゆる面に置いてその精神の強さを発揮してきた。
翔も例外に漏れずここぞという場面での集中力と勝負強さ、分析力に洞察力と言った精神的な強さを持って生まれてきた。
しかしそれに固執し縛り、扱いきれず捨てた 結果が今。
幼少の頃から翔は蛇に興味を示していた。
そして今、翔の姿はどうだろう?
蛇の如く狡猾で、貪欲に食らっていた別の蛇を蛇を喰らう蛇の様であった。
生まれながらに壊れていたのかもしれない。
柊の血で説明がつくものでもない。
まともじゃ社会を知らぬ者が放り出されたところですぐに立ち直る事なんて出来ないだろう。
栄翔 12代当主の資金は無くなった。
金を用意出来なくなった方の負けというルールに則り、丁半博打、13代当主の勝利にて決着とする。
その後は色々大変だった。
金銭的な手続きに、分家への謝罪行脚…
お兄様の助力によって何とか集結した。
栄翔 えっ?!そんな大金…貰って良いんですか?!
翔 ふふ、この500億円は栄翔君の物。
あの屑に渡していた金だって元はと言えば僕が増やして得た金だから。
復讐したかったのはあの男だけ。
君達に復讐心なんて全くないの。
絶縁した身だしそのお金は好きに使って?
またなにかあったら連絡してね。
そう言ってお兄様はまた何処かは行ってしまった。
その後立て続けに使用人や12代目当主が自室で亡くなっていたりと葬儀云々で大変だった。
しかしお兄様は、葬儀に顔を出しつつ全く寂しそうな顔をせず寧ろ微笑んでいた…
嘲り、ほくそ笑んでいたと言えば怒られてしまうと思ったから。
翔 ふぅ…というのが僕の過去だよ。
あの一件の後も従兄弟こと栄翔君とは定期的にご飯行ったりしてるよ〜
ミドリ ………
翔 あら?お〜いミドリくぅん?
ミドリ 翔さんの過去が壮絶すぎる…
翔 ふふ、僕は今を幸せに生きてるから、そんなに気に病まなくていいよ。
僕の愚痴と晩酌に付き合ってくれてありがとうね。
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