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side fjsw.
真昼の光が白く反射するカフェのテラス。
元貴はグラスの中の氷を指先で回し、
音を響かせた。
その隣で、僕はストローを
くわえたまま目を細める。
「……これ、普通のレモネードじゃないよね笑」
「セドラ。ちょっと甘くて、後味に苦味が残るやつ」
「へぇ……元貴、なんでそんな知ってるの…」
「涼ちゃんが好きそうだから」
不意に返ってきた言葉に、
僕は一瞬だけ手を止めた。
「……好きそうって、勝手に……笑」
「じゃあ、嫌い?」
「……嫌いじゃないけど」
ストローを動かすたび、
柑橘の香りがふわりと立ち上る。
元貴はその匂いと、氷越しに透ける
淡い黄色をじっと見つめた。
「似合ってるよ、その色」
「え?」
「服じゃなくて……涼ちゃんの雰囲気」
意味を測りかねたまま、
僕はカップをテーブルに置く。
太陽が白い光を降らせる中、
元貴の視線だけが妙に熱かった。
「……なんか、昼間っから落ち着かないね」
「俺は落ち着いてるよ」
「いや、そういう意味じゃなくて」
言葉を探す僕の手首を、元貴は自然に掴んだ。
皮膚に触れた瞬間、セドラの爽やかさとは
別の熱が伝わってくる。
「……苦味も甘さも、残ってほしい」
「飲み物の話?」
「さぁ……どっちだと思う?」
その問いと同時に、
元貴は僕の顎を軽く持ち上げた。
真昼の陽射しの下、影の中でそっと唇が触れる。
セドラの香りが二人の間で弾け、
甘さと微かな苦味が混ざっていく。
僕が目を閉じた瞬間、
氷の音がまた小さく鳴った。
「セドラ」 花言葉 contentment(満足)
2025_8/8.