テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「団長のとこ、戻ったんだね」
ぽつりと、そう言ったのは、
廃教会の廊下。誰もいない薄暗い場所で。
あなたがふと振り向くと、そこには、
笑ってるはずなのに、どこか寂しそうな目をしたシャルナークの姿があった。
「シャル……」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。
でもさ、あのとき君が消えて……
戻ってきたら、クロロとあんなふうになってて……」
ふっと視線を逸らす。
「なんかもう、笑うしかないよね。
だって、オレ……」
言いかけて、シャルは少し黙った。
「オレ、ほんとはさ、君のこと好きだったんだよ」
あなたの目が、見開かれる。
「気づいてなかったでしょ? そりゃそうだよ。
だってオレ、いつも“明るい仲間”やってたもん。
“クロロのサポート”ばっかしてさ。君が団長見てるとこ、見てるだけで」
「……シャル……」
「でも……ちょっとくらい、期待してたのかもね。
君が笑うたび、こっちを見てくれるんじゃないかって。
団長以外にも、“気づいてくれるんじゃないか”って」
息を吸って、笑う。
「バカだよなぁ、オレ。
君が選ぶのは、最初から団長って、わかってたのに」
けれどその笑顔は、
ずっと隠してきた涙が今にも零れそうな、限界ギリギリの笑顔だった。
「……でもね、今さら“オレを見て”なんて言う気はないよ。
だって君、ほんとにクロロのこと、大事に思ってるんだもん」
静かな沈黙のあと、
シャルはあなたの髪をそっと撫でた。
「だから、せめてさ──幸せになって。
団長に壊されるくらいなら、オレが代わりに壊されてもいいくらいに、
君のこと、好きだったからさ」
夜、廃教会の屋上
ひとりで空を見上げるシャルナーク。
イヤホン越しに流れるのは、君がくれた曲。
誰も知らない、ふたりだけの秘密のBGM。
「……あーあ、言っちゃった」
風に吹かれて、彼は目を閉じる。
「ほんとに、最期のチャンスだったのかな──
言っても、届かないってわかってたのにさ」
その目に浮かぶ涙は、
仲間としての笑顔を守り続けた代償。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!