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w「 痛…目腫れちゃったな…。 」
翌朝、寝ぼけ眼で向かった洗面所の鏡で己の姿を確認する。そしたら泣きすぎたようで目元が赤く腫れぼったくなっていた。
家を出るまでの間、氷で目を冷やしつつ気分が乗らないまま、仕事場ヘ向かう。
w「 お客様、今日はどんな髪型に…… 」
「 …なんか目元赤くないですか?大丈夫です? 」
w「 あ、あぁこれはちょっと昨日感動する映画見ちゃって…。 」
「 そうなんですね~。 」
今日もお客様の希望通りに髪を切ったり、染めたり、洗ったりする。
仕事をしているときだけは彼の話が出ない限り、彼を忘れられた。
w「 ふー…。 」
営業が終わり、更衣室で一息つく。
そういえば、中々に自身の住んでいる家と彼の家の距離が近かった。
w「 引越しも視野に入れないと…。 」
それから着替えて、店の戸締りや電気の最終チェックを行い、店を出る。
まっすぐ家に帰ろうとも思えなくて、少しぶらぶらしようと光が集まる方へ向かう。
w「 居酒屋…久しぶりに行くのも…… 」
「 あれ?もしかして滉斗? 」
w「 っえ…? 」
1「 やっぱ滉斗じゃね!?久しぶり~! 」
そうやって声を掛けてきたのは高校の頃、よくつるんでた奴らだった。
かひゅ、とか細く喉が鳴り、脈も早くなってくる。
1「 なんかすげーイケメンになってね?笑 」
2「 つか、めっちゃいい匂いする笑 」
1「 今のお前泣かせても良さそうだなぁ 」
w「 っ、ひ、人違いじゃッ… 」
2「 人違い?んーじゃあ人違いでもいいや。顔さえよけりゃ。 」
倫理観の無さすぎる発言に鳥肌が立つ。いやでもきっとコイツらが人違いじゃないと分かってるからこう言ってるんだ。
2「 あ、そういえばさ、お前が俺ら捨てて絡んでた大森?いるだろ? 」
w「 ッ… 」
1「 あぁ、大森な。今、すげー人気だよな。アイツのバンド。 つか、お前も居るんだと思ってたんだけど。 」
2「 だーいすきな幼馴染くんにバレたくなかったんだろ笑 」
1「 なるほどな笑 」
腰や首に手を回されて、ついに逃げ場を失う。触り方に悪意が含まれてるのが気持ち悪くて、胃液が上がってくる感覚がする。
あぁ、まっすぐ家へ帰ればよかった。こんな所、来るんじゃなかった。
1「 まぁもう言いたいこと分かるだろ? 」
2「 滉斗、ほら歩けよ。 」
w「 ッ…ひゅッ…ひゅ… 」
過呼吸になりながら、震える足に鞭を打って一歩ずつ何とか歩く。やっぱり俺はもう元貴の恋人なんてなれない。そんな資格ない。
m「 …おい、何してんの、 」
2「 は?って、大森? 」
1「 え、マジ? 」
w「 っ…も、もときッ…? 」
バチバチに髪やメイクを決めてる元貴に、あ、今オフじゃないんだとなんとなく思う。
元貴は俺の方に手を伸ばすと手首を掴んできた。
w「 ッ…!い゛ッ… 」
1「 ちょっとちょっと、俺らが先に滉斗と遊ぶ約束してんだけど。 」
m「 過呼吸になりかけてんのに?どう遊ぶつもりか言ってみろよ。 」
2「 …じゃあ滉斗返すからさ、金ちょうだい?稼いでんでしょ? 」
m「 え、普通にやだけど。若井、行くよ。 」
元貴の力が強くて、怒ってるってわかった。このままだと 手首に痣が出来そう。
まだ怖いけど、今は元貴と逃げるために震える足を無理やり動かす。
2「 あっ!おい、待てよッ!! 」
1「 クソッ、やられた…! 」
前を走る元貴の背中を見て、目頭が熱くなってくる。俺はずるい。元貴から逃げてるくせにこういう時だけ頼るなんて。
m「 マネージャー!早く車出して! 」
mn「 は?え、ちょ、どういう… 」
m「 早く! 」
近くの駐車場に停まっていた車の窓を叩いて、運転席にいた人に発進させるよう元貴は言った。
マネージャーと呼ばれた人は俺を見て、怪訝な顔をしたが緊急事態なんだと察知してくれて車を出してくれた。
m「 はぁ…。 」
w「 ぁ…も、元貴…ごめん…。俺、すぐ降りるから…。 」
?「 えっと…もしかして噂の若井くん…? 」
w「 え、あ…元貴と同じグループの…。 」
r「 あ、知ってくれてるんだ! 僕は藤澤涼架。君のことは元貴から聞いてるよ。 」
藤澤さん…。初めて見た時、明るくて常に笑顔が絶えなくて、優しそうな人だって思った。
実物もそんな感じで、元貴とこの人が組んでよかったって安心した。
m「 …若井。 」
w「 ッ… 」
m「 さっきの奴ら、高校の頃若井が絡んでた奴らでしょ。 」
w「 ちが、 」
m「 本当のこと言って。何を隠してんの、俺から逃げる理由ってアイツらに関係してる? 」
r「 まぁまぁ元貴。そんな怖い顔で詰めても、若井くんが怖がるだけだよ。 」
藤澤さんに言われて、元貴はまたため息をつくと、今まで力強く握られていた手首から手が離れて、今度は手を両手で優しく握られた。
m「 若井。…分かった、一旦付き合ってるとかどうとかの話は無しで聞くから。 」
w「 ッうん…。 」
m「 …幼馴染として俺はお前に何があったのか知りたい。お願いだから、頼ってよ。 」
言ってもいいの…?引かれない?嫌われない?気持ち悪いって突き放されない?
m「 滉斗、おしえて。 」
w「 ……俺__ 」