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俺たちは今、帰りの新幹線のぞみ (博多駅行き) の車内にいた。
隣に座るキロが【るるぶ京都】を見直しながら嬉しそうに話しかけてくる。
「ゲン様、竹林の小径っていいですね。次回は嵐山方面にも行ってみましょう。あっ、東山方面も行ってみたいところが沢山あります!」
そんなキロの話を俺はうんうん頷きながら聞いてあげていた。
こんなにはしゃいでるキロも珍しい。
旅行好きであるキロは今回の京都もそうとう楽しかったみたいだな。
そのうち、また連れてきてあげよう。
あれから俺はシロとヤカンを連れて稲荷山を下山。
麓にある土産物屋をまわり、福岡で待ってるみんなにお土産をいろいろと買い込んだ。
「今日はありがとう。リンクを組んだらすぐ来れるようになるからちょっと待っててくれよな」
ヤカンに別れを告げた俺はひとり京都駅に戻ってきた。
電車やバスが嫌いなシロはヤカンと共にお山に残っている。
家に帰ったら召喚すればいいのだから特に問題はない。
シロが背負っているマジックバッグには牛丼弁当をはじめ、干し肉・饅頭・犬ガムなどいろいろ詰め込んで持たせてある。なので今ごろはヤカンと一緒に楽しんでいることだろう。
……ふぅ。
これで京都の方もそこまで大事にはならないとおもう。
まあ、古い建物が多いぶん、そちらの被害は大きそうだけれど。
あとは東京のヤツ (ダンジョン) だけなんだよね。
これについてはイナリが妙なことを言っていたのだ。(イナリは京都伏見にあるダンジョンです)
『まだ子供』、『未成熟』、『危険かも』などだ。いったいどういうことなんだろう?
ダンジョンにも大人や子供なんてあるのか?
たとえそうだとしても、それがどう危険になるんだ?
イナリは『言葉足らず』だから、会話していてもなかなか要領を得ないのだが……。
これは帰ってからカンゾーに相談するとしよう。(カンゾーは福岡にあるダンジョンです)
だけど朗報もあった。
こちらのイナリとカンゾーとの間に地脈リンクが張れるようなのだ。
リンクが組めればダンジョン同士よる情報交換の他、ダンジョン間での転移が可能となるのだ。
そう、一瞬のうちに京都まで行けるようになるのだ。
これで京都見物し放題だな。
ただ、覚醒準備中であるイナリは動きが大きく制限されているため、こち
らから地脈を構築することは難しいそうだ。
なので地脈リンクの方は福岡に戻ってからカンゾーに頼んでみることにする。
新幹線は関門トンネルを抜け九州へとはいった。
ここまで来れば終点の博多駅まではあと僅か、なんだかホッとしっている自分がいる。
フフフッ、もうこちらの人間ではないというのにな……。
小倉駅を出てから10分ちょっと、窓の外が賑やかになってきた。
まもなく博多駅に到着である。
ようやくカンゾーの勢力圏内に入ったようなので、さっそく念話を送りイナリとリンクを組むように指示をだした。
[あちらのダンジョンは既に認識してるでござる。これから処理をおこないますれば地脈も明日の午後には繋がるでござる]
カンゾーより返信がきた。やっぱり声がハットリくんだよぉ。(笑)
でも、これは俺サイドの問題。
つまり脳内変換によるものなんだよね。にんともかんとも。
新幹線を降りた俺たちは前回同様カンゾーに送ってもらい老松神社に帰ってきた。
みんなに掛けていた光学迷彩を解除、玄関の引き戸を開けた。
おおぉ……、これはカレーの匂いだ!
ググゥ~~~!
隣にいる健太郎 (けんたろう) からである。
朝あれだけ食っといて、よくカレーに反応できるものだ。
「「「「ただいま~」」」」
とりあえず、みんな家に上がって居間にあつまる。
「おかえり~」
「慶子さんもおかえりなさい」
カチャカチャ音がしていた台所からメアリーと紗月 (さつき) が顔をだした。
「紗月ちゃんただいまー。食事の支度ひとりで大変だったでしょう?」
「いいえ、みんなが手伝ってくれましたから」
「あら帰ったのね。私たちも今からだから、みんなで食べるわよ」
ミトンをはめたマリアベルが大きな寸胴鍋を抱えている。
「重たそうだな俺が持つよ。マリアはそこに新聞紙を重ねて敷いてくれ」
「ありがとう。京都の話はゆっくり聞かせてよね」
紗月がカレー皿にご飯をよそうと、隣りでは大きなオタマを持ったメアリーが次々とカレーをかけていく。
それをキロが受け取りテーブルに並べていくのだが……、
キロ? いつメイド服に着替えた? さっきまで俺の後ろにいたよね。
「さあ、まずはたべてたべてー」
「そうだね、じゃあ早速いただくとしようか」
紗月の声に旅行カバンを下ろした茂 (しげる) さんが答える。
「「「「いただきま―――す!」」」」
言うやいなや健太郎はもう ”おかわり” を要求している。――オイオイ。
カレーは飲み物じゃねーから。まったくお前は『まいうー石塚』かよ!?
しかし、ここに帰ってくるとホッとするなぁ。
ああ、そうか……、ここが俺たちの【帰る家】になったんだよな。
カレーを食べて一段落ついたので、シロを呼び戻すことにした。
右手の人差し指と中指を額にあて、
「シロおいでー!」
おっ……、おおお、なんだ~!?
シロが帰ってきたのはいいが、その口にはなんとヤカンを銜えているのだ。
「…………」
そっか~、連れてきちゃったかぁ。
シロは得意げにブンブン尻尾を振っている。ヤカンはここが何処だか分からずキョロキョロしている。
「キャー白狐様! お稲荷さんだー。うちの神社にお稲荷さん来たー!」
久しぶりに紗月が大はしゃぎ。ヤカンはもみくちゃにされている。
「ほほう、これは見事な白狐様だね。稲荷山から見えられたのかい?」
「はい、そいつはヤカンといいます。千年もの間、稲荷山を守ってきたそうです」
俺はシロの頭を撫でながら茂さんの問いにそう答える。
「そうなんだね、千年とはまた凄いね。うちにはお稲荷様の社 (やしろ) はないけど大丈夫だったかい」
「はい、それは無くても問題ないでしょうが……。では女神さまの祠の側に建てることにしましょうか」
「ああ、あそこの方がいいかもね……。あの場所はなんと言ったらいいのか神力が強いよね。居るだけで肌がピリピリするんだ。昔、明治神宮にいった時もあんな感じだったよ」
茂さんはニッコリ笑って頷いている。
そして、ようやく紗月に解放されたヤカンはみんなに挨拶をしていた。
「わたくしは京の都は、稲荷山から参りましたヤカンと申します。若輩者でございますれば…………」
しゃべれることを知った紗月が、またヤカンに飛び付こうとしていたのでそれをとめ、
ここがどのような場所なのかヤカンに説明していった。
「そうなのですか。主 (ぬし) 様はいつもこちらにいらっしゃるのですね」
「わたくしは主様のお傍に置いて頂いても良いのでしょうか?」
「ああ、もちろんいいに決まっている。お前が言っていた安陪の何某にも昨日しっかりと宣言してきたからな」
するとヤカンは嬉しそうに大きな尻尾を左右に揺らしていた。
ぺしぺし! ぺしぺし!
う~ん、もう朝なのか?
「シロもヤカンもおはよう!」
いつもの朝、いつもの散歩、更にはおなじみ牛丼あつめ。
家に戻り朝食をとったあとは、シロとヤカンを連れ女神さまの祠がある場所へ転移した。
まずは女神さまの祠に手を合わせお参りする。
――おや?
外にいるので分かりづらいけど、いまヤカンが光ってたよな。
急いでヤカンを鑑定してみた。
ヤカン Lv.2
年齢 ー
【契約者】 ゲン・ツーハイム
HP 112⁄112
MP 240⁄244
筋力 70
防御 62
魔防 116
敏捷 108
器用 42
知力 63
【特殊スキル】 状態異常耐性 感覚共有(小)
【スキル】 鑑定(4) 魔法適性(全) 魔力操作(7)
【魔法】 聖魔法(3) 炎魔法(4) 氷魔法(4)水魔法(2) 結界魔法(4) 身体強化(2)
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
ほうほう、ヤカンは俺の従魔となっていたか。
ステータスはなかなかのものだぞ。
魔法も結構使えるみたいだな。
炎魔法とは珍しい。あの狐火もその一種なんだろうか。
レベルこそ低いが、さすがは千年を生きてきた白狐というところかな。
女神さまの加護も授かっているし、強くなりそうだ。
これは一緒にダンジョンに入るのが楽しみだよな。
さて、まずは掃除からだな。
俺がインベントリーから箒と塵取りを出していると、
シロもお手伝いと言わんばかりに、風魔法を駆使して枯れ葉を集めてくれる。
すると今度はヤカンが、その集められた枯れ葉を結界に封じ込め、炎で一気に灰にしていく。
へぇ~、あんな使い方もあるんだ。
まぁ確かに、外で炎を使うとお山が火事になるかもしれないからね。
その辺りもしっかり考えているのだから、ヤカンは本当に賢いよな。
さーてと、そんなヤカンに立派な祠を建ててあげましょうかね。
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いつも応援いただきましてありがとうございます。
これからも少しペースは落ちますが、なんとか完結まで頑張りたいと思います。
マネキネコ φ(ΦωΦ )