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俺とシロ

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俺とシロ

169 - 第二章、59話 近況報告

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2024年04月04日

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広場の掃除も終ったので、さっそく野干 (ヤカン) の祠作りにとりかかるとしよう。


ここの広さは50坪ほど。


公園のような丸い広場になっており、その中央にはモニュメントのように女神さまを祀った岩の祠がドドーンと建っている。


そこの一角を借りてヤカンのお家を建てることにした。


どんな形にするかは既に頭に入っている。


俺もだてに稲荷山を巡ってきたわけではない。


実際にいろんな社や祠を見てきたのでイメージづくりもバッチリだ。


あっ、そうそう。


構想やイメージに関しては俺がするけど、あとの資材調達や設計施工はハットリ工務店 (ダンジョン・カンゾー) に一任してるから。


それとイメージの補完についてはイナリ (京都ダンジョン) にサポートをお願いしている。


ということで、ちゃちゃっと作っていきましょうかね。(ほぼ丸投げである)


まずメインの祠からだね。


御影石を使い高さ1mの台座を作る。


その上に同じ御影石で制作した高さ80㎝の石祠 (せきし) を設置した。(本体完成)


さらに狛狐用として、高さ80㎝の台座を2つ作り祠の手前に設置。


その台座の上には、伏見稲荷大社の楼門を守ってらっしゃる狛狐さん達に登場してもらいました。


サイズはかなり小さくなったけど、左が宝鍵を銜えた狐さん、右が宝珠を銜えた狐さんである。


鍵と玉だから、


『か~ぎや~!』『た~まや~!』なんて叫びたくなっちゃうよね。(花火の掛け声)


――そしてお稲荷さんといったらコレ!


朱に塗られた鳥居だよね。


あの千本鳥居に負けないぐらい沢山並べたかったんだけれど。


場所の都合もあって、続けて三基ということになった。


それでもって一番手前の鳥居には、


梁の真ん中に神額を設け、金文字で【野干】と縦字に表記した。


うん、ヤカンはお山の守護神だったからこれでいい。


そして中に納めおく御神体であるが、俺が昨晩のうちに夜なべして作っておいたのだ。


ヤカンをデフォルメした20cm程のフィギュア。


この御神体を石祠の胴部へと据えおいた。


――これにて完成である。


俺はヤカンを抱っこして石祠の中を見せてあげた。


「どうだヤカン、上手く出来てるだろう?」


「は、はい……」


ヤカンの体は小刻みに震えており、振り返って俺を見ている。


俺がニッコリ微笑んでやると、


恥ずかしかったのか、ヤカンは自分の頭を俺の胸に何度も擦りつけていた。


そうかそうか、嬉しいか!


「おまえの帰る場所はここだ。これからはずっと一緒に居られるな」


「はい、わたくしもゲン様のために精一杯がんばっていく所存です。これからも幾久しくよろしくお願いいたします」


俺たちが神社に戻ってくると慶子 (けいこ) と紗月 (さつき) は居間でお茶をのんでいた。


二人の恰好からすると、どうやらこれからダンジョンに潜るようだ。


メアリーとマリアベルは揃って買い物に出かけている。


今日は近くのイヲンやユ○クロなどをまわって洋服を見てくるそうだ。


茂 (しげる) さんは例大祭の準備があるとかで、忙しげに動きまわっている。


今も社務所にて、どこぞの業者さんと打ち合わせをおこなっていた。






――例大祭――


神社の創立記念日的なものだそうな。


秋にやってるので『秋祭り』や『豊穣祭り』とも呼ばれているのだとか。


お祭りって聞くとなんかワクワクしてくるよね。みんな楽しみにしているのかな。


でも、やってる方は大変なんだろうね。


「俺も何かお手伝いしましょうか?」


そう申し出るも、準備や手配はもうほとんど終わっていて、あとは確認していくだけなんだとか。


それもそうだよね。


でなければ、ゆっくり京都旅行なんかできませんよね~。


シロとヤカンは神社の境内で遊ばせ、俺はひとり地下秘密基地へ下りた。


リビングに入った俺に、フウガより近況の報告がなされる。


まずは自衛隊の動きからだ。


ダンジョン前広場に沿うように大型のテントが3張展開されているそうだ。


人員23名。内訳としては自衛隊員が21名、その他の政府関係者が2名。


現在ダンジョンに突入している部隊は2チームあり、いずれも6名にて編成されている。


探索の進行状況については、現在2チーム共に2階層を攻略中とのことだ。


そこで気になる探索の様子なのだが、


得物の方は多用途銃剣を付けた89式自動小銃であり。その銃剣でスライムを突ついてまわっているそうだ。


今はスライム1体を倒すのにも結構な時間が掛かっているということ。


まあ、銃が通用しないということはその内わかってくるとは思うけど……。


たとえ銃で仕留めたとしても、距離があればレベルアップには繋がらない可能性もあるしな。


負傷者においては現在確認が取れているだけで3名、どれも軽傷のようだ。






それで、どのように負傷したかを聞いてみると。


一人は、手に持ったナイフでスライムをつついていたところ、腕に巻きつかれてしまったそうだ。


(さっそく初心者がスライムの洗礼を受けたわけだ)


巻きつかれたスライムの処置は簡単な生活魔法を使用するか、あるいは自身に身体強化を掛ければすぐに剥がせるのだけれど……。


水をかけたり塩をかけたりと、色々やっていたようだがどれも効果がなく。


核を壊し、ようやくスライムが消えた時には火傷のような症状なっていたそうだ。


あとの二人は、コボルトの石斧にやられたそうだ。


コボルトの攻撃をもらうとか、なかなか想像しがたいのだが……。


相手が1体の場合は問題ないようだが、それが2体、3体になると戦闘が長引いていき、たまに攻撃を受けてしまう者が出てくるそうだ。


攻撃が通りにくい武器で一般人が戦っているとなれば、そうなるんだろうな。


ゴブリンが出てくるのは4階層からか……。


まぁ装備も整えているだろうし、死ぬことはないと思いたいが。


う~ん、これでは自衛隊の皆さんは向うでいう駆け出しの冒険者以下ということになってしまう。


モンスターに対して有効な武器がない現状では仕方ないのかな。


――よし決めた!


ドロップ率を調整して【ダンジョン鉄】を出すようにしよう。


そして見落とすことがないようにサイコロみたいな形にしておこう。


(ダンジョン鉄は小指の先ほどの大きさです)


俺にできる事といえばこれぐらいかな。


【ダンジョン鉄】なんてタダみたいな物だから、無償で提供することも可能なんだけど、それはちょっと違うような気もするんだよね。


この世界のダンジョンがこれから次々と目覚めていくなかで、これ以上日本だけを贔屓するわけにはいかないだろうしね。


まあ、俺やシロが介入している時点で初期ボーナスあつかいだよな。


これからダンジョンと共に生きていかなければならないのはこちらの人間だからね。


そしてどこから情報が漏れたのか?


マスコミが1社、もう嗅ぎつけてきたようだ。


神社の近くに潜伏しているところを、上手く誘導することで自衛隊に発見させたといういことだ。


……なるほどね。


マスコミはこれからもどんどん増えていくだろうけど、今はその程度の対応でいいんじゃないかな。


増えたときは増えたときで考えていけばいいだろう。


あとは他の影たちも呼んで生八つ橋や稲荷せんべいなどの京都みやげを配っていった。






地下秘密基地を出た俺は再び神社の境内に顔をだした。


するとどこで遊んでいたのだろうか、シロとヤカンがすぐに俺の足元へ飛んできた。


その場でしゃがんで二匹の頭を撫でながら、


「今からダンジョンに入るぞ!」


そういって裏にある転移台座から俺たちはダンジョン・リビングへ飛んだ。


するとそこには、なんの変哲もない草原が広がっているだけ。(ダンジョン・リビングの初期状態)


ダンジョン・リビングとは、そのダンジョンの管理者に与えられたプライベート空間のことである。


ここでは管理者のイメージ次第で海・山・町・特殊な建物と、いかようにも空間を創造できてしまうのだ。


俺はヤカンの頭に手を置くと、


「ヤカン、お山を思いだせるか? なるべく詳しくだぞ」


するとヤカンからは稲荷山の様子が手にとるように伝わってくる。


俺はそのイメージのままダンジョン・リビングを構築していった。


ほうほう、これはまた……。


そこに出来あがったのは稲荷山。おそらくは千年前のお山の姿だ。


これが人の手が入る前のお山だったのだろう。これは遊びがいがありそうだな。


シロもお山を見て元気よく尻尾を振っている。(この山好きワンコめ)


「主様 (ぬしさま) 凄いです! お山です。嬉し過ぎます!」


ヤカンは横でぴょんぴょんキツネジャンプを繰り返している。


「よし、さっそく行ってみようか。ヤカン案内を頼めるか?」


「はい、お任せくださいませ!」


ヤカンは俺たちを先導して山道を軽やかに駆けてあがって行くのだった。


そしてさらには山のてっぺんに【岩の露天風呂】を作ったり、途中の辻には【茶屋】を設け、そこでだんごなどをこしらえてみんなでいただいたりと、その日は夕方になるまで遊び倒した。


雨降りの朝は、この山を散歩するのも楽しいかもしれないな。







9月12日 (土曜日)

次の満月は9月27日

ダンジョン覚醒まで54日

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