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エリスティナはクリスを愛していた。
溶け合って、一つになった今だからわかる。エリスティナはクリスを一身に愛していた。
親子じゃない、恋人でもない。ただ、世界で唯一の存在として、愛を注ぎ続けた。
ともすれば重すぎるほどの愛を、一身に受け止めてくれたクリスを守れたのは、エリスティナの本望だった。
クリスが生きていると知って、エリスティナの心が震える。大好きよ、大好き、あなたを愛しているわ。そう言って何度もクリスを撫でたくなる。
でも、そこにひとつだけ、違う愛が混ざってしまった。
エリナは、クーを愛してしまった。ああ、そう、そうなのだ。エリナはクーを好きになってしまった。
だってそうだ。きっかけは、シチューだったとして、クーはいつだってエリナに愛を注いでくれた。やさしくしてくれた。
エリナを気遣い、いつだってエリナのことを考えて……。
そんな人を、愛さずにおられるだろうか。
愛することに疑問を抱いて、愛されるわけがないと思い込んで、一人で殻に閉じこもっていたエリナ。
そんなエリナに、何度だってあたたかな手を伸ばしてくれたクー。
エリナはクーに、恋をしてしまった。
「エリスティナが先に、クリスを愛した。でも、そこにエリナが恋をつけ足したの。どちらも私だからわかるの。私は、クリス、あなたに、持てるすべての愛情を抱いている。……クリス、また泣いてるの?」
見上げたクリスの顔は涙にぬれていた。
エリナはふふ、と笑ってクリスの涙を指先でぬぐう。
「いつまでも、泣き虫ね、クリスは」
「そんな、そんなこと、ずるいです。エリー。僕は、ずっとあなたを好きで、あなたに愛情も恋もすべてささげてきて、この先はないと思っていたのに」
クリスが、エリナの顔中に雨のように口づけを降らせる。エリナは微笑みでそれを受けとめた。
「これ以上好きにさせるなんてずるいです」
クリスは、横抱きにしたまま、エリナの体をぎゅうと抱きしめた。
痛いくらいの抱擁は、今は心地いい。離さないで、もっともっと近くに行きたい。
そう思うから、エリナは目を閉じて、クリスの抱擁を受け入れた。
「私達、ずっと、遠回りしてきたわね」
「……そうですね」
互いにそう言って、エリナとクリスは見つめあった。
アーモンド形の美しい緑の目が、エリナの空色に映る。混ざり合った瞳の色は、クリスにはどう見えているのだろう。
エリナは目を閉じた。
感じるのは、かすかな吐息と、ためらい。
触れ合った胸の音が伝わって、うるさいくらいに拍動しているのがわかる。
エリナは、きゅ、とクリスの服を掴む。
それが合図だった。
触れ合った唇はやわらかく、あたたかい。
一筋の涙が唇に触れて、それが少しだけしょっぱかった。
唇が離れて、冷たい温度が触れる。
わずかな湿り気を残す唇に指先で触れて、エリナはほう、と息をした。
「エリー?」
「キスなんて、はじめてしたわ」
「え」
「前世でも、今世でも、唇同士のキスはしたことがないの。こんな感じなのね」
エリナは笑ってクリスを見上げた。が、クリスは顔を覆ってなにやら呻いている。
「勘弁してください……心臓がはじけ飛びそうだ……」
その顔は耳まで真っ赤で、それにエリナはまた笑った。
これでハッピーエンド、全部解決の大団円だ。
そう、思った。
コメント
1件
うわあ、ついにエリナとクリスが心から通じ合った回でしたね……「エリスティナが先に愛して、エリナが恋をつけ足した」って表現、すごく腑に落ちました。同じ存在でありながら違う形の愛情が重なる感覚、すごく共感できます。初めてのキスで照れるクリスがめちゃくちゃ可愛くて、思わず笑顔になりました。遠回りしてきたふたりがようやく結ばれて、こちらまで温かい気持ちに。この先も応援したいです!