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北斗は自分の言葉を信じられず、ワイワイ騒ぐ弟達を、また改めて彼女を紹介すると、バラ園から叩き出した
そして呆然とするアリスに朝食を食べさせ、新居を案内すると言った
アリスは北斗にブラジャーを渡され、熱く見つめられ真っ赤になりながらも、キチンと服を来て身なりを整えた
そして北斗に手を引かれ、薔薇の温室から出て来たアリスは辺りを見渡して度肝を抜かれた
「わぁ・・・・・・ 」
夕べは真っ暗な夜に到着し、ほぼ目隠しで北斗に抱かれて連れてこられたので、ここが牧場だと言うことをすっかり忘れてたのだ
今目の前に繰り広げられている景色はまるで、カントリー映画を見ているようだった
空は雲一つない快晴で、遥か遠くの方の入口には(Narimiya ranch成宮牧場)と彫刻されている御影石の看板と、大きな馬のブロンズ像が設置されている
アリスは思った、今まで祖父と観光で外国の色んな牧場を回ったがここの牧場はひときわ壮麗だった
雲一つないロシアンブルーの空を背景にして、堂々とそびえ立つ丸太で出来た、お城のような屋敷が目に飛び込んで来た
白い柵の向こうには、まるで一つの町ほどもある緑が豊かな放牧場で、美しい馬が楽しそうに走り回っている
優雅に放牧場を駆ける馬はここから見て少なくとも20頭はいる
屋敷の向こうには集合住宅のような、馬小屋が建ち並び、砂場に似た円形に白いペンキで塗られた柵で囲まれた区域は、仔馬がいて調教師から調教を受けていた
さらにここは、牧場には似つかわしくないほど、とても衛生的で近代的だった
格納庫のような車庫には車の他ブルトーザーや重機も置かれていて
放牧場以外の道は綺麗に舗装され、辺りは花が咲き乱れ。どこも手入れがされて、成宮ランチはとても大規模な牧場だった
「あれは母屋だ 弟達が住んでいる 」
北斗が指を差したのはお城のような丸太小屋だ。まるでペンションのように大きい
「・・・あれだけのお屋敷に・・・あなたと弟さん三人だけ? 」
「たしかに家族で住むには大きすぎるけど、毎年夏になったら地元の牧場主が集まって、数日ここで会議を開くし、近所に大勢の観光客が来る時には部屋を提供している」
北斗が少しためらいがちにアリスの手を取る
「ただ・・・今は・・その・・・雇っていた家事代行も事情があって来てなくてね 」
アリスは北斗の話も聞かずにはしゃいで言った
「こんなに素敵な場所が日本に!しかもこんな近くにあったなんて信じられないわ!すっごく素敵!まるで「赤毛のアン」の世界よ!北斗さん!」
アリスは腕を広げて空に向かって、その場にクルクル回った。はじけるような笑みが北斗の心を鷲掴みにする
まさに眩しい太陽そのものだった
北斗ははしゃぐアリスと交互に広がる景色を見つめた
いつもこの牧場の景色が自分を癒してくれる。数日遠くへ出張しても必ず帰りたくなる場所だ
北斗が長年金と労力を惜しまずで築き上げてきたこの場所を、アリスに褒められて素直に嬉しかった
同時に明を産み落として出て行った継母の顔が浮かんだ。あの女も都会から刺激を求めてここへやってきた
北斗は立ち止まって、景色を眺めているアリスを見つめた
いずれは彼女もここに飽きるだろうか・・・
「俺はあそこには住んでないんだ。すぐ裏の離れに一軒家があるだろ?あそこがこれからの俺たちの新居だよ、去年俺が完成させた」
北斗がアリスの後ろから指さす場所を見ると、母屋から連絡通路が伸びてオレンジの屋根の一軒家に繋がっていた
「まぁ!あのおうちあなたが建てたの?あなたの専門は何?牧場経営じゃないの?」
「牧場経営と金儲けかな?」
「大工仕事は?あのおうちは見事だわ 」
北斗が笑った
「それは専門とは言えないよ、ここらへんの連中はみんな自分達で家を建てるんだ、お互い協力しあってね、趣味が高じたものだ、近い将来弟達にもそれぞれ家を建てさせる 」
アリスも北斗をみて微笑んだ
「趣味がこうじるのはわかるわ、私にも似たようなものがあるからでも・・・それが家を建てるってことが凄いのよ」
北斗は突如目の前に舞い降りた、麗しい令嬢を呆然と見つめた・・・
片や履き古したジーンズに、擦り切れたスニーカーのカウボーイ。片や全身ブランドファッションに包まれた色白のプリンセス・・・
カウボーイと良家のプリンセス。なんとも不釣り合いなカップルだ
果たしてこれから二人の生活に何が待ち受けているんだろう・・・
悲劇にならないといいが・・・
北斗は彼女の美しさに酔いしれながらも、勢いで連れてきたが、どうかこの先の結婚生活が良いものになってほしいと願った