テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「えっ、気づいてなくて?」
私のことを指摘するぐらいだから、彼の方も自覚ぐらいはしているのだろうと考えていた。
でも、本当に彼は自分のそんな一面に気づいていなかったみたいで、
「そんなつもりは、別にない……」
とだけ言って、スッと視線を外した。
「自覚…なかったんだ…」
カイは、ストレートな言い方をわざとして、周りを遠ざけているようにも感じていたので、なんだか思っていた印象と違う気もした。
「自覚する必要が、あんのか…?」
コーヒーを一口含んで、彼が心もとなさそうにも訊いてきた。
「うん…必要があるっていうか……、」
はっきり言ってしまおうかとも思うも、やっぱりためらっていると、
「言いたいことがあるなら、言ってもらって構わない」
私をじっと見つめて告げると、カイはおもむろにタバコを取り出して、喫煙OKなスペースなことを確認するとふいっと口に咥えた。
「……メンバーのみんなも、あなたのフォローが大変とか言ってて……」
どう言うべきかを迷って、以前に聞いた話を持ち出すと、
「ああ…あいつらか…」
カイが、気だるげにタバコの煙をふーっと吐き出した。
「……あいつらとは、合わないから。いろんな意味で……」
わずかに目を伏せて、彼が一瞬かげった表情を見せた。
「……メンバーとは、ずっと一緒だったんじゃないの?」
何かあるようにも感じて、尋ねてみると、
「一緒じゃない……あいつらは、元は3人のメンバーだ…」
カイが意外なことを打ち明けて、
「俺は、1人でストリートで歌ってたのを、メンバーにスカウトされたんだ…」
キラのヴォーカルになったいきさつを、淡々と話した。
「そんな話、初めて聞いた……」
彼らには何度も取材をしているのに、メンバーの誰の口からも、そんなエピソードは聞いたことがなかった──。