テラーノベル
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「じゃあ、最初のメンバーとは違うから、合わないってことなの?」
彼のかげった表情が気になり、続けて尋ねてみたけれど、
「…もう、いいだろう。もう、しゃべりすぎた…」
カイはそう言い、口をつぐんでしまった。
「そっか…ごめんね…。つまらないことを訊いたりして……」
せっかく踏み込んだ話もできそうだったのになと思いつつ、ちょっと寂しいような気持ちで目の前のコーヒーカップを持ち上げた。──と、
「……つまらないとまでは、別に思ってないから…」
ボソリと、カイが一言を吐いた。
「えっ…?」とだけ聞き返して、ようやく気づいたことがあった。
「……。…ねぇ、カイ……あなたって本当は、すごく純粋な人なんじゃない?」
「純粋とか、知らねぇから……」
言い返した彼の顔が、にわかに赤らんだのを、私は見逃さなかった。
マイペースで人を寄せ付けないようにも感じていた彼は──、
もしかしたら、ただピュアで人付き合いがうまくないだけなのかもしれない……そう思って、つぶさに彼を見つめていると、
「人の顔、そうやってじろじろ見んのやめろよな」
そう呟いた耳までがみるみる赤く染まるのがわかって、そんなカイのことを初めてかわいいとも感じた……。
思いがけない内面が覗けたことで、彼への興味はよけいにつのったけれど、これ以上は話を引き出すことは、難しいようにも思えた。
「カイ…今日は、ありがとうね。あなたと話ができて、よかった…」
初めてこんな風に膝を突き合わせて話せたことがうれしくて、ふっと笑いかけると、
「そうかよ…」
と、カイはやっぱりちょっと素っ気ない口ぶりで応えて、けれどまた照れたように目を少しだけ泳がせた。
「あの…それで、よければSNSを交換してくれないかな?」
この機会をできれば次へ生かしたくて、彼との間になんとか繋がりを持っていたくて、そうお願いをしてみた。
「……そんなのは、ほとんど使ってないから」
めんどくさそうにも言うカイに、
「私も仕事用でも使ってるんで、迷惑とかはかけないから。……ただ交換してくれるだけでいいんで」
メンバーの誰も知らないと言っていた彼の連絡先をなんとか知れたらと、めげずにせがむと、「わかった…」と、彼は折れてくれて、渋々ながらも私に教えてくれた──。
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