テラーノベル
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小柳君は壁にくっ付くかの様に端まで寄って俺に背を向けた
「こ‥‥小柳君」
「‥‥‥‥‥‥」
「寝て‥‥ないよね?」
「‥‥‥‥寝た」
「寝た人はそんな事言わないでしょ」
「‥‥‥‥‥‥」
「それ、寝たふりでしょ?」
「俺‥‥寝ます」
「寝る前に‥‥聞いてもいい?」
「いや、もう眠いから」
「この流れで眠くなる?」
「‥‥‥‥‥‥」
だってこのまま寝かせられない
小柳君からもう一度聞くまでは‥‥
「ねぇ‥‥俺の事気になりましたか?」
「‥‥‥‥そんな事」
「もしかして近頃態度がおかしかったのは関係ありますか?」
「別におかしい事なんて‥‥」
「こっち向いてよ」
「‥‥いや」
「さっきの言葉って俺の事‥‥」
「言ってない!‥‥何も‥‥」
「また‥‥俺の事好きになってくれたんじゃないの?」
「そんな事ないっ!」
キッパリ言い放ったその言葉が胸に刺さった
「‥‥‥‥‥‥」
「あ‥‥そうじゃなくて‥‥」
俺が受け止めきれなかった言葉に無言でいると、小柳君が慌ててこちらを振り返った
そして俺の顔を見ると小柳君の顔色がみるみる青ざめていく
「ごめん‥‥あんな強く言うつもりじゃなくて」
「いいえ、大丈夫です。俺の方こそしつこく言ってすいませんでした」
すっかり敬語に戻ってしまった
それもこれも俺のせいだ
時間をかける事もせず、結果だけを焦って‥‥
一緒のベッドで眠れるだけでも進歩だったのに
俺は上体を起こし枕を手に取った
その手を力強く小柳君が掴んだ
「‥‥どこに行くの?」
「まだここで眠るのは早かったかも」
「じゃあ俺が行きますから」
「え、そんな‥‥やめて?そんな事しないでよ」
「俺‥‥明日家に帰ります」
「なんで⁈そんな急に‥‥もうしつこく聞かないから」
「そうじゃなくて‥‥俺ここにいたらまたあなたを傷付けるかもしれない」
「え‥‥?」
「‥‥俺何も思い出せないし‥‥今の気持ちだって‥‥どうしていいかわからない」
俺は恋人失格だ
好きな人にこんな顔させて‥‥
不安で頼れる人だって自分でわからないのに
ここで俺がしっかりしないといけないって言うのに!
「俺は傷付かないよ、もう。だから帰るなんて言わないで」
「でも‥‥俺はまたきっと知らないうちに傷つく様なことを言ってしまうかもしれない」
「小柳君が失った記憶の中できっと俺はもっと小柳君を傷付けてたんだと思う。だから今度は俺が小柳君を諦めない」
「でも‥‥俺は‥‥良くわからないけど星導が傷つくのは嫌なんだ」
記憶が無くても小柳君は小柳君のままだ
俺は思わずその体を抱きしめた
「うわっ!」
「こうしてるだけだから‥‥少しだけ」
「‥‥‥‥‥‥」
小柳君の身体から力が抜けていく
「また‥‥俺を好きになってよ 」
「‥‥‥‥‥‥」
「俺達まだまだ時間はいっぱいあるんだから」
「‥‥‥‥‥‥」
「好きにさせてみせるよ」
そう言うと小柳君が俺を見た
そして視線を泳がせる
「‥‥こうしているのは嫌じゃない」
一つだけわかった事がある
俺は何度記憶を無くしても
また君に恋をすると言う事
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コメント
2件
記憶が無くなってお互いの壁があるからなんか切ないっていうか2人らしいっていうか... 続き楽しみにしています!