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柘榴とAI

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くろぬかさん、第95話「懸念点」読みました! 今回もSecondの視点がしっかりしてて面白かったです。回復弾という装備の提案から、ゲームバランスやプレイヤーの心理、そして6keyや8への懸念へと話が広がっていく流れが自然で、世界観の奥行きを感じました。「楽をさせるとリアルを軽視する」というSecondの考え方と、運営側の「デメリットを付けて調整する」という立場の違いも興味深い。奥さんの二階からの叫びで締めるのも、彼の日常が見えて微笑ましかったです。
『secondの新しい装備は、回復薬を発射可能なサポート銃で問題ありませんか?』
「えぇ、それでお願いしたいですね。現実にはあり得ない装備な上に、ユーザーも間違いなく欲しがる装備でしょうし。遠距離からの治療、となるとリアルだったら笑ってしまう様な装備ですよ」
モニターに映った私の担当サポーターと話しながら、思わず笑い声を洩らしてしまった。
今回要求されたのは、“ユーザー側”が欲しいと渇望する様な物品を、賞金首が先行して使用する事。
普通ならこれまでに無い強い装備や、それこそ現実には存在しないSF装備なんてのが飛び出しそうだが。
そういう所は、運営側で上手い事需要と供給を含め、我々の要望に応えてくれるつもりなのだろう。
そして今回私が要求したのは、それこそゲームではそれなりに見かける“回復弾”を使用出来る銃。
このゲームにおいて、回復薬の役目とは基本的に応急処置……以下のモノと考えて良いのだろう。
戦場に立ったまま完治する事があり得ない以上、下手したら痛み止めだけ身体に叩き込んで戦い続け。
それが終わった後に、しっかりと治療を受ける。
または勝利してから、セーフティエリアに走るの二択と言って良い。
ゲームにしては珍しいと思ってしまったが、そもそも傷を負う事自体がタブーなのだ。
だが現実的と言えば、そうなのかもしれない。
その場で出来るのは雑な応急処置程度な物で、怪我をしたのなら病院へ行く。
ガンサバではホテルなどのセーフティエリアへ到着出来れば、それらの傷も時間経過と共に治っていくが。
人間の身体というのは、本来寝て休めば全回復とは行かないのだ。
なので、怪我をしたら病院へ行け、以上。
ある意味コレを、しっかりと意識させるゲームだと言えない事も無いのかもしれない。
とはいえそこまで要求してしまっては、プレイヤーが“面倒”に感じるからこそ、ある程度でセーフラインを引く。
実際この回復作業を面倒に感じるプレイヤーの声は、SNSなんかで私だって見かける事はあるが。
だからこそ皆、まずは“攻撃を受けない”工夫をし始めるし、攻める時も慎重になる。
システムアシストが極限まで少ないと言える環境だからこそ、攻撃面でも苦労する事が多い。
攻めも守りも慎重にならないと、間違いなく生き残れないゲーム。
キャラクターを作ってすぐに賞金首を狙い、稼げたのならそのまま使い続けようとするプレイヤーも居たそうだが。
所謂“リセマラ”、という行為に近いのだろうか?
しかしながら、運営側はコレを鼻で笑った程。
自らの身体的特徴にステータスを振る、という事は最初は普通よりも“動き辛い”。
そんな相手に対して、遅れを取る様な者が賞金首なるかと言われると……まぁ、あり得ないだろう。
更に言うのなら、リアルの自分の身体能力を手に入れた所で……素人が動ける限界などたかが知れているというもの。
これ等のバランスを掴みながらキャラクターを育て、いかに大胆かつ臆病に動けるかというのが……多分、この作品の趣旨。
なので今回私が要求したのは、言わば普通のプレイヤーにとっての“救済措置”にも近いアイテム。
件のラッキーパンチを狙うプレイヤーは知らないが、そうじゃない人達でもやはり“手間”に感じる個所は多いのも確か。
回復アイテムの使用が非常に手間なゲームだからこそ、他者から一瞬で回復出来る様な手段を作る。
実にファンタジーで、これまで以上に“雑な”攻め方をするプレイヤーだって増える事だろう。
しかしながら、これはゲームだ。
こういう物も無いと、“面白くない”と感じてしまう人だって出て来る可能性だってある。
誰しもが提供された作品に対し、深い理解を示してくれるかと言われれば……間違いなく、違うのだから。
『そういう所まで考えてもらって、こちらとしてはありがたい限りですよ。こういう武器も、やはり検討はされていたので』
「ハハハッ、そう言っていただけると此方としては嬉しいんですけどね。しかし大丈夫ですか? 私の要望を通せば、それこそガンサバで“楽な回復手段”が出来る事になってしまう。こうなって来ると、ゲームバランスとか色々……」
『それこそ、そっちは我々の仕事ですから。例えば凄い劇薬を使用しているから、連続の回復は出来ない~とか。一定時間の間に何回以上回復されたら、中毒効果で逆にダメージを~とか、色々デメリットを追加すれば良いんですよ。薬というのは、便利なだけの物ではありませんからね』
「何事も、デメリットが絶対に伴う。そういう意味合いでは、意識の中に置いておく為の教育になりますかね」
『流石は先生。実際今回の回復弾、または回復銃だって。プレイヤー達の精神的負担を減らす為でしょう?』
まぁ、そう言った面でも役に立てば……程度ではあるのだが。
これに対して大変になってしまうのは、間違いなく運営側。
簡単かつ実用的な回復手段など用意してしまうと、今度の運営方針やイベントなどをより緻密に考え直さないといけない可能性だって発生するだろう。
今までの環境なら通用する筈だったイベントが、このアイテムの有無によって難易度が大きく変わってしまう……など。
そういう面が出て来ると、一概に良い物とは言い切れない。
こういった物一つでも、メリットとデメリットは共存するという訳だ。
「実際の所、このゲームはなかなかプレイヤーの心に負担を強いる事が多いですからね。とはいえ、声を大する程ではない。人ぞれぞれ得意不得意があるのと同様、合う合わないは当然の様に発生しますから。誰でも簡単に、そして全力で楽しめる娯楽……なんて言っても、それこそ夢物語でしょうし」
『ですねぇ。お陰様でユーザー登録者数は右肩上がりですが、その分クレーム……というか、こういう所を直せ! というお声はたくさん頂いています。実際secondが要求した様な装備だって、ユーザーから多く求められていたのが本当の所です』
「まぁ、ですよねぇ……とはいえ、正直私はこういう装備が好きではないんですけどね。あれば当然楽にはなりますが、現実には存在しませんから。VRの経験で、リアルを軽視する人間というのは、思っている以上に多いモノです」
『それこそ、昔からですね。ゲームに限らず、ネットの知識で専門家の様に語る人はいっぱい居ます。そういう口だけの人達は、ガンサバイブオンラインでは通用しない。なんてレベルのゲームではありますが……まぁ~正直、私も回復に関しては“ゲームなんだからさぁ!?”って何回思ったのか分かりませんよ』
「アッハッハ、やはりそうなりますか。ある意味そこも、VRと現実を分ける境目と言えるかもしれませんね。現実に出来ない事だからこそ、ゲームではやりたい。気持ちは分かりますが、ソレがある事によって“勘違い”をし始める人達も居る。なかなかどうして、バランスというのは難しいですねぇ」
『本物の戦闘訓練用VRという訳ではありませんから、余計に“救済措置”は必要なんじゃないかって思っちゃいますけどねぇ。会社の方針として、結構本格派が多いのは確かです』
実際問題、そういう所もあのゲームは賛否両論と言ったところ。
ユーザー云々ではなく、外野からして見ても「精神に異常を来たすのでは!?」という声も多い。
だが今の時代、より現実に近い体験、普段とは違う刺激を求めるからこそ。
こういったハードなゲームが生れ続けているのも確かだ。
だからこそよりユーザー側での、“ゲームとリアルの分離”が必要になって来るというモノではあるのだが……ハッキリ言おう。
そんなもの今のフルダイブVRどころか、ひと昔前のTVゲームだって同じなのだ。
ゲームだからこそ楽しむ、リアルとは別物である。
この認識が出来ない人間は、そもそも“ファンタジー”という作られた世界に踏み込むべきではない。
とはいえそういう声を上げるのは、大体は本当に関係の無い外野だったりするのだが。
こういう世界もあるのだ、こういう世界を想像する人もいるのかと楽しむのが娯楽というもの。
コレをリアルとゴッチャにしてしまう人物では、そもそもどんな媒体であろうと問題になって来ると言うものだ。
まぁそちらは良いとして、問題なのはガンサバイブオンライン。
私から見てもあのゲームは……非常に、ハードだ。
というのも、普段から警戒する事が多過ぎる。
楽しむ為に、そういう世界で遊ぶのならまだ良い。
しかしながら“仕事”として、更には負けてはならないと使命感の様に思ってしま人が“賞金首”だった場合が……一番、問題なのだ。
人はゲームなら簡単にスパッと意識を切り離す事が出来るが、これが仕事となってくるとまた違った責任が伴う。
だからこそ私の様な人間も賞金首の一人として、メンバーの中へと混ぜられた訳だが。
「次のイベントなどは、もう決まっているのでしょうか?」
『あぁ~まだ、本当に検討中の段階なんですけどね? 一応いくつか候補というか、下準備は始まっています。皆さんの新武器のお披露目、コレに合わせてまた戦闘イベントは開催するつもりではいますよ』
やはりそうか、というか当たり前か。
我々の様な目立つ位置に居るメンバーが装備を変えるのなら、当然大々的に宣伝しないと広告効果が薄い。
そうなってくるとやはり、ガンサバでは戦闘こそが命となって来るのは分かり切っていた。
だからこそ。
「その時、もしもチーム戦やタッグ戦だった場合。私とシックスと組ませる事は可能ですか?」
『……何か、気になる事が?』
「いえ、そこまでという訳ではないのですが……少しだけ、話す機会がありましてね。今のところ問題無いと判断していますが、彼女もまた“のめり込む”タイプの様ですから。あぁいった人達は、追い詰められ過ぎると急に不調を来たすモノです。ですから早い段階で、私が近くで診断出来れば……と。それこそ、“両側”から」
『承知しました、先生。確かにシックスは以前のチーム戦からというもの……結構、雰囲気が変わりましたからね。運営側も、ちょっと心配しているんですよ。私の方から、次のイベント会議の時に発言しておきます』
「えぇ、よろしくお願いしますね」
そんな会話をしつつ、本日は仕事を終えるのであった。
妻の方も、今頃はまだ担当サポーターと話し合っている頃だろうが……あっちはまだ、暫く掛かる事だろうな。
彼女は私と違って、どこまでも“ゲーマー”として賞金首に参加しているのだから。
此方と関りがあるからこそ、ゲーム内でも私のサポートもしてもらっているが。
「いやはや、忙しいゲームもあったものだねぇ……」
などとぼやきつつ、妻の方の会議が終わるまでは一人で晩酌を始めるのであった。
シックスの名を持つ女の子、白川さん。
違和感が全然拭えなかったら、気軽にまたおいでとは言っておいたけど。
来ないと言う事は大丈夫だった、もしくは自らVRとの向き合い方を変えたと取って良いのだろうけど。
あぁいう子は、結構他の部分で心の闇を抱えていたりするからねぇ。
もう少し仲良くなったらそういう面も含めて、心理カウンセリングなんかもしていきたい所なんだけども……果たして、どうなる事やら。
実際VRゲームが異常に上手い人というのは、リアルの自分と分離“し過ぎて”考える癖が頭に染みついている傾向がある。
4cardの様に、現実での能力が優れているからVRでも凄い、なら納得だが。
そうじゃない人達で、しかもあんなゲームで。
“異常に上手い”というのは、その時点でちょっとした注意信号に思えてならないのだ。
これもまた、ほんの少し目に付いた程度で、この時点でどうこう言う事では無いのだけれど。
今のところ私が気になっているのは、6・7・8の三人。
ゲーム配信なども多くこなすsevenに関しては、正直微妙な所だが……以前にチームを組んだ際、octopus8とは一応個人的にも連絡を取れる環境になった。
本人からもっと話が聞き出せる状態にならないと何とも言えないが、彼女の場合はゲーム以外でのサポートが必要なタイプだと思われる。
主に私生活の改善と、社会適合の精神の面で。
なのでそちらはゆっくり、今後観察するとして……問題なのは、6key。
クリニックにも訪れた彼女は、なんというか。
「自分に自信が無さすぎる、というか……リアルの自分を否定する癖が付いている気がする。だからこそ、そもそもVRの世界では“自分”というモノが無い。これを自然と別物と割り切っているのなら良いが……一つ間違えた瞬間に全て崩壊する人だって、たまに居ますからねぇ……」
ボヤきつつ、一人でグラスを傾けるのであった。
ちなみに二階からは、「これくらい良いじゃん! 他のゲームなら全然出て来る装備じゃん!」みたいな叫び声が聞こえてくるのであった。
まぁだやってるのか、ウチの奥さんは。