風邪引いたり忙しかったりで、全然投稿できず申し訳ないです。
今回は見ようによっては💛→←💙で、💛→❤️です。💛さんが気の多い人に見えちゃうかも?
苦手な人はご注意ください。
一生消えないキズなんて、最高じゃん?
そう言ってとろけるように笑った若井に驚き、限界まで目を見開いてしまった。
随分と心を開いてくれたものだと思えば嬉しくて、だけど同時に軽々しくなんてことを言うんだろうと呆れて、何も思っていないから言えるんだよね、と寂しくなった。
なんの理由も意味も思惑もない、ただのノリのいい言葉。
若井は僕のことをなんとも思っていないから言えるんだという事実に、心臓が少しだけ痛みを訴えた。
若井と同居を始めて、最初こそなんとなく気まずいなっていうときもあった。仲が悪いわけではないけど本音を見せるほど親しくはない。単純に距離感を測りかねていた。
だけどつらいダンスレッスンやボディメイクに、毎日のように泣く僕を若井はやさしく慰めてくれたし、僕を気遣ってこっそりと泣く若井の優しさやあたたかさに触れ、僕は若井が大好きになった。
周囲に半ば強制的にやらされた同居生活だけれど、無理にでも共に過ごしたことが功を奏し、だんだんと打ち解けて、若井が心を開いてくれて、弱いところも見せてくれるようになった。
未来が見えない不安を話し合うことができる同志として。来るべき未来のために歩み続ける仲間として。
その変化は僕を認めてくれたようで嬉しかったけれど、いつしか僕の中には違う感情が芽生えていた。
メンバーというには深く、友人と呼ぶには生々しい、情欲を伴った感情。だって、劣情を抱いてしまうほどに、若井はカッコよくて可愛かったから。
元貴には認めて欲しくて必要とされたい。僕じゃなきゃダメなんだと縋ってくれるあの子を護りたいと思うし、その立ち位置を他人に奪われるのは我慢ならない。
もしも身体を求められたら明け渡せるくらいには傾倒している。今のところそうはなってないけど、時々熱っぽく見つめてくれているからもしかしたらそのうちあるかな、なんて思っている。浅ましくも、あって欲しいな、という願望かもしれない。
世間一般がどう評価するのかは置いておいて、僕なんかの何がいいのか分からないけど、求められたら応じられるほどには、なんにだって応じたいと思うほどには、僕は元貴が好きだった。
若井にも同じような感情を持っていたかと言われるとそんなことはなかったんだけれど、元々嫌いではないし可愛いなぁと思っていたし、砕けた素の表情を見せてくれるたび、もっと知りたいって思うようになった。この笑顔は僕しか知らないのかも、なんて薄汚れた独占欲さえ覚えていった。
当然、元貴の方が若井について詳しいし、いろんな表情を知っているなんてことは分かりきっているんだけど、束の間の優越感? みたいなものを覚えたのは確かだ。
だけど、せっかく懐いてくれたのにそんな素振りを見せたら気持ち悪がられるに決まっている。若井の中で僕への評価が少しでも好転したのなら、それを維持するべきだ。だから努めて冷静に、人柄の良い、優しい年長者ってのを頑張って演じた。ズボラで抜けているのは、断じて演技ではない。むしろ演技だったらどんなに良かっただろう。
その点を除けば、今のところはちゃんとできていると思う。
その証拠に若井との距離は縮まり、若井の方から触れてくれるようにもなった。作ってくれたご飯を、美味しい、ありがとうって微笑めば、照れくさそうに喜んでくれるようになった。少しずつそうやって、分かち合っていけたらいいと思っていた。僕が抱いた劣情なんて、若井は知らなくていいんだから。
――その距離感を失いたくないからこっちは探り探り接しているってのに……、なんなのこの男。
ピアスに触れてきたと思ったらヤキモチを焼いています、って顔するし、僕にあけて欲しいとか言うし、一生身体に残る傷をつけて欲しいとでも言うように最高じゃん、とか笑うし。
何気ない言動に振り回されてしまう。
うまく説明できない感情だけれど、もしこれに名前をつけるならばきっと恋慕だ。元貴に対して感じるのが愛ならば、僕は若井に恋をしている。その自覚があるから、どぎまぎさせられるのはいつも僕だけ。
でもそんなのは僕の都合で僕の勝手な感情でしかなく、仲間として認めてくれた彼を裏切るようなものだ。元貴への愛情だってそう、僕が勝手に思っているだけ。単純にメンバーとして好意を寄せてくれているだけで、十分だと満足するべきだ。人間の欲は留まることを知らないから。
だからそっと蓋をして、真面目な顔を作り直した。
若井の耳たぶにそっと触れ、さっきつけた黒い点を確認するために顔を寄せる。すると、吐息がくすぐったかったのか若井が身体を震わせる。
じっとしててよ、と睨みつけると、若井は慌てて真面目な表情を取り繕った。
……こわくなさそうでよかった、と心の中で呟く。
僕にあけて欲しいと言った真意は分からないけど、できればこわいと思ってほしくはなかった。恐怖として記憶してほしくなかった。
僕があけたという事実は永遠に消えず、若井が将来的に穴を塞いでしまったとしても傷痕として残ったそれは、僕がつけたものになる。その思い出に、一片たりとも恐怖なんて感情を残してほしくなかった。
それにしても、僕がつけた傷が死ぬまで若井の身体に残り続けることがたまらなく嬉しいなんて、本当どうしようもない。
そんな悦びを隠して若井の顔をチラリとみると、すごく優しい目をして僕を見ていた。唇が、こわくないよ、と動いて、頬に熱が溜まるのを感じた。
声に出ていたなんて、恥ずかしすぎる。全部口に出ていなかったのが、せめてもの救いだ。気をつけないと、せっかく手にしたものを失ってしまう。
「……じっとして、力抜いてて」
照れていることと湧いて出る激情を悟られないように真面目な顔を頑張って作って、右手で若井の頭を撫でた。子どもをあやすようになってしまったから怒るかなと思ったけど、ん、と頷いた若井が素直に脱力した。
若井の上に乗ったままではあけにくいから降りようとすると、若井の腕が僕の腰を掴む。しかも結構ガッツリと。若井の指の感触を服越しに感じるくらいに強く。
――え、なに?
「……若井? 離して? 降りたい」
「なんで?」
「なんでって……あけにくいもん。ズレちゃうかもじゃん」
「……涼ちゃん左利きだし右耳はいけるって!」
「いやいやそうもいかんでしょ」
なに言ってんだこいつ……。
「ねぇ、ちょっと」
「大丈夫だから! おねがいッ」
若井が何にこだわっているのかは分からないけど、確かにできないわけではない。
「……あとで文句言わないでよ?」
「もちろん」
譲る気はないと判断して、ピアッサーを持って深呼吸をする。耳たぶをそっと挟んで、黒い点に針の先端を当てる。体勢が不安定なせいでズレちゃわないか心配だけど、文句は言わないっていう言葉をしかたがないから信じる。
密着する若井の上半身は、泣きながらご飯を食べて鍛えているだけあって、僕よりも随分とガッチリとしていた。あんなにヒョロガリだったのにな。
うぅ……ときめいちゃう。
「……スリーカウントね」
「うん」
ときめきを押し殺したせいで声が震えた僕につられたのか、若井の声も震えていた。若井の場合は緊張かな?
ピアスの穴あけなんて大したことないはずだった。中高生が校則違反とわかっていながらこっそりとやるならまだしも、いい大人なんだからなんもやましいことはないはずなのに、何故か悪いことをしているような気がするのは何故だろうか。
無垢な少年を誑かしてる、悪い大人になった気分、やっぱ高校生の頃から知っているからかなぁ。
「……いくよ、……さん、に」
「あッ!」
「いっぁ、なっ、なに!?」
いち、という前に叫んだ若井の声にびっくりして、思わずピアッサーを落とす。勢いのままあけてしまわなくてよかったけど、一歩間違えばあけてしまっていた。
「おどかさないでよッ!……どうしたの? やっぱやめる?」
「ごめんやめないで! その、えっと、手、握って欲しい」
は? 手?
ぱちくりと瞬きをすると、拗ねたような表情になって、左手で僕の右手を握り締めた。いわゆる恋人繋ぎっていうやつで、若井の体温がじんわりと沁みていく。
嬉しいんだけど、これは流石にちょっと不安定すぎる。
「え、ちょ、ほんとやりにくいんだけど……」
ムッとした若井が、これならいいでしょ、と手を離して僕の背中に回す。そのまま身体を抱き寄せて、自分の上にぴったりとくっつけた。
とくとくと響く心音が、自分のものなのか若井のものなのか分からず、混ざってしまったような感覚に陥る。
「ゃ、ぇ、ほんき?」
「うん」
顔が近い。じわじわと頬が熱くなる。満足げな表情が意味が分からない。
「ひ、左は無理だよ……」
「わかってる」
「なんなの……」
ぼやく僕に、にこっと笑うだけの若井。なんなのこの歳下。つい最近まで僕のことちょっと嫌がってたくせに、なんなの……。
「今度こそあけるからねっ」
「はい。お願いします」
殊勝なのか横暴なのかどっちかにして欲しい。心臓がもたない。ほんっと意識していないやつはいいよね!
落としてしまったピアッサーを持ち直し、さっさとあけてしまおうと耳たぶにあてる。
針の位置を確認して、息がかかるくらい近くにある若井に目線を送る。
「いくよ」
「ん」
頷いたのを確認して、針が真っ直ぐになるように調整をする。ここで時間を取るとまた何があるかわからないから、
「さん、に、いち」
口早にカウントをして、指に力を入れた。バシュッと音がして、僕の下にある若井の身体が大きく跳ねて僕の背中にあった手に力が籠った。
ゆっくりとピアッサーを下にずらして、キャッチがちゃんとついてることを確認する。血が滲んでいるからティッシュを取るために身体を起こそうと力を入れるが、ぎゅっと抱き締められて叶わない。
思ったより痛かったのかな、後悔してるのかな……?
「……あいた?」
「あ、うん、ちょっと血が出ちゃってるから、ティッシュを」
だから離して、という意味を込めて肩を叩くけど、離してくれる気配がない。
「ねぇ、若井、血が」
「涼ちゃん」
「な、に」
ふっと力が抜けた隙に身体を起こすと、いつの間にか若井の手が僕の後頭部に回っていた。離れた身体を再び引き寄せられて、
「好きだよ」
そんな囁きが聞こえた瞬間、唇をやわらかな感触が塞いだ。
続。
私もピアスばちばちにあいてるけどピアッサー使ったことないんだよなぁ。
偶然にもりょつさんと同じ位置にもあいていて興奮した。
コメント
5件
ピアス開けてたんですね!?かっこよすぎます... 展開の作り方が上手すぎて尊敬します...!!体調お大事に😌
このお話もめちゃ好きです💙💛🥹 💛ちゃんの♥️くん、💙へのそれぞれの想い方の違いも凄いよく分かりました✨🥺