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心乃が_____まであと30日。
これは、心乃が_____までの30日間で、30個、宝物をあつめる物語。
心乃が幼かった時の夢。幼稚園の発表会。発表の内容は”将来の夢”だった。
心乃は大勢の前で、自身の夢を発表した。
「わたしのゆめは、おとなになることです」
その夢を聞いて、周囲の生徒たちは笑い、口々に言った。
「はたちになったらおとななんだよ」
「いつかなれるんだから、そんなのゆめじゃないよ」
と。心乃の両親は、発表会に来ていなかった。大人になりたいというのは、幼い心乃が純粋に願っていた夢だったので、心乃の心はひどく傷つけられた。いつの間にか、心乃の手は発表の原稿を強く握っていた。
目が覚めた。朝だった。心乃が、1日のなかで2番目に嫌いな時間帯。
「幼稚園の頃の夢か、、確かに、大人になりたいなんて変だよね」
花峰心乃 15歳。30日後に卒業をひかえる中学3年生。
「今日は学校、、、行こうかな」
友達をつくるのに抵抗のある心乃は、学校に行くことはあまりなく、3年生になってからは1週間分程度しか学校へ行っていない。
そんな心乃だが、卒業式だけはしっかり参加しようと思っていた。
「制服もYシャツも新品みたいだなあ、、」
型崩れのないスカート、真っ白なシャツ、毛玉の一切ない靴下を身に着け、ほとんど底の擦り減っていないローファーを履いて、玄関を出た。
心乃の通っている学校は都会の端のほうにあり、自宅近くの駅から2駅すぎたところにある全校生徒数が700人程度の都会のなかでは小規模な学校だった。学校には新校舎と旧校舎があり、旧校舎は廃れてところどころ硝子が割れ、虫が巣を作っており、荒れていていかにも心霊物件のような様相をしている。おまけに古いので天井が崩落する可能性があるので近づく生徒は”ほぼ”いない。
「たまには電車に乗るのもいいかも。」
人混みのなかで心乃はぼそっとごちる。
そのうち電車が学校近くの駅に停まり、定期券をかざして改札を出た。あまり学校に行かないので、ほとんど定期券を使わず、無駄にしていると以前から思っていたが、それでも心乃は定期券を半年ごとに買い、通学カバンに入れていた。
「うう、寒い、」
2月の半ばといえど、まだ寒さは消えておらず、冷たい風が心乃を包んで、すぐ去っていった。寒い中針葉樹の並木道を歩き、校門の前まで来た。
「ここまで来たはいいけど、やっぱり教室に行くのはやめておこうかな」
心乃は、旧校舎へ向かった。
旧校舎はところどころ硝子が割れているので風通しが良く寒いが、以前多目的室として使われていた部屋は風通しが悪く、ほかの部屋に比べると暖かいので、心乃は冬場はここをよく利用していた。だが、誰も使っていないので当然汚れているし、黴と埃の匂いがしていて、心乃は少し窓を空けた。
「ちょっとはマシになったかな」
心乃そう言った途端、風が強く部屋に吹き込み、カーテンが揺れ、錆びた蝶番が音を立てて棚が開いた。
「なんだろ、、これ」
棚の中に物の影があったので心乃が近づいて物を取ってみると、それは小指のサイズ使い込まれた鉛筆だった。
「前は勉強に鉛筆使ってたのかな?」
心乃は小学校の頃を思い出す。中学ではシャーペンしか使っていなかったので、懐かしく感じた。
「でも、汚そうだな、、」
そう思った一方
「新校舎が使われるようになって30年、、ずっと、ここにあったってことだよね。」
寂しかったのだろうか?と心乃は思った。
心乃は、制服のポケットに入れて、旧校舎を出て、そのまま自身のアパートへ帰った。
Episode1 寂しい鉛筆
コメント
3件
読み終えました。第1話「寂しい鉛筆」、とても繊細な空気感の話ですね。 冒頭の「大人になりたい」という夢を笑われた過去——あれが心乃の根っこにある傷だと一瞬で伝わってきて、胸がぎゅっとしました。で、そんな彼女が旧校舎の埃まみれの棚から見つけた一本の使い古した鉛筆。誰にも気づかれず30年もそこにあったものに「寂しかったんだろうな」と想像できる心の柔らかさが、もう、宝物そのものじゃないですか。 30日で30個の宝物を集めるという枠組み自体も、これからどう展開するのか楽しみです。丁寧な世界観と心理描写、続きが気になります。