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日差しが暑いと感じるようになった7月
梅雨も開けて夏が本格的に始まってきていた
そんなことを考えながらクーラーの効いたトレーナー室で涼みながらパソコンで資料まとめの仕事をしていた。最近エアグルーヴのレースが近いのとインタビュー会見が近いのも重なり仕事が山の様に溜まっている。
「今日も徹夜かなぁ はぁぁ…」
キーンコーン カーンコーン
「もう15時か…」
そろそろ学園の全授業が終わりトレーニングが始まる頃だが、エアグルーヴは生徒会の仕事あるのでいつも少し遅れてくる。なのでエアグルーヴのトレーニングを始めるのは大体16時位からだ。
「 少し休憩するか…」連日で仕事があったので少し疲労が溜まっていた。ソファに横になる。素材が革なのでひんやりしていて気持ちがいい。急に眠気が襲ってきた… 「仮眠でもとろう…」眠気に人は勝てない。重い瞼を閉じる…
夢を見た。誰かと歩く夢だ
夏なのにやけに涼しい風が吹いていた
隣にいるの誰かが話しかけてきた
隣にいるのは…
誰か分からない
でも見覚えがある。
一体誰なんだ?
でも心地が良い感じがする
あぁ
君か…
「….ナー」「…レーナー」
何か聞こえる… 俺を呼んでいるのか?
「うわ!」
あまりの声量に驚き思わず体が飛び上がる
見ると体操着姿のエアグルーヴがソファの前に立っていた。 まさか…
「時間は?!」時計は16時10分を指していた。
「今来たところだ」その言葉に安心した。
「そうか… 悪いな 先に行っていてくれ!俺も着替えてすぐに行く!」
「わかった 無理はするなよ」
そう言うとトレーナー室を後にした。
最近エアグルーヴは俺に対して少し気を使っているように見える。俺の仕事がここ最近忙しいのがバレてしまったか… バレないようにしてたんだかな
「急がなきゃ」急いで俺もジャーシに着替えた。
練習場に行く途中で仲良さそうに歩くサイレンススズカとスペシャルウィークを見かけた。トレーニングはもう終わったのだろうか…
「そう言えばエアグルーヴはサイレンススズカとも仲良いっけな…」
そんなことをいつも考えながら練習場までは向かう。最近気づいたことは実はタイキシャトルとも仲が良いということだ性格的には真反対の二人だが逆にそれが合間り仲が良いんだろう…
庭にチューリップが咲いているのが見えた。
「チューリップだ えっと…エアグルーヴが花言葉教えてくれたっけな… なんだっけ〜」
そう… 考えていることはいつも…
エアグルーヴ… 彼女の事ばかりを考えている。
疲れていても彼女の事が頭から離れない。
練習場につくとエアグルーヴはウォーミングアップをしている途中だった。邪魔しては悪いので終わるまで待っていた。後ろの方からエアグルーヴを応援する声が聞こえてくる。きっとエアグルーヴに憧れている後輩の子達だろう。ああ見えてとても面倒見がいいエアグルーヴは後輩からとても慕われている。もちろん後輩だけでは無く、生徒会の子達や同級生にも。人望が厚いのにも納得出来る。
「さて、体も温まって来た頃だろう。」
エアグルーヴを呼ぶ。彼女はこちらに気づき近づいてくる。
「身体は温まったか?」
「あぁ トレーニングならいつでもできる」
腰に手を当てて答えた。
「おっけい じゃあ今日はスピードトレーニングをしよた後に軽く計測しようか」
「了解した」
そろそろエアグルーヴもレースが近い。エアグルーヴからもやる気のある雰囲気が伝わってくる。
「よし! 気合い入れていくぞ!!」
熱血風に言ってみるが…
「いつも落ち着いて 全力でやるのが私のポリシーだ。あまりはしゃぎすぎるな。」
「はい」
これがいつもの感じだ。彼女はいつも冷静だ。
取り乱しているところなど見たことが無い。
トリプルティアラを獲得した時だって冷静だった。
いつもより表情が明るかったが、「やったー!」という感じではなかった。少し学生らしくないというか、
大人っぽいがすぎる感じというか…
なんと言えばいいか分からない。
そんなことをボーッと考えていると蝉の声が激しく木霊する音にハッとなり、不思議顔をしてこちらを見つめているエアグルーヴにトレーニング内容を説明し始めた。すると…
「おい 最近根詰め過ぎではないか?」
「え?」
「さっきだって疲れて眠っていたんだろう?
寝不足気味なのはそのクマを見れば明白だ。」
やはり気を使われていたようだ。
*「それに今も少しボーッとしていただろう?*」
「あはは… バレてたか…」
「私のレースが近いから気遣ってくれているのは有難い。しかしそれで貴様が倒れたら元も子もない。」
「仰る通りです…」
でも仕事はまだまだある… 嘘をつくか…
「そうだな 今日はトレーニングが終わったあとはすぐに眠ることにするよ。」
「しっかり食事をもとるように カップラーメンなどもってのほかだぞ? しっかり栄養を考えてたべるんだぞ?」
お母さんかな?…
「今日はもう終わりにしようか。しっかりストレッチしてから帰るんだぞ?それから…」
「分かっている!」
「あはは それじゃ」
トレーニングが終わり俺はまたトレーナ室に戻った。
山のようにある資料に目を通したあとそれをまとめ上げる。正直しっかりとした食事をとる時間などない
でもこれも全てエアグルーヴのため…
彼女には万全の状態かつ安心してレースに出て貰いたい。そのためなら体調など惜しくない。
だがさすがにもう限界がきている。
*それにエアグルーヴの言葉も無視できない*。
今の時刻は17時45分
この時間から始めれば大体23時には終わる
何とか徹夜は免れて睡眠時間を確保できる。
「頑張ろう」
気合いを入れ直し椅子に座りパソコンを起動させる。
そしてメッセージBOXを開いた瞬間俺の計画は全て崩れ落ちた。 たづなさんからの新しいお仕事依頼だ…
「…徹夜確定だな」
どれくらいたっただろうか
随分長いことパソコンと資料に目を使った。
時計を見ると20時を回っていた。
腹が減った。引き出しにあるカップラーメンを取りに行こうとすると…
「ガラガラッ」
扉が開く音がしたので振り返るとエアグルーヴがいた
「やっぱりか…」小さい声で聞こえた
「エアグルーヴ?! 今何時だと? まずいだろ…」
「許可は取ってある 心配するな」
「それならいいんだが… こんな時間にどうした? 何か忘れ物でもしたか?」
「いや これを届けに来た」
そういうと少し大きめの紙袋を渡された
「これは?」
「貴様のことだ どうせ仕事をしていると思ってな」
嘘はバレていたようだ。
「食事を作ってきた。」
まさの食事を作ってきてくれた。
「程々にな」
「それじゃあ」
「あぁ… お疲れ」
扉が閉まると俺はすぐに紙袋の中を確認した。
タッパーが二つもはいっていた
「これ食べていいのか…」
タッパーを2つ紙袋から出し蓋を開ける。
とてもいい匂いがした。
中身は栄養バランスも考えていそうなものばかりだ。
すごく美味そうだ
さっそく頂くことにした。
まともな食事を取るのは約1週間ぶりだった。
まだ温かかった 作ったばかりなのかな?
「いただきます」
箸で入っていた肉じゃがを一口食べる。その瞬間なぜだか分からないが涙が溢れてきた。
「美味い… 美味い…」
まともな食事を摂るがこんなにも嬉しいとは
まずい涙が止まらない。弁当に涙が落ちてしまうので一旦弁当を端に寄せた。
泣いたせいで一口目が喉を通るのに少し時間がかかった。その間旨みがずっと口の中に広がっていた
「後でお礼のメールを送ろう…」
涙を拭い。ようやっと一口目を喉に通した。
その後はどんどん箸が進み、ものの10分で完食してしまった。
「美味しかったなぁ…」
それと同時に思った
「また作ってくれないかなぁ…」
食事を摂ったおかげで元気がでてきた。仕事を再開しよう。っとその前にエアグルーヴにお礼のメールを送ろう
「よし!メールも送ったし 頑張るか!」
「既読がつかないな… 携帯見てないだけか…」
その後はお腹がいっぱいになって頭がしっかり働くようになったので仕事は何とか24時に終わらせることができた。
「終わった… 明日からは時間に余裕ができるな…今日はもう帰ろう…」
ふとさっき送ったメールに既読がついたか気になった
既読はついていなかった。
「さすがにもう寝たか」
明日の朝にでも見てくれればいいと思った。
そう思い俺は自分のアパートまでの帰路についた。
久しぶに自宅で寝た俺はぐっすり眠れた。
若干まだ疲れは残っているが大丈夫そうだ。
時刻は6:30だった。出勤までまだ時間がある
「コーヒー飲むか…」
コーヒーを作るのも久しぶりな気がした。
コーヒーを入れ、簡単な朝ごはんも作った、まさに完璧な朝だ! ふと思い出した。
「そういえばメールは…」
「返信きてるな」
返信を確認して時間を見ると7:30だった。
「そろそろ行くか」
スーツに着替え色々カバンに詰めて自宅を後にした。
学園に着くと自分のトレーナー室に向かった。今日も暑いなと思いながら歩いていると…
途中でシンボリルドルフに話しかけられた。
「おはよう エアグルーヴのトレーナーくん」
「あぁ おはよう シンボリルドルフさん」
そういえばシンボリルドルフと話すのは初めてだな
以外にも身長はそこまで高くないらしい大体160cmくらいだろうか。
「何か用事かな?」
「あぁ 君を呼ぶよう理事長先生に言われてね」
何か呼ばれるようなことをしただろうか…
まさか!
弁当か?…
エアグルーヴ許可…取ったんだよな?…
彼女を信じているが不安になってきた
冷や汗か夏の暑さのせいかわからない汗が出てきた。
「感謝ッ! 何とか期限内に資料を送ることができた!!」
どうやら理事長は仕事のお礼をしたかっただけの様だ
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「いえ 無事終わらせられてよかったです。」
「それでは自分はこれで」
そう言い理事長室を後にしようとすると…
「気持ッ! これを受け取ってくれ!」
受け取るとそれはバームクーヘンだった。
しかも結構高いバームクーヘンだ。
「すいません気を使わせてしまって」
「かまわん!ぜひ食べてくれ!」
そして俺は理事長を後にした。
たしか今日はエアグルーヴは生徒会の仕事がないから早めにトレーニングに来るはず…
今日は昨日のお礼も兼ねてこのバームクーヘンでお茶しながらインタビューの練習をすることにしよう。
午後の時間に少しワクワクしながら自分のトレーナー室に向かった。
キーンコーン カーンコーン
チャイムがなって10分程して体操着姿のエアグルーヴがやってきた。
「あぁ エアグルーヴお疲れ様」
「うむ」
「昨日はお弁当ありがとね!」
「かまわんといっただろう」
「でさ、お礼のも兼ねてなんだけど、今日のトレーニングはお茶しながらインタビュー練習にしようかと思って、良いバームクーヘンも貰ったし!」
「レース前なのに呑気な… でもまぁ、たまには…」
少し微笑みながら言われた。
「エアグルーヴも練習頑張ってたしご褒美さ!」
エアグルーヴはトレーニングの日以外にも自主練をしていようだし、誰にでも休憩は必要だ。
「体操着でも制服でもいいけど着替えてくる?」
「では制服に着替えてくる。少し待っていろ」
そう言うとエアグルーヴは部屋を後にした。
バームクーヘンを切っておこうと席を立って気づいた
「部屋が汚い…」
ものを食べるのに部屋が汚いと少し気分が悪くなる。
片付けは子供の頃から苦手だがしないとまずい。
「エアグルーヴが着替えてる間に片付けるか…」
片付けを始めて3分ほど経った。棚の上のダンボールに資料を入れようとしたら…
ガタンッ
「えっ?」
なんと自分目掛けてダンボールが降ってきた。
ドシャーーン!
ダンボールと共に俺は盛大に転んだ。
「いてて…」
どうやらかなり強めに腰打った。とても痛い。
痛がっていると扉が勢いよく開いた。
「どうした!」
着替え終わったエアグルーヴだった。
「片付けをしてて棚の上のダンボールに資料を入れようたしたらダンボールが降ってきて… 腰を打ったみたいだ… かなり強めに…」
エアグルーヴは少し大きめのため息をついた。
「はぁ… まったく 不注意な奴だ 立てるか?」
「すまないな…」
差し伸べてくれた手を取ろうとした瞬間だった。
「いっっっって!」
どうやら事は思いのほか重大な様だ。
痛すぎる。恐らくぎっくり腰という奴だろう。
痛すぎて涙が出るのはいつぶりだろうか…
「おい!無理をするな!」
エアグルーヴに支えられた。
「あぁ… 悪いな…」
男として情けない声で叫んでしまったことに後悔した
「ソファまで運んでやるから横になっていろ片付けは私がしておく。」
「そうか… すまないな… 迷惑かけて…」
「かまわん」
エアグルーヴに優しく言われた。
今の数分で何回謝っただろうか。ご褒美で色々やってやるつもりだったがこうなってはもうどうしようも出来ない。大人しく横になっていよう…
エアグルーヴに抱えられている時はなんとも言えない気持ちだった。ウマ娘とはすごいものだ 成人男性を軽々と持ち上げてしまうのだから。
「ほら 安静していろ」
「ありがとう…」
俺をソファに置くとエアグルーヴは片付けを始めた。
早い… めちゃくちゃ早い 片付けがどうやらエアグルーヴは上手いらしい。また新たな発見だ。
俺は片付けをしているエアグルーヴを黙って見ていた。横顔が綺麗だとか思ったりしながら…..
「これは洗濯していいのか?」
エアグルーヴに聞かれてやっと我に返った。
「あぁ 洗濯して大丈夫な奴だ。でも俺の家でするからいいよ」
「貴様… その腰でどうやって自宅まで帰るんだ?
「あ」
たしかに歩けそうにない。タクシーを呼ぶか…
「タクシーでも呼ぶさ」
「そうか… それで家で洗濯はどうするんだ?」
「腰が治ったらやるさ」
「私が洗濯する 貴様の家に案内しろ」
「えっ?!」
いくら教え子とはいえ学生を自宅に招くのはさすがにまずい。しかしエアグルーヴの親切を無下にするのも如何なものかと考えたが…
「ついでに食事も作ってやる。」
あの食事がもう一度食べられるだと?!
俺は立場よりエアグルーヴの食事を選んだ。
「いいのか?じゃあお願いしようかな」
「うむ」
エアグルーヴはまた片付けを始めた。
彼女がいたことない俺が最初に自宅に招く女性が自分の教え子になるとは… 何だか複雑な気持ちだった。
エアグルーヴが片付け終わると切っておいたバームクーヘンを食べてらった。
俺も食べたがコンビニ売っているものとあまり差は無いように思えたが、エアグルーヴが美味しそうに食べていたので何だか俺も美味く感じた。
しばらくしてからインタビューの練習もしてかなり時間が経った。
「17時半か… そろそろ帰ろうかな。」
「分かった 私も今日は外出許可を取ってくる。少し待っていてくれ。」
「分かった」
そう言うとエアグルーヴは部屋を出ていった。
「さぁ 俺もタクシーを呼ばなきゃ…」
俺は気づいた。
「俺今日… 部屋汚かった気がする」
エアグルーヴになんと言われるか…
しかも改めて自宅に女性を招くことを考えると緊張してきた。しかも相手は自分の教え子だ。
「あ…あまり意識しないようにしよう…」
多分だが無理だ…
カミングアウトしよう。恐らく俺はエアグルーヴに恋愛的感情を抱いてしまっている。
しかし相手は学生だ 万が一変なことをすれば俺は1発で警察のお世話になることになる。
「まぁとりあえずエアグルーヴに連絡しておくか」
18時に正門にタクシーを呼んだとと連絡をしておいた。
既読がすぐについたので大丈夫だろう。
俺はタクシーを呼んだあと日が落ちていくのを窓からぼんやりと眺めながら約束の時間がくるまで横になっていた。
エアグルーヴの支えもあり何とか正門まで行くことが出来た。
「もうすぐタクシーくるから」
「あぁ」
エアグルーヴも分かっているからだろうか、気を使ってかわかないがマスクをしてくれていた。
それに普段着だ。とても綺麗だ。
後、やけに荷物が多い気がするが気のせいだろうか…
そんなことを思っているとタクシーがきた。
タクシーでいくと自宅までだと約5分程だ。
エアグルーヴとタクシーに乗り込み自宅まで向かった
タクシーでの会話は一切なかった。
それは緊張もあったと思うが単に色々と怖かったからということもあると思う。
自宅につくとエアグルーヴに支えられながら玄関を開け自宅に入った。
俺は自宅に入って絶望した。
絶妙に汚い。
家なんて誰もこないから全く片付けをしていなかった。しかしエアグルーヴは心無しか嬉しそうだった。
「悪いなエアグルーヴ… 汚くて…」
「かまわん たが片付けさせてもらう。」
自分では片付けはできる気がしないのでお願いする事にした。
「じゃあお願いしようかな。」
「その間に貴様は風呂でも入れ 今日も暑かったから汗をかいただろう。」
「あぁ そうさせてもらうよ」
何だか色々緊張して流れにまかせて受け答えしていたが相手は学生だということを思い出すと変に緊張してしまう。
俺は痛い腰擦りながら風呂場へと向かった。
「あ!エアグルーヴ!」
俺は思い出したことがありエアグルーヴを呼んだ
「何だ?」
「寝室には何があっても入らないでくれ…」
「わかっ…た」
そう寝室には入れられない…
寝室はベッドとクローゼットがあるくらいなのだがそこは別に汚いから入って欲しいくないわけじゃない。
寝室は特に汚いわけじゃない。それよりも…
ベッドの下にはもう読んでいないが自分が学生時代に読んでいたエロ漫画があるのだ…
*それを知られでもしたらトレーナーとしての尊厳を失うことになる… それだけは避けたい*。
風呂に入っている時は腰の痛みが和らいだ気がした。
風呂から出てリビングに行くとまるで違う家にいるんじゃないかという感覚になった
床にころがっていたシャツやスボンは洗濯カゴに入れられていて、曲がっていたカーペットは真っ直ぐに整えられ、何より空気が何だか新鮮だった。
「なんというか…流石だな」
「当然だ」
*エアグルーヴはキッチンにいた。とてもいい匂いが漂ってきた。食事を作ってくれているようだ*。
「何にを作っているんだ?」
「ハンバーグとポテトサラダだ」
なるほどやけに荷物が多い理由はそれか。
ハンバーグが普段あまり食べないからとても楽しみだった。だから思わず
「美味そうだ…」と呟いてしまった。
「ふふっ あともう少しでできるから待っていろ」
少しだけ恥ずかしかった。
なんだか一緒にトレーニングしている時とは違う感じがしてドキドキしてしまった。
ふとエアグルーヴの顔を見るとエアグルーヴは楽しそうにしていた。料理を作るのが好きなのかな?そう思った。
5分程して料理が完成した。
ハンバーグの香ばしい香りが食欲をそそる。
少し大きめに作られたハンバーグはとても美味しそだった。
エアグルーヴは自分の分を作っていたので一緒に食べるのだろう。思い返してみればエアグルーヴもう4年目の付き合いになるが一緒食事をしたことは無かった
キッチンのすぐ側にあるテーブルに料理を並べひとつしか無かった席を2つに増やして座った。
「いただきます。」
エアグルーヴと声を揃えて言った。
味は当然美味かった。これが毎日食えたら…
それを実現するのは難しいが夢を抱くくらいならいいだろう。そう思いながらハンバーグを食べた。
「味はどうだ?」
エアグルーヴに聞かれた。
「あぁ 美味い!」
俺は元気よく答えた。
「毎日食いたいな… 」
「!」
やってしまった… 思わず声に出してしまった。
思ったことを声に出してしまうのは俺の悪い癖だった
エアグルーヴに引かれたか…?
エアグルーヴの表情を見ると少し赤くなっていた。
その表情を見て俺も赤くなった。
「ま…まぁ たまにだったら」
エアグルーヴが小さい声で言った
俺は嬉しかった。毎日ではないがこの美味い料理がまた食べられる。それだけで嬉しかった。次があるといことはこんなにも嬉しいことなのかと実感した。
「ほんとか!」
「は、はやく食べろ! たわけめ…」
俺は笑みを浮かべながらハンバーグを食べた。
そしてまた思った。
あぁ 好きだなぁ
彼女が俺に対して抱いている感情は分からない。
けど一緒に今を過ごしていられる。
この事実だけで嬉しかった。
そして必ずこれには終わりがくる
そう思うと少し寂し気もした。
自分の気持ちに嘘はつきたくない、
だがそれを伝えるには早すぎると思った。
彼女の目線から俺がどう見えているか気になった。
彼女に俺はどう写っているんだろう。
そんなことを思っているとエアグルーヴが話しかけてきた。
「貴様、高校では部活をしていたのか?」
「あぁ してたよ 高校はバスケをやっていたよ」
そう 俺は高校時代バスケをしていた。身長がそこそこ高いのと運動が得意だったのでキャプテンをしていた。
「そうか あの写真はバスケ部員のメンバーということか。」
「ん? あぁ そこに飾ってあるやつね」
食事が終わり洗い物をしてもらったあとはたわいも無い話をしていた。趣味の話、普段の生活の話、昔の話、苦手なこと好きなことの話、沢山話した。今日だけでエアグルーヴ知らない一面を沢山知ることができた。
「そうなのか… もうこんな時間か…」
時計を見ると21:00だった
楽しい時間はいつまでも続かない。
さすがにこんな時間までいてもらうのも申し訳ない。
まだ一緒にいたいが今日は帰ってもらおうかな
「エアグルーヴもう時間も遅い もう帰っていいよ。腰はまだいたけど歩けるくらいには回復してしたから。」
そう言うとエアグルーヴは少ししどろもどろした。
「どうかしたのか?」
「その…実はだな…明日新しい靴を買いに行くのだが、貴様の家から靴屋までの距離が寮より近いんだ… だからその… レースが近いのもあってあまり足に負担をかけたくない だから一日泊まりたいんだが…
それに寮には今日は戻らないと言ってしまっている…」
そうきたか… まずいと思ったがこんな時間まで家にいてもらったら一日停めてもあまり変わらないと思ったので泊めることにした。
「あぁ いいよ」
バレたら… まぁその時に考えることにしよう
「感謝する」
「全然 狭いけどくつろいで行ってよ。」
「その…風呂を借りてもいいか?」
少しドキッとしたがすぐに冷静になり
「いいぞ」
そう答えエアグルーヴを風呂場に案内した。
「必要なものがあったら呼んでくれ。扉の前に置いておくからな。」
「ありがとう」
そう言うとエアグルーヴは風呂場に入り扉を閉めた。
俺は今日のインタビュー練習の内容をまとめるためにリビングの机でパソコンを開きまとめを始めた。
いつもは静かだが今日は違う。
家にエアグルーヴがいる。
それだけではなく自分の家の風呂にエアグルーヴが入っている。そして静かなせいかシャワーの音が聞こえてくる。それが気になりすぎてまとめに集中出来なかった。10分ぐらいパソコンとにらめっ子を続けていると俺を呼ぶ声が聞こた。
「ちょっといいかー?」
「あぁ どうした?」
「そこに出ている袋をとってくれないか?」
恐らくこれだろう。
「これか?」
エアグルーヴは扉越しに手を出した。
「そうだ ありがとう」
この会話だけでもドキドキした。
そういえばエアグルーヴはどこで寝かせようか…
ソファか?それは申し訳ない…
予備の布団なんてないし…
寝室ベッドしかないか…
まぁエロ本ひとつ隠せば済む話だしな…
俺はエアグルーヴが風呂場にいる間に寝室に行きベッドの下あるエロ本をとりだし、それをクローゼットの奥の方に隠した。
寝室で寝かせるのも少し申し訳ないと思った。
成人男性が寝たところで寝かせるんなんてエアグルーヴくらいの年齢が一番嫌がるだろうな。
ため息をついてリビングに戻る。
するとそこに居たのは薄着を着たすっぴんのエアグルーヴだった。すっぴんといってもアイシャドウがないくらいだが、問題なのは薄着なところだ。
最近の学生はとても発育がいい 特にエアグルーヴは発育がいいと思う… 目のやり場に困る。
「どうかしたのか?」
「いや なんでもない…」
なんでもあるんだがな。
「そうだもう寝るか?寝るなら寝室のベッドを使ってくれ 今日は俺はソファで寝るから」
「いいのか?さっきは寝室に入るなと…」
「あぁ… もう大丈夫だ」
「? そうか… じゃあ使わせてもらう。」
「その… 嫌じゃないか?」
やはり気がかりなので聞いてみる。
「何がだ?」
「だからこんな成人男性のベッドを使うのをだ…
嫌だっら別にソファでも…」
「気になどしていない… 貴様なら尚更だ」
「そっか」
尚更がいい意味か悪い意味かは分からない。
でも気にしていないのなら安心だ。
「では明日に備えて私もう寝かして貰う」
「あぁ おやすみ」
エアグルーヴは寝室に入っていった。
俺はやっと肩の力が抜けた。
「あ」
伝え忘れたことがあった
なんの躊躇もなく寝室入った
「すまん エアグルーヴ伝え忘れたことが…」
俺は忘れていたんだ… エロ本は… 2冊あったと…
その隠した1冊とは別のエロ本がベッドの下から顔をのぞかせていた。
体が固まった。気づかれぬようにそっとエロ本取った。
エアグルーヴは気づいていない。
すぐにエロ本をとってエアグルーヴに伝えた。
「暑かったらエアコン勝手につけてくれ後これはもう読んでないから勘違いしないでくれおやすみぃ!」
ものすごく早口だった。
「危ねぇ…」
エロ本を片手にテーブルに向かった。
エロ本は適当な所に隠しておくとして…
資料まとめの続きをしなければ。
俺はパソコンと又にらめっこを始めた。
しばらく経った
時刻は23:30
「俺も寝るか…」
その前になにか飲みたいと思った。
冷蔵庫に行くとお茶とお酒が入ってた。
「そういやこのほどよいこの前買って飲まなかったやつだな…」
最近飲んでいなかったので少しだけならとほどよいを取った。
それにいつまでも冷蔵庫に入れておくのはあれだと思ったので寝酒で飲むことにた。
プシュッ
炭酸特有のパチパチという音が聞こえる。
お酒は弱いわけじゃないが強いわけでもない。
いわゆる普通だ。ほどよいくらいでは酔わない。
1口飲むとお酒だからだろうか、少し身体が熱くなった。するといきなり腰に痛みがはしった。
「いてて… さすがにまだ痛いか…」
少し猫背な俺はいい姿勢でほどよいを飲んでいた。
途中であまりにも眠くなったので少し残したままソファに行きそのまま寝てしまった。
また夢を見た。
この前と同じ夢だ
しかし違うのは
隣にいる人の顔が見える。
笑っている
あぁ 君だったのか…
顔が認識された瞬間に腹に大きな衝撃が走った
「うぶっ!」
何かと目を覚まして見てみると
エアグルーヴだった。
「え?! エアグルーヴ?!」
うつ伏せるようにして顔を腹にうずくめられた。
「大丈夫か?!」
「トレー…ナー?」
様子がおかしい こんな気の抜けた声を聞いたことがなかった。一体…
ふと机に置いてあったほろよいのカンをみると…
倒れている。しかもこぼれていない
「エアグルーヴ…まさか飲んだのか?」
エアグルーヴは恐らく寝ぼけて飲んだのだろう。
俺もだしてておいたのが悪かった…
そうか… エアグルーヴは寝ぼけるのか
寮で寝ている時はどうしているのだろうか?
「えへへ… トレーナー…」
腕にしがみつてくる。
超可愛い。お酒そんなに弱いのか…
胸が腕に当たってくる…
まずい。これはまずい。理性を保てない。
このままだと自分の教え子に手を出してしまう。
そんことはできるはずがない。
しがみつくエアグルーヴを振り払いを痛い腰に力を込めてエアグルーヴを抱き抱える。
その時も胸が当たって気が気じゃなかった。
ベッドまで運ぶとエアグルーヴが
「トレーナー… 好きぃ…」
一瞬ドキッとしたが酔っているということで納得した。その時考えが浮かんだ。
この状態のエアグルーヴに言っても意味は無いが…
けど少しだけ… この状態を利用させてもらう。
「エアグルーヴ… 俺も好きだよ。」
思った通りエアグルーヴはニコニコしているだけだったおそらく朝にはこんなことは忘れているのだろう…
いつかこれを素面で面と向かって言えたらな…
そんなことを考えて暑かった寝室のエアコンをタイマー設定にしてつけた。
エアグルーヴはもう寝てしまった。
寝顔がとても可愛かった。
寝ている横に椅子を置き少しだけ眺めていた。
「寝顔を見ていることがバレたらきっと怒られてしまうだろうな…」
でも今は… 今だけは…
「俺も…眠く…なって…」
ガタンッ!
思わずウトウトしていたら音を立ててしまった。
「…うーん なんだ?」
エアグルーヴが起きた。
「あ」
「何を…していた?」
酔いは覚めていたようだ
覚めるの早すぎだろ…
「何もしてません。」
終わったと思った。
「ほんとか?」
「はい」
沈黙の後にその場に居ずらくなり立とうとすると
腰に激痛が走った
「いてて!」
「大丈夫か?!」
歩けなかったのでもう一度座った。
その時エアグルーヴからの提案で俺は戸惑った
「一緒に…寝るか?」
もうどうすればいいか分からなかった。
痛さと眠気で横になりたかったので一緒に寝ることにした。誰かと寝るなんて小学生以来だ…しかも女性…
さすがにエアグルーヴには背を向けて横になった。
背中に誰かの体温がある。何だか変な感じだ。
だんだん頭がフワフワしてきて身体が熱くなった。
すると…
「おい」
エアグルーヴに話しかけられた
「な、なんだ?」
「こっちを向け」
「無理だ」
絶対今そっちを向いたら情けない顔を晒すことになる。ただでさえまずいこの状況にそんなことが重なったらきっと俺は爆発してしまう。
「いいから向いてくれ 聞きたいことがある」
これ以上は同じことが繰り返されるだけだと思ったので観念して向くことにした。
「…..分かった」
俺は下を向きながらエアグルーヴの方を向いた。
視線下にやると胸が視界に入り気まづいし、顔を見ると爆発する… 万事休すだ…
「な、なんだ聞きたいことって」
顔と胸の間の首を見ながら俺は聞いた
「貴様は私の事をどう思っている?」
予想外の質問だった。
「それは…」
動揺した。だが答えを濁すようなことはしたくなかったし、自分の気持ちに嘘をつくのも嫌だった。
でもまだ早いと思った。だから…
「あはは あんまし大人をからかうなよ…」
そう言うと俺はエアグルーヴの頭を撫でた。
「撫でるな…」
そう言うエアグルーヴの横顔は少し悲しげだった。
今やっとわかった… 彼女目には俺は1人の男つまり好きな人として写っていたということに…
しかし俺が彼女に対して好きと伝えるには早すぎると思った。でも俺も好きなのに何故嘘をつかなければいけないのだろう…年齢の問題か?いや違う…
恥ずかしいんだ 単純に。全く俺はチキン野郎だ。
俺は悲しげなエアグルーヴの顔を見ていられなかった。覚悟を決めてこうすることにした。
「エアグルーヴ」
「なんだ?」
「実は俺はエアグルーヴが好きだ。」
真剣な表情で言う。
「エアグルーヴはどう?」
「それは… まぁ 好きだ…」
「ほんと? 付き合いたい?」
エアグルーヴの顔が赤くなる。
「できれば…な」
「うん 俺もそうを思っているよ 」
エアグルーヴが驚いた顔になる。
「でもそれはまだ早いと思った。
エアグルーヴは学生で俺は大人…だからな」
「そう…だな」
また悲しい顔にさせてしまった。
「だから 予約をしたい」
「?」
エアグルーヴは少し不思議そうな顔をした。
「エアグルーヴが学園を卒業した時にすぐに俺と付き合って欲しい 少し自分勝手かもしれないが、ダメ…かな?」
勇気を振り絞って少しカッコつけてみたつもりだったが最後の最後でボロが出た。
「全く貴様というやつは…」
ため息をつかれたがすぐにエアグルーヴは微笑んで
「いいぞ 予約されてやる 必ず迎えに来てくれ」
「あぁ! もちろんさ」
嬉しさで少し身体を動かすと…
「いって!」
腰がまた痛くなった ムードぶち壊しだ
「もう安静にして寝ろ」
微笑みながら言ってくれた。
「へへへ すまんな」
「なぁ少しいいか?」
エアグルーヴが問いかける
「どうした?」
「その…ハグくらいしても…」
その言葉に一気に心臓の音が激しくなり始めた。
「えぇ… あぁ いいよ…」
俺が腕を開くとエアグルーヴがゆっくり体を密着させて抱きついた。
とても暖かかった。
その夜はその状態で眠ることになった。
そのままエアグルーヴが眠ってしまったからだ。
多分お酒が抜けきっていなかったんだろう。
エアグルーヴはぐっすり眠っていようだが、俺は全然眠れなかった。しかし幸せだった。
次の日は一緒に靴を買いに行くことになった。
その靴を履いてレースに出ると張り切っていた。
次のレースはもちろん圧勝だった
夏祭り編に続く…