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8月13日
エアグルーヴとの1件後、最初は少しよそよしかったものの今ではもういつも通りに戻った。8月になりエアグルーヴは長期休暇に入った。その間トレーニングはあるもののエアグルーヴはローテーション的に出走可能なレースがあまりない為、体力維持のトレーニングを中心にやっている。次のレースは秋頃に控えているジャパンカップと年末のドリームトロフィーであるウィンタードリームカップのみである。GIIやGIIIのレースも出ようとすれば出られるが、とんでもなくハードスケジュールになってしまうのてまあまり負荷はかけることは無いということで、今年の残りのレースは2つにしようと決まった。そもそも中等部で成し遂げた成績がエアグルーヴは輝かすぎるので、あまり無理をしてレースに出走しても意味が無いのだ。本人は連覇などは狙っていないようだし。長期休暇も気づけば中頃エアグルーヴと俺はトレーニングだけではなく、買い物や自宅で食事を一緒にとるなどはしていだがどれも夏でなくてもできるものばかりだった。そこで俺はエアグルーヴのトレーニング終わりにあるイベントに誘ってみることにした。
「エアグルーヴお疲れ様 今日のメニューは一通り終わったけどまだ走っていく?」
「いや今日はもう終了にする このところ暑くて少々体調管理が難しいからな…」
「わかった それでさエアグルーヴ…」
本題に入る。
「なんだ?」
「予定空いてたらさ… 8月16に夏祭りがあるんだけど一緒に行かないか?」
学生時代に異性に対して何かイベントに誘うなどをした事がない俺は少し恥ずかしかった。
「少し待て… 日程を確認してみる…」
そう言うとエアグルーヴは手帳を出して日程を確認し始めた。手帳を見つめているエアグルーヴの頬や額には微量ながら汗が流れていた。それが夏の暑い太陽の光で反射して光っていた。それにエアグルーヴとても綺麗な整った顔と相まってとても色ぽっく見えた。
「8月16日は花壇当番だが… 夜なら問題ない。」
「ほんとか?! じゃあ夜の19時からあるから迎えに行くよ。」
「分かった 楽しみにしているぞ?」
やった。誘うことができた。エアグルーヴと夏らしいことができるのはとても嬉しい。しかし何とか付き合っていることがバレないようにしなくてはならない…エアグルーヴにはいつも変装などをしてもらってばかりだから夏祭りくらいどうにかしてやりたい…するとひとつの考えが浮かんだ。
「エアグルーヴ… 浴衣とか着たい?」
エアグルーヴが少し考える。
「そうだな… 着れるなら着たいな…」
全く変装とは関係ないが、服装のことを考えていたらエアグルーヴの浴衣姿を見てみたいと思った。
きっと綺麗に違いない。
「そうか わかった 浴衣を貸すよ。」
「持っているのか?」
「もってるさ」
実は実家から独り立ちする時に母親から貰ったのだ。
「いつか好きな人に着せんさい!」と…
今まさにその言葉に従えるのではないかと考えた
「着付けはできるか?」
「あぁ… いや 手伝ってもらえぬか?」
エアグルーヴは一瞬なにか言いかけたがよく分からなかった。
「じゃあ当日に着付けはしようか」
「了解した」
16日は2日後 しかし当日に着付けとは言ったものの俺は着付けのやり方がよくわからない。今から勉強しておかなくては… 不安だ
でもそれ以上にとても楽しみだ。エアグルーヴと二人で歩ける。買い物などで一緒に歩いたがそれとはまた違う2人きりに俺は心を踊らせていた。
当日になり俺はエアグルーヴの着付けをしてあげるためにトレーナー室へと呼んだ。
学園は今誰も居ないので使っでもバレたりはしない。
「じゃあまずは着物を羽織ってから…」
エアグルーヴの顔が戸惑い始める
「どうかしたか?」
「いや… 下着になるから出て行ってくれるか?」
「あぁ! ごめん!羽織ったら呼んで!」
危うくエアグルーヴに恥をかかせるところだった。
程なくしてエアグルーヴから呼ばれる。
「入っていいぞ」
そう言われ中に入るとエアグルーヴが着物を羽織って待っていた。まだ帯を巻いていなかったが髪をセットしていたので既に綺麗だった。
「それじゃあ 帯巻くから前で持ってて」
そんなこんやでなんとかエアグルーヴに着物を着せてあげることができた。
青色の浴衣だったのでとても凛々しく見えた。
時間は18時半。
早めに行っても別に問題はないだろう。
「少し早いけどもう行こうか?」
「あぁ 行こう」
エアグルーヴとトレーナー室をでて少し先の神社で開かれている会場まで行こうとしていると…
「おい」
「どうかしたか?」
「貴様は… 着ないのか?」
「あぁ 俺は普段着でいいよ」
「そうか…」
「一緒に着たかったか?」
「うるさい…たわけ…」
エアグルーヴは最近物事を正直に言ってくれるようになった。して欲しいことや言って欲しいこと、少し不器用にも感じたが前に比べれば正直なってくれた方だ。
会場までの道のりを一緒に歩く。
最初は静かだった道もだんだんと賑やかになっていく
この時だけはエアグルーヴが自分のものになったような気がした。
手は繋げなかった。勇気が足りなかった。
会場に着き俺とエアグルーヴは立ち尽くした。
俺もあまり夏祭りに来たことがなかったので、人の多さにとても驚いた。早めに来たはずなのに…
人の多さにエアグルーヴも驚いてたように見えた。
「人… 多いな」
「そうだな… 少し…」
祭りのBGMと人の会話が合わさって祭りに来たという感じが増した。屋台の煙の匂いが鼻をつく
するとエアグルーヴが...
「おい」
「どうした?」
「この人の多さだと…その…はぐれてしまうかもしれないだろ?」
「あぁ… たしかにな」
「だから… 手を… 繋いでくれるか?」
エアグルーヴは俺と目線は合わせてくれない。
多分恥ずかしいのだろう、普段しないような誘いを受けた俺は少し狼狽えてしまったが、ただ黙ってエアグルーヴの手を握った。
手汗はかいていないだろうか?
強く握りすぎていないだろうか?
そんなことばかり考えていた。
心臓の音が鳴り止まない。エアグルーヴは今どんな顔をしているのか… 顔は見れなかった。
こんな調子では夏祭りを楽しめない。
勇気を振り絞りエアグルーヴに話しかける。
「せっかくだからなんか食べるか?」
「そ…そうだな」
「何食べたい?」
エアグルーヴの視線がかき氷の屋台に移る。
「かき氷食うか」
エアグルーヴが小さく頷く。
普段2人で買い物やトレーニングする時とは全く違う素振りをするエアグルーヴに少し慣れない気持ちを抱きながらかき氷の屋台まで一緒に行った。
「味は何がいい?」
「そうだな… ブルーハワイを頼もう…」
「おっけー おじちゃん!ブルーハワイ2つお願いします!」
「はいよぉ!」
元気のいいおじちゃんに何故か元気づけられた。
エアグルーヴがカバンから財布出す
「いいよ ここは奢るからさ」
「いや 大丈夫だ」
「エアグルーヴは普段トレーニング頑張ってるだろ?そのご褒美さ」
「むぅ… そうゆうのことなら好意に甘えよう…」
エアグルーヴがそっと財布をしまった。
程なくしてかき氷ができた。
「はいよぉ!ブルーハワイね!ちょっと氷多めにしといたよ!」
気前のいいおじちゃんに感謝した。
「こっちはお兄ちゃんのね!でこっちは彼女さんね!2人で同じのかい? いやーアツアツだねぇ!?」
このクソジジイが
慌ててエアグルーヴに視線を移す。
別に不快そうな顔をしてた訳じゃなかったので
「そうですか?ありがとうございます」
屋台を離れ人が少ない場所でかき氷を食べる
途端に静かな場所にきたので耳鳴りがした。
適当なところに腰掛け一緒にかき氷を食べた。
久しぶりにかき氷を食べたせいか頭がキーンとした。
「ブルーハワイ美味いな」
「そうだな 久しぶりに食べた」
遠くで夏祭りのBGMが聞こえてくる。
今いる場所は少し涼しい場所なのでかき氷食べたあとだと少し肌寒かった。
「エアグルーヴは夏祭り最後に来たのはいつ?」
「どうだったか… 確か… 小学生の頃だったか… トレセン学園にきてから忙しかったからな。」
「そうか… 俺も最後にきたのは小学生だな」
「俺は中学入ってから部活と勉強に明け暮れていたからなぁ… 青春らしいことはあまりやっていなかったな」
中学はバスケ部に入っていたので運動をした後はすぐに眠ってしまったので夜はあまり活動できなかった。
「でも今エアグルーヴと夏祭り来れて良かったよ」
「そうか…」
かき氷も徐々に溶け始めストローで吸えるくらいになった。そうなるとあまり食事欲をそそられる見た目ではなくなる。しかしエアグルーヴはそれをストローで吸い上げて食べきった。
「美味しかったか?」
「あぁ 美味かったぞ?」
「そりゃ良かった。エアグルーヴは他にしたいことある?」
「何故私ばかりなんだ?」
「え?」
「貴様から誘った癖に… 貴様のやりたいことも言ってみたらどうだ?たわけが…」
そうだった…
誘ったのは確かに俺だ。しかしエアグルーヴを優先させる気持ちが強すぎて全てエアグルーヴに任せてしまっていた。やりたいことか…あるにはある
「そうだな… じゃあ一緒に花火みたいな」
「花火か… いいな 私も見たいぞ」
「そうか 良かった!」
「はしゃぎすぎだぞ?」
とても嬉しかった。エアグルーヴが自分の誘いを受けてくれたことも嬉しかったが、2人で見に行けることの方が嬉しかった。まるで夢を見ているかのようだった。
「花火は20時かららしいから、それまでゆっくり回ろっか?」
「そうしよう」
かき氷を食べ終え、再び人混み賑わう所に向かう。その時は自然に手を繋いでいた。はぐれる心配のない人が少ない道から自然に…手を繋ぎながらも会話は弾み2人で色々な場所を回った。かき氷の他にも色々な物を食べたり、射的や金魚すくいをした。
楽しい… この一言に尽きる。
しかし楽しい時間は過ぎるのが早い。あっという間に花火の時間になってしまった。
「そろそろ花火の時間だな」
「どこで見るんだ?」
「いい場所が…」
視線をあちこちにやる。どこも人で賑わっている。
しかし階段を登った先に人がいないスペースがある
「あの階段の上とかどうだ?」
「確かにあそこなら 綺麗に見えそうだな」
「少し登るが大丈夫か?」
「問題ない 私はウマ娘だぞ?」
確かにそうだ。人の3倍の力を持つウマ娘が階段くらいで疲れるはずがない。
「確かにそうだな じゃあいこうか」
「あぁ」
そしてまた自然に手を繋ぐ。
階段を登る時も手を繋ぐ。エアグルーヴの手は少し小さいがそれはきっと体格の差で生じたものだろう。とてもすべすべな肌を自分の手のひらで堪能する。
エアグルーヴの履いてる靴が階段を音を鳴らしながら上がっていく。その音がとても心地よい。花火が上がり始めているが焦る必要はない。ゆっくり…
ゆっくり…階段を登っていく。2人だけの時間をゆっくりと…
頂上につき一息つく。俺は少し疲れたがエアグルーヴは疲れているようには見えなかった。
「着いたな」
「花火綺麗だな…」
そうエアグルーヴの顔に花火の光が反射する。綺麗な瞳に映る花火を見て…
「エアグルーヴも綺麗だぞ…」
「なっ?!」
エアグルーヴに驚かれたが俺は動揺することはなかった。なぜなら言いたくて言ったからだ。
ほんとに綺麗だ。
本当に…
「貴様は…何故そう言うことを… 軽々しく…」
エアグルーヴの顔が赤く火照る。
それを見て何故か自分も恥ずかしくなってしまった。
そう言いながらも階段を上る前から握っていた手は離していなかった。なんならさらに強く握っていた。
花火もとても綺麗だった。しかしエアグルーヴもとても綺麗だった。周りに人がいないからとても落ち着く。花火もラストスパートなのだろう。大きな花火がだんだんと上がり始める。
「花火もそろそろ終わっちゃうな…」
「確かにな… 少し寂しい気もするな…」
確かに少し寂しい… この時間が終わってしまうのも
「…また来年も一緒に来ような」
「…..あぁ 今度は貴様も浴衣を着ろよ」
「え? あぁ!着るさ!」
来年もあると言うことがこんなにも嬉しい事だとは思いもしなかった。
俺達は最後の花火を見たあとその余韻に浸り手を繋ぎながら帰途につくのであった。
「浴衣また青がいい?」
「あぁ 青でもいいが… 貴様が好きな色でも…」
「えっ? なんて?」
「うるさい! たわけがっ!」
海編に続く…