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#現代
ぽたお
198
猫塚ルイ

9,478
122
僕は見た。最悪を。
僕の友達第一号と第二号が……こんなふうに壊れていくなんて。
勿体ないなぁ……。
警察の人たちはマサシを押さえつけていて、
僕と栞里の方をちらちら見ていた。
栞里は血のついた腕を押さえながら、それでも僕の前に立った。
「すみません。友達です。私を心配して来てくれて……少し、二人で話したいです」
警察の人は優しい声で言った。
「そうか。分かった。少しの間だけど……よく頑張ったね」
栞里は小さく頭を下げた。その横顔は、なんだかすごく大人に見えた。
「栞里、マサシは? なんでこんなことに?」
僕が聞くと、栞里は僕の手を握って、静かに言った。
「翔太は気にしなくていいの。もう全部終わったから」
またそれだ。
「いや、だってさ。僕はさ──多分みんなの言う連続殺人鬼だよ? 山田君もタケル君もミツバちゃんも」
その瞬間、栞里の顔が“凍った”。
目を大きく開いて、息を止めたみたいに動かなくなった。
なんで? 何がそんなに驚いたの?
だって……僕はただ、本当のことを……。
でも栞里はすぐにいつもの笑顔に戻った。
「翔太、大丈夫。私が守るから」
やっぱり栞里は優しいな。
「でも、どうして?」
と栞里が聞いた。
「だってさ、栞里が怒ってる理由聞いても何も教えてくれなかったから本人に直接聞いたの。誰も答えてくれなかったけど……」
栞里は僕に抱きついた。
「大丈夫。皆んなは知らなかっただけ。翔太と同じ。ごめんね、不安にさせて。これからは全部話すから」
ああ、栞里が友達第一号でよかった。
◆
そっか。翔太だったんだ。翔太、強くなったね。私が“ありがとう、犯人さん”って思ってたこと、翔太は全部してくれてたんだ。
やっぱり私たちは心が繋がってる。
嬉しい。本当に嬉しい。
これからも上手くいく。
翔太の邪魔になる人は、私が見つけて、翔太に伝える。
そうすれば今回みたいに、みんな消せる。
私は翔太を守れるのね。
「でもさ、マサシが犯人じゃないって伝えた方がいいよね?」
翔太は本当に正直で、本当にまっすぐで、本当に……可愛い。
でも。
「ダメだよ、翔太」
私は優しく言った。
「それをしてしまうと、マサシが可哀想。翔太を庇うために、自分が犯人になったんだから」
「そっか! やっぱりマサシも優しいな」
翔太は嬉しそうに笑った。
──ごめんね。
これだけは、本当のこと言えない。
だって、翔太が傷つくから。
「そうだよ? 聞きたかったんだ。なんでタケル君たちに怒ってたの?」
翔太は首を傾げて、まるで答え合わせを待つ子どもみたいに私を見る。
可愛い。
「あの子たちは翔太にとって“いらない子”だったからよ。いらない子には怒らないとダメなの」
「そうなんだ! 知れた! これで僕はまた僕に近づけた!」
ああ、可愛い。本当に可愛い。
翔太は一生、私のもの。
「これからも、私のそばにいてくれる?」
「うん! 栞里の言うことは信じれる! だって友達第一号だもん」
その言葉だけで、胸の奥がじんわり熱くなる。
──マサシには悪いけど、許してね。
警察でも大丈夫。バレない。
だってマサシはもう壊れちゃってる。精神的におかしいとされて、彼の言うことなんて誰も信じない。
ただ「私を殺しかけた」という事実。それさえあれば、この連続殺人事件の犯人としての証拠は充分。
ありがとう、マサシ。あなたのこと、少しは好きになったよ。
そして──
さようなら、壊れた連続殺人鬼さん。
これで全部、終わった。
あとは──翔太と、私の世界だけ。
「栞里! 帰ろ!」
翔太が無邪気に手を振る。その声だけで、私はどこまでも強くなれる。
「今日はこれから警察で事情聴取があるの。ごめんね。でも大丈夫。来週からまた学校が始まる。迎えにいくからね。これからは夜更かしする時は言ってね」
「うん!」
その笑顔。
その笑顔があれば、私はもっともっともっと強くなれる。
そして月曜日
ピーンポーン。
翔太の家のチャイムを鳴らした。今日からまた“元通り”の生活が始まる。
お母さんが玄関を開けた。
「栞里ちゃん! 大変だったわね。まさかマサシ君が犯人だとは」
「私もショックです……。でも、このおかげで翔太との絆を深めることができました!」
「栞里ちゃんは強いわね! これからもうちの翔太をよろしくね」
「はい! 翔太は私が立派な男に育てます」
「ふふっ、翔太ー! 早く着替えなさい! 栞里ちゃん来てるわよー!」
「はーい! 着替えっ着替えっ」
はぁ……。お母さんにも信頼されてる。翔太とも絆ができた。
全部、私の思い通り。
「栞里ー! 学校行こう!」
翔太が走ってくる。その姿を見るだけで胸が熱くなる。
「翔太? また手に赤いのついてる」
「あっ! バレたか。本当に栞里は何でもお見通しだね」
翔太は笑う。本当に、可愛い。
「ちゃんとバレないようにしないとね」
私は微笑んだ。
翔太と手を繋いで学校へ向かう。ただそれだけで、世界が明るく見える。
教室に入った瞬間、マサシの話題がクラス中──いや、学校中に広がっていた。
「マサシが犯人なんだって」
「やば……」
「栞里ちゃん大丈夫かな……」
先生も辛そうな顔で話していた。
でもね。これは辛いことなんかじゃないの。
とても、とてもいいことなのよ。
「先生! マサシ君が犯人だったってみんな言ってますよ〜!」
「やめなさい!」
先生が怒鳴る。でも私は手を挙げて、静かに言った。
「マサシは……少しおかしくなってたんだと思います。皆んなも責めないであげて……。私も悲しいの」
「栞里ちゃんがそう言うなら……」
「栞里ちゃん、よく頑張ったね」
──皆んな皆んな、バカばっかり。
私が言えば、全部信じる。私が泣けば、全部許される。
なんて簡単な世界。
数日後。
私は“見つけた”。
三年生の佐藤しずる先輩。
「マサシが捕まったんだろ? じゃあさ、その友達の翔太もやばいんじゃね? てかマサシよりあいつの方が事件起こしそうじゃん!」
「確かにな! バカそうだし!」
──あっ。見つけちゃった。
いらない子。
私はすぐ教室へ戻った。
翔太に聞こえるくらいの声で、ゆっくり、はっきりと言った。
「佐藤しずる……許さない……」
「栞里? 佐藤しずるって先輩の? なんで? 何で許さないの?」
翔太は本当に純粋。本当に可愛い。
私はいつも通り、笑顔で言った。
「翔太は気にしなくていいの」
この言葉は──翔太と私を繋ぐ“魔法の言葉”。
そして私は、そっと心の中で呟いた。
翔太、愛してるよ。
いつもありがとう。
コメント
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みぃです🥀 第12話、読み終わりました……。 栞里の“優しさ”が逆に怖くて、読んでて胸がぎゅっとなったよ。翔太が無邪気に「友達第一号」って信じてるのが、もう切なくて切なくて。 「気にしなくていいの」って魔法の言葉、栞里の中で逆の意味になってるのがゾッとする。翔太は何も気づかないまま、“栞里の世界”に閉じ込められていくんだね……。 最後の佐藤先輩のところで終わるの、続きが気になりすぎるよ…! ぽたおさんの描く“執着”の表現、すごく丁寧で、読むのやめられなくなっちゃった🤍