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昨日、失恋した

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昨日、失恋した

1 - あかりちゃんの失恋

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2024年12月21日

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今日は何日?

私が山下さんのことをあかりちゃんと呼ぶようになったのは、ある一件がきっかけだった。

ある一件、だなんてずいぶんと素朴に聞こえるけど。

大したことないように聞こえるけど。

でも本当は、とってもびっくりな事件が我が身(とあかりちゃん)に降りかかったのだ!


これはその顛末を描いた物語である。


始まりはごく普通だった。ごく普通の朝だったの。

私、瀬川由衣(高校二年生)は、いつもと同じように起床したのだ。いつもと同じように制服を着替えて、いつもと同じように朝ごはんの並んだ食卓に向かう。

でも。ここから先が「いつもと同じ」じゃなかったんだなあ……。

私は何気なく、食卓の上にあった新聞を見た。

日付は6月6日。6月6日?

それって昨日じゃない?

なんで昨日の新聞があるのかなあ、今日の新聞はどこ?

と思ってお母さんにきいてみた。

そう、私は真面目な女子高生なので毎日、新聞に目を通すのだ。見出しを見るだけだけど。

「お母さーん、今日の新聞は? 」

「テーブルの上にあるでしょ」

台所から、お母さんの声。

「え、でもこれ昨日の新聞だよ」

「今日のよ」

「でも日付が6日って……」

「今日、6日じゃない」

……何言ってるの?今日は7日でしょ?

それとも私がなんか間違ってるのだろうか。

ちょうど目玉焼きを食べ終えたところのお父さんにきいてみる。

「今日って6日だっけ?」

「そうだよ」

お父さんは平然とした顔だ。やっぱり私が間違ってるみたい。こういうことってあるよね。で、私は「今日の」新聞を手に取った。一面を見る。

……なんだか見覚えのある紙面なんだけど。

私はどういうわけか、これを見たことあるような気ごするんだけど。

いや。あるような気がするじゃなくて、見た!

確かに前にこれを見た!


私は混乱した。

どうして私は今日の新聞の内容を知ってるの?

それは私が昨日、6月6日に、この新聞を見たから……だと思う。

でも昨日は6日じゃなくて、今日が6日で……。

えーっとそれって……。どういうこと!?




くらくらした頭で学校へと向かう。

いつもの道。いつもの街並み。

いつもの……でも、会う人くらいは変わるじゃない? いつもと同じ通学路といえど。

でも変わらなかった。

昨日会った人と、同じ場所で会ってしまうのだった。

教室に入ると、友達の美穂が声をかけてきた。

「昨日の数学の宿題なんだけど……」

私はぎくっとした。これ前にも聞いた!

その後、最後の問題が難しくってわかんない、って言うんだよね!?って思ったら、やっぱり言った!

「最後の問題が難しくてわかんなかったんだけど……」

その問題は私もわかんなくて、結局、賢い千里のところに行って、解答を写__じゃない、解法を教えてもらうのだった。

私は知っている……この会話の行きつく先を知ってるぞ……と思ったら、もうなんだか限界って気持ちになって、助けを求めるように教室を見回した。

そうしたら、意外な人と目が合ってしまった。

私はどきっとした。

これは違う。

これは昨日にはなかったことだ。

目が合ったのは山下さん。

山下あかりさんって名前で、私は今まであんまり話したことない人だった。

というか、クラスメイトの多くが話したことないんじゃないかな。何しろ、山下さんは浮いてるし。

悪い意味で、ではない。とにかく美人で目立つから浮いてしまっているのだ。

すらりと長い脚、スタイルの良い長身、小さな顔に大きな目、整いすぎててちょっと冷たく見えるくらい。

なんだかクールそうだし飄々(ひょうひょう)としてるし、他人とあんまり群れないし、精神年齢高いんだなあ、私たちとは違う人なんだなあと思われてるのだ(私もこの時はそう思ってた)。

そんな山下さんがこっちを見てる。

私も見返す。

何も喋ってないけど、少し、意思が伝わってるような気がした。

変なことが起こってるよね?って私の目が言うと、山下さんの目も、そうなの、って返してるみたい。

声をかけたかったけど、チャイムが鳴ってしまった。私は休み時間に彼女を捕まえることにした。

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