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一番星に願いを

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一番星に願いを

1 - 僕の一番星へ

♥

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2024年07月07日

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どうも皆様、サカナです

七夕ですな!

織姫と彦星、やるっきゃないでしょう!

学パロの中日です

七夕の起源は中国らしいですよ












「はぁ…」

窓の外を見上げて、僕はため息をついた。

僕がしたいのは、退屈な授業を受けることでも、空を見ることでも、ノートの隅に恋文を書くことでもない。

「中国さんに会いたい…」

午後の授業は眠たくなる。

中国さんと一緒にお昼寝でもしたら、きっと気持ちいいんだろうな。

僕は中国さんに恋する、夢見がちな男子高校生だ。

好きになったら止まらない僕は、今まで幾度となく恋をして、幾度となく失恋してきた。

心のどこかではわかっている。

中国さんは僕のことを、後輩としか思っていない。

だけど、それでもいいんだ。

恋するこの期間だって、思い出だから。

でもね、こっぴどくフラれてさっさと諦めるべきの相手だとしても、僕は「今度こそ付き合えるかも」だなんて幻想に魅せられている。

気がつけば、授業は終わっていた。


「明日は七夕なので、今日は短冊でも書いてみましょうか」

「えー、高校生にもなってそんな子供みたいなことすんの?」

「いいじゃないですか。主任と相談して、生徒全員分の短冊を用意したので、お願い事の一つくらい書きましょうよ。テストで良い点取れますように〜とか、好きなこと付き合えますように〜とか!」

「まあいっか、面白そうだし!」

そんな会話が聞こえてきて、一枚ずつ短冊が配られる。

「願い事… 」

短冊にくらい、本音を書いても良いよね。

『中国さんと付き合えますように』

名前は書かなかったし、普段の筆跡と違う丸文字で書いた。

美しくて優しい中国さんに恋する乙女は多いから、そのうちの1人だとでも思われるだろう。

帰る前に笹へ吊ってきた短冊は、そよ風に揺られて寂しそうだった。



「…」




窓の外を見るのは好きだ。

昼は明るい太陽や白い雲が空を彩り、もし雨が降っていても、水滴のベールは気分を落ち着かせてくれる。

夜には静かに照らすお月様があって、まさに天を満たす星々が散っている。

そんな景色を見ながら好きな人のことを思うのが、僕の日課だ。

「明日は七夕かぁ…」

七夕といえば、織姫と彦星だろうか。

「2人はいいな、好き同士で結ばれてて」

今まで何人にフラれたっけ。

最初は幼稚園のかっこいい男の子。

次は小学校の人気な先生。

その次は足の速い男の子だったかな。

全員にフラれてきたけれど、恋する僕はずっといる。

「一年に一度しか会えない。僕はそれでもいいから」

叶う恋をしてみたい。










翌日、特に何が起こるわけでもなく、平凡に全ての授業を終えた。

今日は中国さんを見ることができなかったので、いつもよりよくない日だ。

「…七夕なんて結局はお祭りごとだよね…僕みたいな地味なやつは、自力でもお願いなんて叶わないし… 」

特段期待してもいなかったけど、少し不貞腐れたような気持ちで、のそのそと荷物を詰める。

さようならーと適当に先生に告げて、重い鞄を持って教室を出た。





「明日こそ告白したいな…」

「日本、ちょっと待つアル」

「!?!?!?中国さん!?」

「今大丈夫アル?」

廊下を歩いていたら、中国さんに声をかけられてしまった!

嬉しくて変に声が上擦ってしまい、恥ずかしさで顔が赤くなる。

「だっ、大丈夫、です!」

多分、今僕の顔はかなり喜色が浮かんでいるだろう。

「それはよかったアル。ちょっと我についてきてほしいんだが、来てくれるアル?」

「はい!」

僕の返事に中国さんはニコッと笑って、細長い指が揃った手で手招きをした。

仕草が美しくてぼーっとしてしまったけど、僕も慌ててついて行く。

やっぱり好きだなぁ…これがもし、愛の告白なら、どんなに嬉しいことだろう。

中国さんへの思いは止まることを知らず、空き教室まで大人しく案内された。


「えっと、どうかされたんですか?」

ニヤけてしまいそうな口角を必死に鎮めて、窓の外の夕陽を見つめる中国さんを見る。

声をかけると、ゆらりとこちらへ振り向いた。

「これ、お前のだろ?」

「!!そ、それはっ!」

中国さんが持っていたのは、僕の短冊だった。

「我と付き合えますように…か。かわいいお願いアルネ」

くくくっと小さく笑う中国さんは素敵だけど、僕は知られてしまったことで完全にパニック状態。それどころじゃない。

「そ、それは、違くて!ぼ、僕っ、僕は…」

否定しなくちゃ。

言い訳を並べようとするけど、この恋を偽物にしたくはない。

好きな気持ちを伝えたい。でも知られたくない。

違う違うと子供のように言うことしかできなくて、中国さんの顔が見られなかった。

「…日本、本当は我のこと好きじゃないアル?」

「そ、そんなわけっ!…あ…」

「やっぱり、我のこと好きだよネ?」

まるで誘導尋問だ…!

もう誤魔化しは効かない。

急だけど、この恋もここで終わるみたいだ。

「…好きです。大好きです。あの日、僕が困っていたところを助けてもらった時から、ずっと大好きでした。思いを聞いてもらっただけで満足ですから…どうぞ、遠慮なくフってください 」

涙を見せたら鬱陶しいだろうから、僕は中国さんの方を見ない。

「…我、嬉しいヨ。日本から告白されて 」

「慰めなんて、必要ありませんよ…ただ失恋するだけ、これで何回目かも覚えてませんし」

中国さんへの思いだけは、いつもよりずっと重かったけれど。

明日からどうしようかな、中国さんとは気まずいな。

「む…我の気持ちは無視するアル?我は本当に嬉しいヨ」

「…でしたら、僕と付き合ってくれますか?無理でしょう。 変に慰められたら、僕引きずっちゃいますよ?」

「決めつけないでほしいアル。むしろ、付き合いたかったヨ。ずっと前からネ」

「…え? 」

「これ、最初見た時はびっくりしたアル。日本がたまたま括り付けていたのを見たから、確かめてみたくなったアル 」

ちらっと中国さんの方を見ると、優しい手つきで僕の短冊の文字をなぞっていた。

「名前がなくて確証はなかった。でも自惚れたかったから、勝手に取ってきたアル」

「…ほ、本当、ですか?」

恋が報われそう。

これでフラれたら、僕は三日三晩泣く自信がある。

「本当ヨ!ねえ日本」

「な、なんですか?」

「このお願い、叶えてもいいアル?」

返事をする前に、僕は中国さんに抱きついた。

やっと見つけた彦星さまは、天の川の対岸になんていないで、僕を抱きしめ返してくれる。

顔を上げると、きらきらと夕陽を反射する星の飾りが見えた。

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