どうも皆様、サカナです
七夕ですな!
織姫と彦星、やるっきゃないでしょう!
学パロの中日です
七夕の起源は中国らしいですよ
「はぁ…」
窓の外を見上げて、僕はため息をついた。
僕がしたいのは、退屈な授業を受けることでも、空を見ることでも、ノートの隅に恋文を書くことでもない。
「中国さんに会いたい…」
午後の授業は眠たくなる。
中国さんと一緒にお昼寝でもしたら、きっと気持ちいいんだろうな。
僕は中国さんに恋する、夢見がちな男子高校生だ。
好きになったら止まらない僕は、今まで幾度となく恋をして、幾度となく失恋してきた。
心のどこかではわかっている。
中国さんは僕のことを、後輩としか思っていない。
だけど、それでもいいんだ。
恋するこの期間だって、思い出だから。
でもね、こっぴどくフラれてさっさと諦めるべきの相手だとしても、僕は「今度こそ付き合えるかも」だなんて幻想に魅せられている。
気がつけば、授業は終わっていた。
「明日は七夕なので、今日は短冊でも書いてみましょうか」
「えー、高校生にもなってそんな子供みたいなことすんの?」
「いいじゃないですか。主任と相談して、生徒全員分の短冊を用意したので、お願い事の一つくらい書きましょうよ。テストで良い点取れますように〜とか、好きなこと付き合えますように〜とか!」
「まあいっか、面白そうだし!」
そんな会話が聞こえてきて、一枚ずつ短冊が配られる。
「願い事… 」
短冊にくらい、本音を書いても良いよね。
『中国さんと付き合えますように』
名前は書かなかったし、普段の筆跡と違う丸文字で書いた。
美しくて優しい中国さんに恋する乙女は多いから、そのうちの1人だとでも思われるだろう。
帰る前に笹へ吊ってきた短冊は、そよ風に揺られて寂しそうだった。
「…」
窓の外を見るのは好きだ。
昼は明るい太陽や白い雲が空を彩り、もし雨が降っていても、水滴のベールは気分を落ち着かせてくれる。
夜には静かに照らすお月様があって、まさに天を満たす星々が散っている。
そんな景色を見ながら好きな人のことを思うのが、僕の日課だ。
「明日は七夕かぁ…」
七夕といえば、織姫と彦星だろうか。
「2人はいいな、好き同士で結ばれてて」
今まで何人にフラれたっけ。
最初は幼稚園のかっこいい男の子。
次は小学校の人気な先生。
その次は足の速い男の子だったかな。
全員にフラれてきたけれど、恋する僕はずっといる。
「一年に一度しか会えない。僕はそれでもいいから」
叶う恋をしてみたい。
翌日、特に何が起こるわけでもなく、平凡に全ての授業を終えた。
今日は中国さんを見ることができなかったので、いつもよりよくない日だ。
「…七夕なんて結局はお祭りごとだよね…僕みたいな地味なやつは、自力でもお願いなんて叶わないし… 」
特段期待してもいなかったけど、少し不貞腐れたような気持ちで、のそのそと荷物を詰める。
さようならーと適当に先生に告げて、重い鞄を持って教室を出た。
「明日こそ告白したいな…」
「日本、ちょっと待つアル」
「!?!?!?中国さん!?」
「今大丈夫アル?」
廊下を歩いていたら、中国さんに声をかけられてしまった!
嬉しくて変に声が上擦ってしまい、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「だっ、大丈夫、です!」
多分、今僕の顔はかなり喜色が浮かんでいるだろう。
「それはよかったアル。ちょっと我についてきてほしいんだが、来てくれるアル?」
「はい!」
僕の返事に中国さんはニコッと笑って、細長い指が揃った手で手招きをした。
仕草が美しくてぼーっとしてしまったけど、僕も慌ててついて行く。
やっぱり好きだなぁ…これがもし、愛の告白なら、どんなに嬉しいことだろう。
中国さんへの思いは止まることを知らず、空き教室まで大人しく案内された。
「えっと、どうかされたんですか?」
ニヤけてしまいそうな口角を必死に鎮めて、窓の外の夕陽を見つめる中国さんを見る。
声をかけると、ゆらりとこちらへ振り向いた。
「これ、お前のだろ?」
「!!そ、それはっ!」
中国さんが持っていたのは、僕の短冊だった。
「我と付き合えますように…か。かわいいお願いアルネ」
くくくっと小さく笑う中国さんは素敵だけど、僕は知られてしまったことで完全にパニック状態。それどころじゃない。
「そ、それは、違くて!ぼ、僕っ、僕は…」
否定しなくちゃ。
言い訳を並べようとするけど、この恋を偽物にしたくはない。
好きな気持ちを伝えたい。でも知られたくない。
違う違うと子供のように言うことしかできなくて、中国さんの顔が見られなかった。
「…日本、本当は我のこと好きじゃないアル?」
「そ、そんなわけっ!…あ…」
「やっぱり、我のこと好きだよネ?」
まるで誘導尋問だ…!
もう誤魔化しは効かない。
急だけど、この恋もここで終わるみたいだ。
「…好きです。大好きです。あの日、僕が困っていたところを助けてもらった時から、ずっと大好きでした。思いを聞いてもらっただけで満足ですから…どうぞ、遠慮なくフってください 」
涙を見せたら鬱陶しいだろうから、僕は中国さんの方を見ない。
「…我、嬉しいヨ。日本から告白されて 」
「慰めなんて、必要ありませんよ…ただ失恋するだけ、これで何回目かも覚えてませんし」
中国さんへの思いだけは、いつもよりずっと重かったけれど。
明日からどうしようかな、中国さんとは気まずいな。
「む…我の気持ちは無視するアル?我は本当に嬉しいヨ」
「…でしたら、僕と付き合ってくれますか?無理でしょう。 変に慰められたら、僕引きずっちゃいますよ?」
「決めつけないでほしいアル。むしろ、付き合いたかったヨ。ずっと前からネ」
「…え? 」
「これ、最初見た時はびっくりしたアル。日本がたまたま括り付けていたのを見たから、確かめてみたくなったアル 」
ちらっと中国さんの方を見ると、優しい手つきで僕の短冊の文字をなぞっていた。
「名前がなくて確証はなかった。でも自惚れたかったから、勝手に取ってきたアル」
「…ほ、本当、ですか?」
恋が報われそう。
これでフラれたら、僕は三日三晩泣く自信がある。
「本当ヨ!ねえ日本」
「な、なんですか?」
「このお願い、叶えてもいいアル?」
返事をする前に、僕は中国さんに抱きついた。
やっと見つけた彦星さまは、天の川の対岸になんていないで、僕を抱きしめ返してくれる。
顔を上げると、きらきらと夕陽を反射する星の飾りが見えた。
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