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おぉっ!面白い展開になってきた♪でもクロさんって何者?まさか大森さんに変装した若井さん説?⋯⋯流石にそれはないか。
フリーな日は男性も女性もいて、いつもと雰囲気が違っていて、その賑やかさに少し戸惑っているとクロさんが来てくれた。
「お待たせ、遅くなってごめん」
「ううん、僕こそ···あの、2人きりになれる部屋で話がしたい」
人が多いとバレるリスクが増える。
また、クロさんの前を綺麗な女性たちが通りチラチラと目線を投げかけるのもなんだか嫌だった。
「部屋空いてて良かった···それにうさぎちゃんと会えて」
「ごめん、あんなメッセージ送って···」
「ううん、嬉しかった。俺ってうさぎちゃんに必要とされてるのかなって」
必要···?
その言葉に今日の出来事が蘇る。
僕は元貴を必要としている。
もちろんバンドも。
けど元貴は僕を必要としているんだろうか?
バンドとしてはどうだ?
もし、必要とされてなかったら···。
身体が冷たくなるような感覚に思わず手を握りしめる。
「いやなこと、思い出させちゃった?ごめん、俺はうさぎちゃんが必要だから嬉しくてそういっただけなんだ」
握った手にクロさんの手が重なる。
あったかい。
この人は、優しくて僕を必要としてくれている···それがどんな理由であっても。
「仕事で僕なんか必要じゃないのかなって怖くなった···優しさだけが取り柄なのに、大好きな人に優しくもできなくて···じゃあ僕の存在価値ってある···? 」
帰り際の寂しそうな元貴の顔がチラついて僕は胸が苦しくなる。
今頃どうしているか、孤独に苛まれていないか。
今頃になって後悔の気持ちが生まれる。
「俺はうさぎちゃんの仕事のことはわからないけど、優しいからっていう理由だけで必要とされてるわけじゃないと思う。優しい人だけの人なんていくらでもいる。そうじゃなくて自分なりに頑張って必死にやってて、思いやりもあるのがうさぎちゃんなんじゃない?ただの優しさじゃない。思いやりがある子なんだって俺は思う···それにきっと、頑張り屋さん。なんとなくね、わかるよ 」
偉そうでも分かったふりでもないその言葉に今は甘えたかった。
ベッドに座ったまま、僕はそっとクロさんにもたれ掛かった。
「···休むのも、逃げるのも悪いことじゃない。立ち向かって、戦うためなら」
気付けば彼の腕の中で泣いてしまっていて、泣き止んだ時に彼は僕の濡れた頬を指でなぞって···どちらかともなく、唇が触れ合った。
僕はお礼を言って、帰ることにした。
戦うために、立ち向かうために。