テラーノベル
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最初に涼ちゃんにあれ、と思ったのは見慣れない携帯を持っていた時だ。
そしてそれを隠した時。
今まで何でも知っていると思っていた涼ちゃんが俺に隠し事をしている。
俺の知らない涼ちゃんがいるなんて···その全てを占めるのは俺であって欲しいのに、他に誰かいるのかと胸が苦しくなった。
好きな人の一番好きな人でいたい。
そう思うのはいけないこと?
例えだめだと言われても諦める気は少しもない。
俺が涼ちゃんを諦めることはない。
それから注意して涼ちゃんをみる日々が続いた、けれど あの携帯をあれから見かけることはなかった。
ある日、いつも通りにスタジオで音を合わせながら進めていく。
途中、熱が入りすぎるところもあったけれどいつもの感じだと思っていた。
それなのに。
その日の涼ちゃんは練習が終わってもピリピリとした空気感を引きずっていてもとの感じに戻らなかった。
あまりの素っ気なさに、涼ちゃんが帰ったあと若井に慰められたくらいだった。
「まぁ涼ちゃんなりにも色々あるよ、明日にはまたいつも通りだから···あんまり気にすんな」
それが俺で、それがこのバンドだ。
間違ったことをしたつもりはない。
だからこそ涼ちゃんの態度が悲しくて帰ってからメッセージを送ったのに、既読にすらならないことで余計不安になる。
気付けばタクシーに乗って涼ちゃんの家を目指していた。
明るく家に入れてくれるのを期待して···。
涼ちゃんの家についてもう一度連絡しようかとマンションを見あげた時、出てきた人に目がいく。
髪色、体型、歩き方···一瞬で涼ちゃんだ、と思った。
珍しく全身真っ黒な服装だったけど、間違いない。
こんな夜遅くに?
声をかけようとしたけど涼ちゃんは目の前でタクシーに乗って行ってしまった。
「あれ涼ちゃんだよね···?」
ますますいつもと雰囲気の違う涼ちゃんに心がざわつく。
俺の連絡を無視してどこに行ったの?
諦めて家に帰ったけど、いつまでたっても返事はなくて既読にすらならなかった。
この時からますます俺は俺の知らない涼ちゃん、を疑い始めることになる。
次の日。
若井が心配そうな顔で涼ちゃんにおはよう、と声をかけて俺の顔を次に見る。
「おはよう、今日はしっかりやれると思うから、早く練習しよ!」
元気な様子の涼ちゃんに若井はあきらかにホッとした顔でさすが涼ちゃん、なんて褒めて自分も用意を始めた。
確かにいつも通りの涼ちゃんでいることは嬉しいことだった。
なのに昨日見た、知らない人みたいな涼ちゃんが頭の中に影を落とす。
「···涼ちゃん、昨日って何してたの?」
「あ、ごめん!僕寝ちゃってて···元貴のメッセージにも朝になって気づいたんだよね···」
「ずぅっと帰ってから寝てたの?」
「···そう、ずっと寝てた」
いつも通りの笑顔なのに、俺はそれが嘘だとわかっていた。
俺に嘘を付くの?
その可愛い笑顔で?
それなら俺にも考えがあるよ。
涼ちゃんがどこに行っているか、なにを隠しているのか、俺は探ることにした。
コメント
3件
涼ちゃんの事なら 全部知っていないと気がすまない 大森さんのストーカーチックなところ、 嫌いではないです(´∀`*)ウフフ 涼ちゃん、気をつけてー!! こんな展開、大好物です✨️
まあ⋯隠し事されたら、いい気はしませんわな。