テラーノベル
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Scene.1:撮影終わり
長い撮影とミーティングが終わり、
スタジオの外に出た頃には、すっかり辺りは
夕暮れ時に染まっていた。
風が肌寒く吹き抜ける中、
東兄弟は並んで最寄り駅の方向へ歩いている。
問「ふあぁ〜……今日もよく頭使ったなぁ。
お腹すいたねぇ、言」
言「当たり前でしょ、
で、これからまっすぐ自分の家に帰って、
またコンビニのカップ麺とかですませる
気でしょ、問ちゃんはぁ」
問「え、バレた? w
だって自炊する気力なんて1ミリも
残ってないもん。言は? 今日は何作るの?」
言「僕は……、
帰ったら冷蔵庫にある豚肉とキャベツで、
普通に生姜焼きでも作ろうと思ってますけど 」
それを聞いた瞬間、
問の足がピタリと止まった。
問はゆっくりと言の方に顔を近づけ、
キラキラとした瞳で見つめてきた。
問「……ねえ、言。生姜焼きの匂いが、
僕の鼻をかすめた気がするんだけど」
言「……は? なにその急なアピール。
やめてよ、そういう目でこっちを見るな!」
問「だってもうお腹が
『言の生姜焼きを食べたい』
って泣いてるんだもん。ね? ちょっとだけ、
言の家寄っていってもいい……?」
言「ダメに決まってるでしょ!
僕の家は問ちゃんの食堂じゃありません!
自分の家で自分で何とかしなさい!」
そう言って冷たく突き放そうとする
言だったが、問は全くめげない。
むしろ、さらに一歩踏み込んで言の袖を
キュッと掴んだ。
問「そこをなんとか! ね?
電車一駅分だしさ。言の作ったご飯、
最近食べてない気がするなぁ……」
言「一昨日も食べたでしょ! っていうか、
なんで僕がわざわざ自分の家に問を招いて、
夕ご飯まで作ってあげなきゃいけないわけ?
別々の家に住んでる意味!」
文句を言いながらも、
言の耳たぶはもう真っ赤に染まっている。
双子の兄からの
「頼りにしてるアピール」
に弱いことを、
言自身が一番よく分かっていた。
Scene.2:言の部屋
結局、根負けしたのは言のほうだった。
言「……今回だけだからね?
本当に今日だけだから!」
とぶつぶつ文句を言いながら、
言は自分のアパートの鍵を開けた。
ガチャリ、とドアが開く。
言の部屋は、問の部屋とは違って
綺麗に整理整頓されていた。床にモノは
落ちていないし、脱いだ靴も
きれいに揃っている。
まさに「しっかり者の弟」の部屋そのものだ。
言「ほら、勝手にその辺に座らないの。
今お茶淹れるから、そこに大人しくしてて」
問「はーい。いやぁ、いつ来ても言の部屋は
落ち着くなぁ。モデルルームみたい」
ソファにドスンと腰を下ろした問は、
さっそく部屋をキョロキョロと見回す。
言はキッチンに立ち、テキパキとエプロンを
つけながら、冷蔵庫から食材を取り出した。
言(まったく……。なんで僕がこの人の
夕ご飯も作らなきゃいけないわけ……)
包丁でキャベツをトントンとリズミカルに
千切りにしながら、言の心の中は不満と
照れ臭さで大忙しだった。
一人暮らしの自由な空間のはずなのに、
兄が来ると一気に「お世話モード」の
スイッチが入ってしまう。それが
悔しいような、でもどこか嬉しくも
あるような、複雑な感情。
フライパンからジュージューと香ばしい
生姜焼きの匂いが漂ってきた頃、
リビングのほうから、なにやら
怪しい物音が聞こえてきた。
カサッ、ゴソッ……。
言「……ねえ、問。 そこで何探してるの?」
言が包丁を持ったままリビングを覗き込むと、
そこにはローテーブルの下を漁っている
問の姿があった。
問「いやぁ、言が隠してたお菓子、
どこにあるかなって思ってさ」
言「人の家で勝手に宝探ししないでよ
ていうか、さっきから勝手に人の家の引き出し
を開けようとしないの! 子供なの!?」
問「えへへ、バレた。だって暇なんだもん」
言「暇なら手伝ってよ。
ほら、お皿並べて!」
Scene.3:食卓を囲む夜
少しして、出来上がったばかりの湯気の立つ
生姜焼き定食がテーブルに並んだ。
千切りキャベツに、ほかほかの白ご飯、
そしてお味噌汁。
問「うわあ……! めちゃくちゃ美味しそう!
さすが言!」
言「はいはい、手を合わせて。いただきます」
二人で揃って「いただきます」を言い、
問がさっそく生姜焼きを口に運ぶ。
瞬間、問の顔がパァッと明るくなった。
問「ん〜〜! これこれ! この味だよ!
やっぱり言の料理が世界で一番美味しいなぁ」
言「そんな大げさに言わなくてもいいでしょ。
普通だよ、普通」
口ではそう言いながらも、言は嬉しそうに
ご飯を一口食べた。
向かいに座って、自分の作った料理を
美味しそうに頬張る兄の姿を見ていると、
さっきまでの「もう面倒見ないからな!」
という決意が少しずつ溶けていってしまう。
問「ねえ、言」
言「なに? ご飯中の喋り食いは行儀悪いよ」
問「今度さ、QuizKnockの企画で
『お互いの好きなところ
10個言うまで帰れません』
ってどうかな?」
言「絶対やらない! そんなの地獄でしょ!
第一、企画会議は事務所でやって!」
バッサリと切り捨てる言だったが、
その頬はほんのりと赤らんでいる。
夕食の片付けを終わり、時計の針を見ると
夜の8時をまわっていた。
そろそろ問は帰らなければならない時間だが、
問はソファにもたれかかったまま、
すっかりくつろぎモードに入っている。
言「ほら、そろそろ自分の家に帰りなさい。
終電なくなっちゃうよ」
問「え〜、いいじゃん、言の家泊まっても。
明日も朝から二人で一緒に行けるしさぁ」
言「ダメ! 自分の家は自分の家でしょ!
いつまで人の家に居座る気なの!」
怒りながらも、言はちゃっかりと
「明日の朝食用にとりわけた食パン」の袋を
問のバッグにそっと詰め込んでいた。
玄関先で、靴を履きながら問が笑う。
問「今日もありがとね、言。
ごちそうさまでした」
言「……っ。もう本当に、次は絶対に
ごはん作ってあげないからね?
自分の家でちゃんと自炊しなさい!」
そう言いながらも、ドアの鍵を閉めた。
#学パロ?
が と .
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コメント
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リオンです。第3話、読み終えました。 双子の距離感が絶妙でしたね。問が「言の家泊まってもいいじゃん」と駄々をこねる横で、言が「次は絶対に作らない」と言いながら食パンをバッグに忍ばせる——この行動の矛盾が、もう全部を物語ってる。口では冷たく突き放すくせに、結局は面倒を見てしまう。この「言ってることとやってることのギャップ」が、双子ならではの親密さと、言の不器用な優しさを同時に感じさせてくれました。生姜焼きの匂いが漂ってきそうな、温かい夜の一幕でした。