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「それ新しい恋愛のカタチ?」
そしてオレはもう気持ちが抑えられないまま、気づけばそう彼女に声をかけていた。
「え?」
すると当然驚く彼女。
「いや、そういうの初めて聞いたから」
彼女に気付かれないように至って自然に。
「うん。私も初めて言った」
「何それ(笑)」
こんな急に話しかけられたのに、特に嫌そうな素振りもせずすぐに自然に返してくれた彼女。
そしてそんな言葉を返した彼女が可愛くて思わず笑ってしまう。
「だってなんか今更誰かと付き合うとか面倒だし、自分の時間とか無くなるの嫌だし、仕事も続けたいし、結婚とか到底考えられないし。だけど恋する気持ち?みたいなモンはさ、無くすと女性としてダメな気もして。だからトキメキだけくれる人。いたらなーって」
彼女のその言葉は何年か前の正にオレ。
誰かと付き合うのも面倒で、束縛されたりその相手のせいで自分の時間を奪われるのも嫌で。
だから当然結婚も考えたこともないし。
だけど彼女と違うところは、トキメキとかそういうのも特に必要だとは感じなかった。
彼女にあの日出会うまでは。
「あー、でもそれわかるかも。オレも特定の相手とか結婚とか面倒だし、でも誰かいてくれる楽しさは味わいたいみたいな」
そう同じ気持ちかのように返すけど、でも誰かではなく、今は目の前の彼女とならそれを味わいたい。
「いや、あなたとはちょっと違うような・・・」
そう。
オレは今目の前のあなたに対して興味を持って話をしてるだけであって、きっとオレのことを知りもしないあなたとはきっとその意味は違うはず。
「でも見た感じモテてそうだからそんな心配ないんじゃない? 周りの女性放っておかないでしょ」
へ~。オレのこと初めて会ったのにそんな風に思ってくれるんだ。
だとすれば、もしかしたら脈アリって期待してもいい・・?
「まぁ」
いくら女にモテてチヤホヤされても別に嬉しくない。
あなた以外はオレには面倒なだけ。
「でも、だからってそれで満たされて、本気になれるかっていうと別の話」
あなた以外オレの気持ちは満たされない。
オレにはあなた以外本気になれないから。
「でもそんな感じでもトキメキ欲しいんだ?」
そう。あなたとのトキメキがオレは欲しいだけ。
「まぁだからといって誰でもいいってワケでもないから」
きっとこの人は自分がそう思われてる相手だなんて思ってもいないんだろうな。
オレはずっとただ一人この人のことだけを想って、オレなりのまずはジャブ的なアピールをしているのに。
「じゃあ、そんなあなたにトキメキもらえる相手は幸せモノだ」
そう思ってくれるなら、あなたがその相手になってよ。
オレがあなたをトキメかせて幸せにしたい。
思ったより彼女の悪くない反応にどんどん期待し始めてしまう。
そして彼女への気持ちが止まらなくなり始めてるのが自分で感じる。
「なら試してみる・・・?」
気付けばそう口走っていた。
オレの理想と願望が、つい気持ちのまま暴走して漏れ出た瞬間だった。
もしオレにその可能性があるなら、どうしてもそのチャンスが欲しくて。
オレのことを好きになってほしいだなんて言わないから。
一度試してくれるのなら。
彼女をそんな気持ちにさせることが出来るなら。
ただのお試しでもいい。
一度だっていい、オレを意識してほしい。
彼女にもっとオレという存在を知ってほしい。
「なるほど。こうやってドキッとさせるワケね」
だけど、彼女はやっぱり大人で。
オレを軽くあしらう。
「ドキッとしてくれたんだ」
彼女があんな一言を言っただけでもドキッとしてくれたというその言葉が嬉しくて。
少しでもオレがそんな対象になれるのだと自信が出る。
「まさか自分がそんな不意打ちに言われるなんて思ってなかったし。でも確かにこういう感じだよね。うん、久々味わえたこういうの」
それはただその言葉が久々だからドキッとしたのか。
それともオレだからそう感じてくれたのか。
どうしても知りたい。
「あれ?もう今ので満足しちゃった感じ? もっとドキドキしたくない?」
オレはあなたをもっとドキドキさせたい。
オレの言葉で、オレというすべてで、あなたをもっとこれ以上にドキドキさせて意識させたい。
「いや・・それは・・・」
だけどそのオレの言葉に戸惑い始める彼女。
「じゃあさ、一緒に試してみない?その新しい恋愛のカタチってやつ?なんかオレもそれ興味あるし」
でもここでチャンスを逃すワケにはいかなくて。
どんなカタチでもいいから今はあなたと繋がっていたい。
新しい恋愛のカタチをオレと始めてほしい。
「私と・・あなたが?」
「そう。ちょうどよくない?お互い求めるモノ一緒だし。面倒なことは一切なし。お互いそのドキドキだけ楽しむ。面白そうじゃん」
あなたが求める関係でいいから。
面倒だと思うことならしなくてもいいから。
本当はそんな必死になってる気持ちを彼女にバレないように、そんな軽い言葉で気持ちを隠して、その言葉の裏で軽い気持ちでもその提案に乗ってほしいと願う自分がいる。
「そんな冗談みたいな話乗っかると思う?」
でもやっぱり彼女はそんな簡単に軽い誘いには乗らない。
わかってはいても、すぐにあしらわれたのがなんだか悔しくて。
「なら・・・本気だって言ったらどうする?」
冗談なんかじゃないのに。
オレはずっとあなたに本気なのに。
せっかくこんなチャンスが来たのに、何もなく終わらせたくない。
ついその本気だという気持ちがわかってほしくなって、思わず今の流れを忘れて真剣に見つめてしまう。