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ゆずき
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#恋愛
もな
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「種明かし……ですか」
リシャール殿下の口から放たれた言葉。私は小首を傾げてしまう。種明かしだなんて……どうして急にそんなことを……
「そうだ。リナリア嬢に伝えておかなければならない大切な話だ。これを聞けば、私やバージルに対して抱いていたであろう違和感や疑問が解消されるだろう」
胸がドキリと高鳴った。私がおふたりに協力しながらも納得できない、または不思議に思う瞬間が多々あったことを見透かされている。殿下はそれらの感覚の理由を説明して下さると言っているのか。それを『種明かし』と表現されたわけだ。
ステラはすでに殿下から説明を受けているようで、静かに私たちのやり取りを見守っていた。しかし、彼女の表情はとても険しく、口出しこそなかったものの……不満ありありといった様子である。
「本当ならバージルもこの場に立ち合わせたかったのだが……あいつは事件の後始末に追われてそれどころじゃないからね。私もリナリア嬢との話が終わったら彼のもとへ合流する予定だよ」
「……おふたり共、お忙しいのですね」
当然だった。殿下とバージル様はDP事件の捜査責任者である。最も忙しいであろうタイミングで、わざわざ私の元へ足を運んで下さったのか。そうまでして私に伝えなければならない話とはなんだろうか。事件の顛末があのようなものになってしまった今となっては……聞くのが少し怖かった。
「それ以外にもアイツの口から経緯を説明するのは酷だという理由もある。友人として一肌脱いでやったってところだ」
「ふたりでこそこそして……上手くいったから良かったようなものの……リナの身にもしものことがあったらどうするつもりだったんですか」
「危険が全くなかったとは言えないけど、捜査自体は大詰めに入っていたしね。それにほら……リナリア嬢に関してはバージルが何においても絶対に守るって確信があったからさ」
「そうだとしても相談はして欲しかったです」
ステラが大きな溜息をつきながら殿下を睨みつけている。私が事件の捜査協力をしていたことを知って、心配して怒ってくれているのか。
話を持ちかけてきたのは殿下だけど、彼らの手伝いをすると最終的に決断したのは自分だ。そのことで殿下を責められると居た堪れない。
「ステラ、おふたりを手伝うと決めたのは私なの。お役に立てることがあるならばと……決して無理矢理させられていた訳ではない。だから殿下を責めないで」
「リナ……」
私の言葉を受けてステラは怒りをおさめてくれた。全部に納得はいっていないと顔に書いてあるが、とりあえず殿下への罵りは終了したので一安心だ。
「ステラからの非難は甘んじて受け入れるよ。リナリア嬢、危険な事をさせて申し訳なかった。我々にもあまり余裕がなかった……というのは言い訳になってしまうが、アルメーズ家を……君を救うためには仕方がなかったということで許して欲しい」
「私を……?」
殿下は神妙な面持ちで頷いた。彼とバージル様が私に伝えていなかった捜査の裏側……DP事件の真実が語られた。
「あれは、今から3ヶ月ほど前のことだった。バージルが極秘で私に報告してきたんだよ。DP密売の総元締めを突き止めたと……」
「3ヶ月……バージル様はそんな以前から事件の全貌を掴んでいらっしゃったのですか」
「ああ。それもあくまで私に報告したのが3ヶ月前だから、実際はそれよりも前からあたりを付けていたことになる。私も驚いたよ」
つまり3ヶ月以上前からレシュー家に目を付けていたということだ。その間私とも何度か顔を合わせていたのにそんな素振りは一切なかった。レシュー家のマルクと婚約関係にあった私も捜査対象であったはず……
バージル様に疑われていたかもしれない。胸の奥にズシンと何かがのし掛かるような圧迫感を覚えた。親切な態度の裏で、私は彼にどう思われていたのか。
動揺が表情に現れていたのだろう。隣に座っていたステラが、私を慰めるように肩を寄せた。
「我が国で起きているDP絡みの問題は、以前リナリア嬢に説明した通りだ。バージルから提出された報告書にはレシュー伯爵家がDP密売の総元締めであると記されていた。薬の原料となる植物の密輸……そして、販売に関わった者たちのリストまでも事細かにね」
レシュー家が違法薬物を国内で売り捌いていた……
実際に自分の目でその犯罪行為の一部を目撃したというのに、まだ実感が湧かなかった。
バージル様と共に学園に張り込みに行った夜の出来事は、私の心に大きな衝撃を与えた。胸のざわつきは未だに治っていない。
「レシュー家ね……もともといけすかない連中だったけど、まさか裏であんな大規模な犯罪を行っていたなんてね。しかも兄様が尻尾を掴むまで誰も疑ってなかったっていうんだから恐ろしい話よ」
レシュー家は隣国の売人から薬及び、原料となる植物を大量に買い付け、それらを自身の運営する商団を用いて国内に持ち込んでいたのだという。巧みに他の輸入品の中に紛れまこせ、決してバレないように……
「まあ、とにかくだ。私の頭を悩ませていた薬物事犯の数々を根底から解決出来るチャンスだと、大層湧き上がったよ。……だが、この時バージルは私にある条件を提示してきたんだ」
殿下は話を一旦区切ると、テーブルの上のティーカップに手を伸ばした。中の紅茶をひと口ほど啜り、軽く息を整える。その短い間ですらもどかしく感じてしまい、急かすような視線を殿下に向けてしまった。そんな私の心境を知ってか知らずが、殿下はゆっくりと話の続きを語り出した。
「事件解決の手柄は私に全て譲ると……自分が得た情報は好きに使っていい。その代わり、あることに協力して欲しいと言うんだ」
「あること……バージル様は一体何を……」
「リナリア・アルメーズとマルク・レシューの婚約解消だ」