仁人は酒に弱い。
仁人”は”てか、M!LKメンバー全員そんなに酒を飲まない。
学生時代からこの業界にいるから世間の目とか次の日のスケジュールとか色んな兼ね合いもありお酒自体との関わりがない。
だから、多分俺だけが知ってる仁人。
「仁人明日休みだろ?呑まね?」
家に来ていた仁人とグループや仕事の話を熱く語り合い、不意に呑みたくなり缶ビール片手に声をかける。
「別にいいけど、勇斗明日仕事は?」
「よっしゃ!昼からだからいけんだろ!」
缶ビールと一応チェイサー用の水も用意して仁人と乾杯する。
「ん、はー!酒!って感じ」
「んふふ。なんその感想…ふふ」
すでに頬を薄っすらピンクに染めた仁人が楽しそうに微笑む。
「コーヒーが飲めませんって歌ってた俺らが酒も飲めるようになって『I CAN DRINK』って公演名でアリーナツアーするようになるなんてなー」
「ほんとにねーありがたいよ。応援してくれるみ!るきーずのおかげだー!」
嬉しそうに酒を煽る仁人にちょっと心配になるが楽しそうで止めるのがもったいなく思えて止めあぐねた。
「はやとー」
「あー?」
頭を俺の肩にこてんと預けて上目遣いで見上げてくる仁人にどきりとする。
「おれさーふだん、み!るきーずを前にするといえないけどみ!るきーずが大好きなんだわー…つたわってかなー…」
ふわふわとした喋り方の吉田さんは完全に酔っている。
「み!るきーずにはちゃんと伝わってるだろ」
「ふふ…ならよかった」
人の肩に頭をぐりぐりしながら嬉しそうに笑う仁人。
「…佐野さんには伝わってる…?」
「んあ?何が?」
缶を傾け残り少ない中身を飲み干していると仁人から問われる。
「俺が勇斗のこと大好きだって伝わってますか!」
「うるっさ」
突然耳元で叫ばれびっくりして素直な感想が口から出るとあからさまにしゅん…とし離れようとする仁人を抱きこむ。
「あー悪かった。伝わってっよ。俺もだし…」
「俺も?俺も何?」
やられた…してやったり顔で圧をかけてくる仁人の顔を片手で鷲掴み遠ざける。
酒に酔った仁人は普段じゃ考えられないくらい素直になる。
そんな仁人にどぎまぎさせられ振り回させて少し悔しい…普段は俺が振り回してんのに。
「…伝わってない」
俺の手を振りほどいて、んっしょとか言いながら足に跨って対面で座ってくる。
「伝わってないから柔太朗に目移りすんだ」
目移りした覚えは全くないが酔っぱらいの戯言なので好きにさせとく。
そしてなにより、普段見上げられることはあっても見下げられることはない為なかなか新鮮な体勢にちょっとわくわくする。
「佐野さんはかっこよくて、優しくて、メンバー想いで、み!るきーず想いで、愛が深くて、頼りになって誰がなんと言おうとEBiDANのエースで窓口だって俺は思ってる。でも、頑張りすぎるところ、無茶するところ、1人で抱え込むところはなおせ」
目を見つめ伝えられる素直な言葉に照れと苦笑いが入り交じる。
そして、包み込むように抱きついてきた仁人が耳元でそっと…
「…でも、そんな佐野さんが好きですよ」
素直な仁人の破壊力はやばくて、自分を落ち着かせるために仁人の背中をとんとんしながら深呼吸を繰り返し…
「俺も…す」
「すー…すー…ᶻᶻᶻ」
耳元に届く規則正しい寝息。あーこいつ寝やがった。
自分の言いたいことだけ言ってすっきりしたら寝落ちする。これが仁人がお酒を飲んだ時のルーティーンになりつつある。そして、明日には記憶にすらない。
でも、自分でも気づいてる。
躓いて立ち止まりそうになった時、自分に自信が持てなくなった時、俺はわざと仁人に酒を呑ませて言葉を貰う。嘘偽りのない仁人の言葉は俺の背中を押してくれるから。
人の上で寝息をたてる仁人をそっと抱きしめ返し「ありがと」と呟いた。
END
(本当に酔ってたかは本人のみぞ知る)
コメント
2件
どきどきしすぎて心臓飛んでく自信あります、久々の主さんの作品が染みる😭
読んでるこっちがドキドキしてしまいました...🫢💖お酒に酔った仁ちゃん可愛くて.....😭たくさん読み返します😭