僕は佐藤くんと別れた後、真っ直ぐ家に帰った。一応連絡はしているが、母さんが心配していることだろう。僕は自然と足取りが早くなっていた。そして…何故か嫌な予感がした。僕のこの予感はよく当たる。昔もこんな予感が当たったことがある。それは、僕が友達と遊んでいたとき。なんだか背筋を冷たい汗が流れるような、冷たい手に背中を撫で上げられたような気がした。すると、向こうの方から慌てたように走る先生が見えた。先生の口から告げられたのは、
「拓馬くん、急いで帰る準備して!お祖父さんが倒れたそうです!」
という言葉だった。それ以来、僕はその予感を信用することにしている。そして「今」その予感がしている。お母さんに何かあったのかもしれない。そんな焦りから、僕はいつの間にか走り出していた。僕は家に着くと、勢いよくドアを開いて「ただいま!」と言った。1秒でも早く母さんの姿が見たかったから。僕はキョロキョロと母さんの姿を探した。母さんは台所にいた。慌てている僕の姿を見て、可笑しそうに笑った。
「ふふ、どうしたの?そんなに慌てて。」
「いや、何でもないんだ。何でも…」
僕は安心して、鞄を下ろした。母さんは後ろで呑気そうに、
「もぉ、昔から慌てん坊で。そんなだか…」
母さんの声が途切れたかと思うと、
嫌な予感がした。振り返ると、母さんが倒れていた。僕は一瞬で頭が真っ白になった。
(どうしよう。)
浮かぶのはただそれだけ。どれくらいそうしていただろうか…僕はハッとした。そして、すぐにスマホを取り出すと119へと電話をかけた。
そこから先のことはよく覚えていない…ただ耳の奥で、救急車の近づいてくる音が聞こえた気がした…
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