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女女の25時

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女女の25時

16 - 第16話 ③ビビる女 ~朱莉の場合~

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2024年08月11日

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小口朱莉(33) if 吉野航(29)

「こぐっちゃん、こぐっちゃん」

彼の少し掠れた声が耳に心地よく響く。

「ほら、起きな」

気だるそうに伸びをしながら朱莉は隣に座る吉野を見つめた。

「んん……。おはよ」

「———そのエロイ声、わざと出すの止めてくんない?」

目の前には千台総合コミュニティケアセンターと大々的な看板が立っており、その後ろに10階建ての複合ビルが建っていた。

「はーあ。着いちゃったのぉ?やんだなあ」

ムクリと起き上がりながら、倒していた助手席のシートを直すと、運転席に座っていた吉野はエンジンを切った。

「こぐっちゃんって俺と二人の時、ちょいちょい東北弁になるよね」

吉野がそう言いながら笑う。

「当たり前じゃん。気を許してるんだもん」

「そら、光栄なことで」

言いながらビジネス鞄を後部座席から手繰り寄せている。

「あ、やばい電話来てた。一本いい?」

「どーぞ」

「ついでにアイコスも一本いい?」

「どーぞ」

助手席に凭れた朱莉の隣で、吉野が手帳を開きながらアイコスを咥える。

「お世話様です。吉野です。すみませんでした、運転中で。ーーーええ。そうなんですよ。今日から東京で。一泊の予定です。————あ、その件でしたら、うちの清野に申し伝えてありますので、納品も予定通りに大丈夫です。————はい。————はいかしこまりました。よろしくお願い致します」

そう。今日から一泊二日で、朱莉と吉野は、東京で医療器具展覧会に出席する予定だ。

片道二時間かからないのだが、

「通い面倒だったらホテル取ってやるけど、どうする?」

と聞いてきた部長に、つい「泊りで!」と答えてしまった。

「ああ。お疲れ、俺。今、誠心医療の西塚さんから電話あった。胃瘻用シリンジの手配大丈夫だよな?納品日気にしてたから電話してやって。あと追加注文で――――」

アイコスを咥えながら、今度は部下に電話をしている同期の顔を見る。

今年29歳になったばかりの吉野は、朱莉より3つ年下だ。

四年前、同時に入社したはずの彼は、去年、主任になり、今年マネージャーになった。

どんどん出世していく同期に焦らないわけはない。

でも同じ土俵に上がるには、歴然とした差があった。

男と女という差が。

「よし、おまたせ!」

アイコスから短くなった煙草を取り出し、吉野が朝日を浴びながら振り返った。

「行こうぜ、こぐっちゃん!」

後部座席に置いてあるビジネスバックを朱莉も持ち上げた。

その横に置いてあるお泊りバックの中には――――。

一応コンドームも入れてある。

朱莉はそれをチラリと視線の端に入れながら、重い腰をシートから上げた。

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