テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#青春恋愛
める
48
夏希(なつき)
166
奇蹟あい
1,760
翌日。
放課後。
星羅は一人で学校を出た。
玲には。
何も言っていない。
「……」
スマホに送られてきた住所。
向かった先は。
駅から少し離れた、小さな公園だった。
「ここ……?」
辺りを見回す。
人はいない。
夕暮れの公園。
風に揺れる木々。
「……」
星羅はベンチに座る。
数分後。
「来たんだ」
「……!」
昨日の男子生徒。
「あなた……」
「黒瀬くんのこと、知りたいんだろ?」
「……うん」
「じゃあ、教えてあげる」
男子生徒はスマホを取り出した。
「一年前」
画面には。
当時の玲のSNSアカウント。
「黒瀬くんは、かなり落ち込んでた」
「……」
「学校にもほとんど喋らなくなって」
「……」
「周りから見れば、ただの無口な奴」
「でも」
男子生徒は続ける。
「本人は、もっと酷い状態だった」
星羅の胸が痛む。
「どうして?」
「それは本人に聞いて」
「……」
「ただ」
男子生徒は動画を見せる。
一年前。
玲が一人で歩いている映像。
「これ……」
「偶然撮った」
「……」
星羅は画面から目を離せない。
いつもの玲とは違う。
表情がない。
何も感じていないような顔。
「この頃の玲くん……」
声が震える。
「こんな顔してたんだ」
「そう」
男子生徒はスマホをしまう。
「そして、その数日後」
星羅を見る。
「君の配信があった」
「……」
「黒瀬くんは、その配信を見た」
「……うん」
「そして翌日から」
男子生徒は言う。
「少しずつ変わった」
「……」
「学校に来るようになった」
「……」
「人と話すようになった」
「……」
「そして」
男子生徒は笑う。
「君を好きになった」
星羅の顔が赤くなる。
「……」
「だから」
「?」
「君が思っている以上に」
男子生徒は静かに言う。
「君は黒瀬くんにとって特別なんだよ」
星羅は胸に手を当てる。
「……嬉しい」
「でも」
「……?」
「まだ終わりじゃない」
「え?」
男子生徒は。
一枚の画像を見せた。
「これ」
そこには。
玲が書いたメモ。
『セラに会いたい』
「……」
星羅は目を見開く。
「これ……」
「一年前のもの」
「……」
「黒瀬くんは」
男子生徒が言う。
「君に会おうとしてた」
「……!」
「もちろん、直接会えるとは思ってなかった」
星羅は画像を見つめる。
『いつか直接、お礼を言いたい』
そこに書かれていた。
「……玲くん」
胸がいっぱいになる。
自分は知らなかった。
玲が。
こんなにも自分を想っていたこと。
「……」
星羅の目から涙が落ちる。
「嬉しい……」
その声は。
少し震えていた。
「私……」
涙を拭う。
「玲くんを救ったんだ」
「そう」
「……」
そして。
星羅の表情が変わる。
「じゃあ」
「?」
「これからは」
男子生徒を見る。
「私がずっと玲くんを支える」
「……」
「玲くんが辛くならないように」
「……」
「玲くんが寂しくならないように」
そして。
「玲くんが私から離れないように」
「……」
男子生徒は苦笑する。
「やっぱり、君は面白いね」
「何が?」
「愛が重い」
「……」
星羅は笑う。
「そうかも」
そして。
「でも」
目を細める。
「それくらい好きなの」
男子生徒は黙った。
「……一つだけ」
「何?」
「この話」
男子生徒は星羅を見る。
「黒瀬くんには、まだ言わない方がいい」
「……どうして?」
「彼自身が話すべきことだから」
「……」
「君が知ったことを、俺から伝えるのは違う」
星羅は少し考える。
「……分かった」
「約束できる?」
「うん」
公園を出る。
帰り道。
星羅は玲へメッセージを送る。
『今どこ?』
すぐに返信。
『家』
『そっか』
『どうした?』
星羅は画面を見つめる。
本当のことを言うなら。
「今日、玲くんの過去を聞いた」
そう言うべきだった。
でも。
打った文字を消す。
『会いたい』
送信。
数秒後。
『俺も』
「……」
星羅は笑う。
『じゃあ、明日ね』
『ああ』
スマホを胸に抱く。
「……」
そして。
小さく呟く。
「玲くん」
「私、もっとあなたのこと知りたい」
過去も。
今も。
未来も。
「全部」
星羅の瞳が輝く。
「私だけが知ってる玲くんにしたい」
その夜。
星羅が眠りについた後。
玲は一人、自室にいた。
「……」
机の引き出しを開ける。
そこには。
一枚の古い紙。
そして。
スマホには保存された。
一年前の配信。
星乃セラの声。
『大丈夫だよ』
玲は画面を見つめる。
「……」
そして。
誰にも見せていない。
一枚の写真を取り出す。
「……あの日」
玲は呟く。
「あの配信だけじゃない」
写真には。
一年前の玲と。
まだ今とは違う星羅の姿。
「……俺は」
何かを思い出す。
しかし。
その記憶を。
玲は再び引き出しの奥へ戻した。
「……まだ言えない」
――二人の間には。
まだ。
お互いに知らない秘密が残っていた。
コメント
1件
**第33話「知らない君を、知りたい」読んだよ。** 玲くんの過去が明らかになって、星羅ちゃんが「救った」って気づく流れ、めっちゃ良かった。特に「私がずっと支える」からの「離れないように」の重さ、星羅ちゃんらしさが出てて笑ったし納得したわ。あと最後の玲くんの隠し事、まだあるのかよ…!続きが気になる展開、ありがとうございます🔥